時事随想

時事随想

ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

働き方に中立な税制・社会保障制度の改革 (1) 政府与党の配偶者控除の見直し案

 政府・与党による配偶者控除の改正案が報道されています*1。女性の社会進出を推進するという名目での税制改革が検討されてきましたが、どうも抜本改革とは程遠いもののようです。

 今回は、パート労働者などの就業調整の原因となっている所謂、103万円の壁と130万円の壁について税制や社会保障制度の面から考えたいと思います。

1. 政府与党の配偶者控除の見直し案

1.1 背景

 女性活躍のための税と社会保障制度の見直しは、安倍政権の一億総活躍プランの「女性の活躍促進」のための政策の一つとして、パート労働などの就業調整の原因となっている税制度(所謂、103万円の壁)、社会保障制度(所謂、130万円の壁)などの対応を検討するとしていることに端を発しています。

■女性・若者・高齢者・障害者等の活躍促進
○就労促進の観点から、いわゆる 103 万円、130 万円の壁の原因となっている税・社会保険、配偶者手当の制度の在り方に関し、国民の間の公平性等を踏まえた対応方針を検討する。
出典:一億総活躍国民会議, 「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策 - 成長と分配の好循環の形成に向けて - 」, 2015/11/26.

1.2 政府・与党の見直し案

 今回、政府・与党として、見直すことを検討しているは、次の2点です。

  • 配偶者控除の対象の拡大
  • 配偶者手当の廃止・削減

 配偶者控除については所得税法等の改正、配偶者手当については国家公務員の手当見直しや経済界への要請によって実現を試みています。

 (追記) 12月8日に自民党・公明党名で平成29年度税制改正大綱が発表されました。この中で具体的な改正内容が示されています。

1.1.1 配偶者控除の拡大

 政府・与党が提出予定の所得税法等の改正案の要旨は、図1.1に示すように配偶者控除を変更し、従来の103万円の壁を150万円の壁に変更し、配偶者優遇を強化するという施策です。

  • 配偶者収入105万円~201万円の世帯を配偶者控除の対象に拡大する。
     所得税により設けられた「103万円の壁」が「150万円の壁」に変更となりますが、年金・健康保険により設けられた「130万円の壁」はそのまま残ります。
  • 1120万円以上の高所得世帯に年収制限を設ける

また、130万円の壁(国民年金第3号被保険の問題)については、何も手を付けないようです。

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図1.1 配偶者控除の改正案。

1.1.2 配偶者手当の廃止・削減

 配偶者手当がある国家公務員や約7割の民間事業所で支給されている配偶者手当の基準として、配偶者控除対象と同じ「103万円」や、社会保険料の「130万円」で設定しています。この配偶者手当による「103万円の壁」「130万円の壁」が、強固な壁として存在します。配偶者特別控除が適用できる場合、「103万円の壁」はほとんど平坦化されるため、それほど高い壁は残っておらず、実質的にないといっても構いませんので、「103万円の壁」として残っているのは、配偶者手当による壁です。

 国家公務員については、配偶者手当(扶養手当)の基準を130万円に設定して、配偶者手当を支給しています*2。この手当を2017年度から段階的に削減する方向です*3

人事院勧告 配偶者手当、18年度に半減 給与3年連続増
 人事院は8日、国家公務員の扶養手当を見直し、月額1万3000円の配偶者手当を2018年度に半減するよう国会と内閣に勧告した。本省課長級は20年度に廃止する。子どもに対する手当を増額し、扶養手当の総額は維持する。16年度に一般職の月給、ボーナスを引き上げ、いずれも3年連続のプラスとすることも盛り込んだ。扶養手当の見直しは女性の就労を後押ししつつ、子育て支援を充実させる狙い。地方公務員の給与制度に波及する可能性もある。
出典:毎日新聞, 「人事院勧告 配偶者手当、18年度に半減 給与3年連続増」, 2016/8/8.

   また、民間の配偶者手当を廃止・削減することを、経済界へ要請しています。

配偶者手当の廃止や削減、経団連が要請へ
 経団連は16日、来春闘で企業が社員に支払う配偶者手当の廃止や削減を、会員企業に呼びかける方針を明らかにした。
(中略)
 働く女性を後押しするため、経団連は、配偶者手当の見直しで浮いた原資を子ども手当などに振り向けて、子育て世代の支援にあてるように呼びかけることを検討している。来春闘で経営側の指針となる経団連の「経営労働政策特別委員会報告」に盛り込まれる見通しだ。
出典:朝日新聞DIGITAL, 「配偶者手当の廃止や削減、経団連が要請へ」, 2016/11/16.

1.3 新聞各紙の論調

 この改正案に対して、新聞各紙は「場当たり的」「抜本改革に程遠い」など批判的です。

  • 東京新聞社説(2016/11/23)

    配偶者控除 女性活躍の理念どこに
     おかしな議論である。「女性活躍」という本来の目的は選挙対策の前にどこかへ消え、おまけに家計にとって貴重な配偶者手当までなくされそうだ。何のための働き方改革なのか。
     安倍晋三首相は「女性が就業調整を意識せずに働くことができる仕組み」を標榜(ひょうぼう)してきたのではなかったか。
     当初、政府与党は二〇一七年度税制改正で所得税の配偶者控除について「女性の就業調整につながっているとして廃止」の方向で議論を進めた。だが、廃止すると専業主婦世帯などが広く増税となり、取りざたされる年明けの衆院解散-総選挙で不利になりかねないとして廃止論を封印した。
    (中略)
     「女性活躍推進」などというのは所詮(しょせん)、その程度のものなのか。現実には子育てや家族の介護などで働きたくても働けない人が少なくない。保育所や介護施設のサービスさえ不十分なのにどうやって働けというのか。結局は「もっと働け、もっと税金や保険料を納めろ」というのが本音ではないか。

  • 読売新聞社説(2016/11/28)

    配偶者控除 今の見直し代案では不十分だ
    税制面から女性の社会進出を促す狙いは、どこへ行ったのか。場当たり的な見直し案では、弊害も無視できない。
    (中略)
    夫婦控除のほか、所得税の各種控除を高所得者に有利な所得控除から、所得にかかわらず一律の金額を軽減する税額控除に変更することなどが検討課題となろう。

  • 日経新聞社説(2016/11/27)

    小手先の配偶者控除見直しで止めるな
     人口が減り、人手不足が広がる日本経済を活性化するには、パートで働く人にもっと活躍してもらう必要がある。そのために時代遅れとなっている税制を変えなくてはならない。
     2017年度税制改正に向けた政府・与党の検討状況をみると、税制の抜本改革にはほど遠く、小手先の見直しで終わるのではないか、と心配だ。

1.4 所感

 正直、記事を見て、いったい何を考えているのだろう?と耳を疑いました。不公平と言われる配偶者控除の適用を拡大し、パート層を中心に減税するという単なる選挙対策です。税制をよく知らなかった筆者ですら、抜本改革とはほど遠い内容であることは、直ぐに理解できました。

 次章以降では、「壁」に関わる税制度・社会保障制度について調べて、検討した結果についてまとめます。

(2016/12/8)

【NHK】テレビ付き賃貸住宅で受信契約は必要か?-レオパレス受信料裁判-

 今年の10月27日にレオパレスのテレビ付き賃貸住宅について、利用者にはNHKとの受信契約の義務はないとの判決が東京地裁で下され、NHKは敗訴しました。

 この裁判は、立花孝志氏の支援による裁判ですが、立花氏はこれ以外にも、レオパレス関連の裁判を行っており、今回の記事では、立花孝志氏のYouTube投稿を中心に裁判の経緯をまとめます。今回の裁判もNHKは控訴し、東京高等裁判所で控訴審で争われていますので、記事も順次更新していきたいと思います。

目次はこちら

1. テレビ付き賃貸住宅の受信契約

1.1 受信料支払義務の根拠

 NHKとレオパレスは、レオパレスの賃貸住宅では、入居者がNHKとの受信契約を結ぶ必要があるとしています。

 レオパレス21のホームページによれば、NHKの受信料は入居者者負担としています。

Q. NHKの受信料はどうしたらいいですか?
A. NHKの受信料につきましては、ご契約形態を問わず、ご入居者様のご負担となります。
出典:レオパレス21「よくあるご質問」

 その根拠は、レオパレスの利用約款と放送法64条です。

 レオパレスの利用規約では、以下のように定められています。

第2条3項 NHK放送受信料別途乙または入居者の負担とし、直接請求先に対して支払うものとする。
出典:立花孝志, 「レオパレスとの契約は公序良俗違反なので無効でです NHK受信料」, 2016/10/27.
 
第2条3項 賃料(以下「利用料金」という)は、本契約書表記の通りとする。但し、乙が各自使用する水道、電気、ガス、NHK放送受信料、電話料等は、別途乙の負担とする。
出典:消費者支援機構関西, 2008/2/1.
(筆者注:規約の文面に違いは、個人用・法人用や作成時期などの違いによると思われる。前者はレオパレスとの契約者(乙)と入居者を分けているので法人用、後者は個人用と考えられる)

 また、放送法64条1項には、次の規定があります。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(略)のみを設置した者については、この限りでない。
出典:放送法

 実際、立花氏がNHK営業センターに問合せたところ、NHKは入居者を「受信設備の設置者」とみなし、入居者が受信料を負担とするとしています(付録A参照)。

1.2 レオパレス利用者の契約実態

 レオパレスの「マンスリープラン」・「短期プラン」では、家具・家電付物件のみであるため、基本的にはテレビ付き物件となります。

 マンスリー契約の「マンスリープラン」、「短期プラン」では、家具・家電の揃ったお部屋のみご紹介の対象になります。
出典:レオパレス「設置されている代表的な家具・家電」

 また、レオパレスの利用規約および放送法64条を根拠に、NHKはNHK集金人の戸別訪問により、入居者との契約を結ぶようにしています。レオパレスにはテレビがあると分かっているので、新規入居者が入る度に、集金人は受信契約とりにいくことができ、NHKからの委託手数料を効率よく得られることになります。

 私が現役時でも、必ず担当エリアに「レオパレス」が何棟かあり、スタッフ間ではある意味この集合住宅は鴨扱いするほどで狙われやすく、契約が取れない日は「レオパレス」へ的な感じで回ってました!
 
 ナビタンに契約登録が有れば、普通はスルーしますが、「レオパレス」では、数ヶ月の滞在って方が非常に多いため、入居者の入れ替わりがないか確認のために必ず1件1件叩きます(ピンポンします)。
 
 普段、「テレビがない!」と断られることが多いですが、レオパレスならばテレビは最初から設置されている事を地域スタッフ(集金人)は知ってますから客(視聴者)は「テレビがない!」とは言い訳できないから1番狙われやすいのです。
出典:レオパレス21狙われやすい家具付き賃貸物件|元NHK地域スタッフが語る受信料について

1.3 NHKとレオパレスの交渉

 NHKは、レオパレスと受信契約交渉を行っています。この協議において、レオパレスは、レオパレスの利用規約において、「NHK受信料は入居者の負担とする」という条項を提示、NHKはレオパレスとの契約を断念し、入居者に受信契約を行うようにしたようです。

 かつて、NHKとレオパレス側は受信契約についての協議を行いました。
 結果的に「入居者が居ない時期の受信料免除」がNHK側に受け入れられなかったことから受信契約を行わないこととしました。
レオパレス側は「テレビは使用目的を定めずに入居者に貸し出すためにそこに置いてあるだけ」とし、いわゆる「協会の放送を受信できる設備の設置者」ではないと主張、レオパレス規約に「NHK受信料は入居者負担とする」という一文を入れることでその後の訴訟に対応できる体制を整えました。
NHK側はレオパレスと明確に合意したわけではありませんが、事実上その主張を認めているようです。
出典:第五章 レオパレスにおけるNHK受信契約 - Yahoo!知恵袋
 
「NHKとレオパレス受信契約協議」(レオパレスの内部文書)
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出典:立花孝志, 「レオパレスとの契約は公序良俗違反なので無効でです NHK受信料」, 2016/10/27.

2. レオパレスたつの事件 (東京地裁判決の事件)

 レオパレス利用者とNHKとの間の裁判については、立花孝志氏が多数の訴訟を支援しています。その中の一つが10月27日に東京地裁で判決が下ったレオパレスたつの事件です(付録B参照)。

 10月27日の東京地裁(佐久間健吉裁判長)の判決文*1や関連報道*2 から、裁判の概要をまとめます。

2.1 事件の概要

 福岡市在住の男性が勤務先指定で兵庫県たつの市のマンスリーマンション・レオパレス21に短期プラン(30-100日)で33日間宿泊した。入居は、2015年10月19日。

 2015年10月28日午後7時頃にNHK集金人が訪問し、執拗に契約締結を迫った。このマンションは宿泊施設であるし、テレビの設置者はレオパレスであるので、受信契約はないと男性は主張したが、集金人は契約を迫り続けたので、仕方なく署名の上契約し、2カ月分の受信料2620円を支払った。

 男性は、2015年11月20日退去した。

 男性は「自分がテレビを設置したわけではないのに、不当に受信契約を結ばされ、受信料を支払わされた」として、NHKに2か月分の受信料2620円の返還を求めてNHKを提訴した。

 (NHKは、提訴後の2016年8月23日に男性に11月分の受信料1310円を返還したが、残る10月分1310円は返還しなかった)

2.2 裁判の争点

  • 争点1:入居者が「受信設備を設置した者」(放送法64条1項)に該当するか?
  • 争点2:NHKとの受信契約が公序に反し、無効であるか?

 裁判当初、原告は、主位的主張として「脅迫による契約であるので、契約は取消すべき」とし、予備的主張として「レオパレスがテレビの設置者であるので、契約は不必要」としていたが、主位的主張は、事実認定が難しく裁判が長期化する恐れがあるため、主位的主張を取下げ、予備的主張を争点とするように裁判方針を変更した。予備的主張は、法律審であるため、裁判は短期で終わる。

2.3 原告(入居者)の主張

  • テレビを設置したのは、入居者ではなく、オーナーであるから、放送法64条1項の「受信設備を設置した者」に当たらない。従って、NHKとの間で受信契約を締結する義務はなく、受信料の支払義務もない。
  • 放送法64条1項は、当事者間でこれと異なる合意をすることを禁止する強行規定であり、入居者とNHKとの間の受信契約は、強行規定に反する契約で、公序に反しているから、民法90条により無効である。

2.4 被告(NHK)の主張

  • NHKの放送を実際に受信し視聴することができるテレビを「現実に占有・管理する者」が「受信設備を設置した者」に当たる。
    • 受信料は、NHKを視聴する受益者が負担する受益者負担金である。
    • レオパレスのウェブサイトで「受信料は入居者負担となること」や「家賃に受信料が含まれていないこと」を明示している。

2.5 裁判所の判断

 争点1:入居者は、「受信設備を設置した者」ではない

  • 受信料は、NHKが担う高い公共性を有する事業を維持し運営するために、法律で特別に定められた特殊な負担金であり、受益者負担金ではない。
  • 「受信設備の設置」は、NHKの放送を受信し視聴している者が誰か、受益者は誰かということは無関係で、「物理的・客観的にNHKの放送を受信することができる状態を作出した行為者」である。
  • テレビを「設置した者」はオーナー又はレオパレスと推認でき、入居者ではないことは明らか。

 争点2:受信契約は無効である

  • 放送法64条1項は、当事者間で異なる合意をすることを禁止する強行規定である。
  • 「受信設備を設置した者」ではない入居者との間の契約は、強行規定である放送法64条1項に違反し、公序に反する法律行為であり、無効である。

2.6 判決

  • NHKは、入居者に対し、1310円を支払え。

3. 地裁判決後の影響

3.1 NHKの対応

 NHKは、「契約を締結する義務が居住者側にあることを引き続き2審でも訴えていきます」として、控訴しました。

3.2 レオパレスの反応

 レオパレスは、裁判の推移を見守るとしています。

レオパレス21は、「テレビはほぼすべての物件に設置しています。判決は昨日(10月27日)下りたばかりですし、また当社への判決でもありませんが、今後については何らかの対応が求められる可能性はあるかもしれません。(NHKが控訴することから)今のところ、今後の裁判の成り行きを見守るしかありません」と話している。
出典:J-CASTニュース, 「NHK受信料、マンスリーマンションの死角 ホテルのテレビとどう違う」, 2016/10/28.

3.3 レオパレスの経営への影響

 レオパレスは、約56万件の物件を抱え、そのほとんどで、マンスリー契約を利用できることから、ほとんどがテレビ付き物件と考えられます。

アパート・マンションなどの建築・賃貸管理大手のレオパレス21によると、同社が取り扱っている物件は現在、全体で約56万戸にのぼり、「そのほとんどでマンスリー契約を利用できます」という。
出典:J-CASTニュース, 「NHK受信料、マンスリーマンションの死角 ホテルのテレビとどう違う」, 2016/10/28.

 仮に地上波契約、年払いとして、年間で次の受信料を支払うことが必要となります。

  13,990円×56万件 = 約80億円

 全てに事業所割引で半額を適用できたとしても約40億円の受信料となります。実際には、全てに事業所割引が適用できるわけではないので、40億円~80億円の間の受信料を支払うことが必要となります。レオパレス21は年間200億円程度の営業利益ですから*3、数十億円のNHK受信料支払が経営に与える影響は少なくありません。

 また、NHKがレオパレスを提訴し、レオパレスが敗訴すれば、過去の未契約分の受信料も支払う必要がでてくる可能性があります。このため、レオパレスは数百億円規模の特別損失の計上により、赤字転落しそうです。

 NHKは、放送法64条2項により、(予め総務大臣の認可を受けた基準に基づかなければ)レオパレスの受信料を免除できません。従って、NHKは過去に遡っての受信料全てを請求しなければなりません。未契約の場合は、これまでの個人世帯に対する判例から言って、5年時効の適用等もできず、レオパレスはテレビの設置日からの受信料全額を請求されることになります。但し、東横インやドーミーインの裁判では、請求額から逆算すると1~2年程度の受信料なので、必ずしも全額を請求しているわけではないようです*4

3.4 誰が得をするのか?

 今回の判決は、レオパレス利用者がNHKに支払った受信料はNHKから返金して貰えるという内容です。過去にNHK受信料を支払った他のレオパレス利用者も、裁判をして受信料返還を求めることができますが、ほとんどの人は裁判をすることはないでしょう。

 この判決内容が上級審で確定すれば、今度は、NHKが、レオパレスに(過去に遡及して)受信料支払を請求するでしょう。

 レオパレスは、利用規約に基づき、レオパレス利用者に受信料を請求する可能性はありますが、実際には、レオパレス利用者がNHKに受信料を支払ったか否かを把握できず、受信料を請求することは困難でしょう。

 レオパレスの利用規約が、レオパレスが受信料支払を回避するために定めた不当な条項で無効と裁判等で判断されれば、この観点からも、レオパレス利用者は受信料支払は不要となります。

 以上のことからすると、NHKは、過去のレオパレス利用者の受信料を返金せずに済み、レオパレスからは過去に遡及して受信料を徴収することができるので、二重に受信料を得ることができそうです。

 結局、得をするのは、NHKと、受信料を支払わなかったレオパレス利用者と、受信料を返還させたレオパレス利用者となります。レオパレスは、過去の受信料を取られ、それをレオパレス利用者にも転嫁できないので、大損となります。

 それでも、NHKが大儲けすれば受信料の値下げ、レオパレスは利用料の値上げということで、時間が経てば、帳尻はあうのかもしれません。

4. 今後の裁判の展開

 裁判は、NHKの控訴により、東京高等裁判所に舞台を移しました。また、立花氏は、レオパレス居住者を募って、新規の裁判を行うようです。

 また、たつの事件以前にも付録Cに示す裁判を起こしていますが、多くは、原告の都合等により、途中で裁判が終結したようです。

5. 最後に

 レオパレス利用者とNHKとの間の裁判についてまとめました。今回の判決内容は、妥当なものだと思いますが、もともとのトラブルの遠因としては、空室時のNHK受信料も支払わなければならないということに問題があるのでしょう。東横インの裁判にしても、稼働率が低い状態でNHK受信料を全て払うといのは、個人世帯の視聴時間と比較すれば、高すぎるという印象です。放送受信規約を改定して、リーズナブルな価格設定にする必要があるのかもしれません。

(2016/11/23)

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関連動画

目次

付録A. NHKの見解

付録B. たつの事件(兵庫県)

【事件の概要】
 福岡市の男性が勤務先指定の兵庫県たつの市のマンションに宿泊。2015年10月28日に集金人がやってきて、受信契約の締結を迫った。ここは、宿泊施設であるし、テレビの設置者はレオパレスであるので、受信契約の必要はないと言ったが、集金人は契約を迫り続けたので、仕方なく契約した。テレビの設置者はレオパレスなので、視聴者には契約の義務はないので、契約の取消を求める訴訟。

  • 東京簡易裁判所
    • 2015/11/6提訴。
    • NHK弁護士から東京地裁への移送を希望。
  • 東京地方裁判所(佐久間健吉裁判長)
    • 2016/3/19公開 (原告インタビュー)
    • 2016/4/26公開 (2回目の弁論期日, 裁判所前)
      • レオパレスの裁判の解説 - YouTube (37:51)
        • 訴状の説明。
          • 2015年11月6日付で提訴した。主位的主張は、脅迫による契約で取消、予備的主張は、レオパレスが設置者であるので契約は不必要。
        • NHK「レオパレスに関しては、占有者である入居者が払う。」
        • 東京高裁判決で、放送法64条は憲法19条違反ではない、テレビを設置するか否かの自由はある。最高裁も支持。
        • レオパレスの別の裁判は3件とも原告が下りてしまった。岡山・千葉など3件あったが、本人訴訟のためか裁判をやめた。今回は弁護士を立てる。
        • レオパレスに返金の集団訴訟を起こそう。
        • 次回は、6月9日。
    • 2016/6/15公開 (裁判解説)
    • 2016/7/9公開 (7/14に裁判)
    • 2016/8/29公開 (結審、裁判所前)
      • NHK受信料裁判 レオパレス結審 判決は10月27日13時15分~東京地裁522号法定 - YouTube (12:40)
        • 判決は、10月27日。
        • 理屈は勝っているが、裁判長の顔色・雰囲気からすると、敗訴するかもしれない。
        • 憲法19条と放送法については、高裁判決・最高裁判決がある。NHKと契約しない自由がないと、憲法19条違反となるが、テレビを設置しないという自由が保たれているので、放送法は憲法違反とはならない。敗訴した場合には、この判例を元に、判決はおかしいと訴えることを考えている。
    • 2016/10/26公開 (判決直前、裁判所前)
    • 2016/10/26公開 (勝訴、裁判所前)
    • 2016/10/27公開 (判決結果の解説)
    • 2016/10/27公開 (NHKとレオパレスの協議書)
      • レオパレスとの契約は公序良俗違反なので無効です NHK受信料 - YouTube (13:55)
        • レオパレスは56万世帯。地上契約として、年89億円の受信料。
        • 「NHKとレオパレス受信契約協議」の内部文書(レオパレス21/レオパレスセンター鹿児島店)
          「テレビは使用目的を定めずに入居者に貸し出す為」
          「レオパレス21はNHKの放送を受信できる設備の設置者ではない。」
          設置者:「設置者とは受益者である占有者」
          例えるなら、テレビの所有者はレオパレス21、占有者は賃借人。
          民放181条 指図による占有移転
          占有代理人(直接占有者)によって占有権を有する者(間接占有者)が自己の占有を第3者へ移転する場合に占有代理人大して以後はその第3者の為に占有すべき旨を命じることによって間接占有を移転する方法である。
          こういうトラブルがないように弊社規約にて
          第2条3項「NHK放送受信料は別途乙または入居者の負担とし、直接請求先に対して支払うものとする」と明記しております。
          これに同意頂き入居頂いている事は「借り受けた受信機の設置者である事を確認・承諾している」
  • 東京高等裁判所

付録C. その他のレオパレス裁判

C.1 富岡事件(群馬県)

【事件の概要】
 レオパレスで受信契約をしてしまったが、レオパレスのため契約義務はないと解約を口頭で申し出て、集金人は了解した。その後も、NHKからの受信料が届き、受信料不払いとなって、NHKから提訴された事件。

  • 前橋地方裁判所高崎支部
  • 2013/10/3公開 (11/13裁判)
    • NHKのレオパレスの裁判 - YouTube (11:21)
      • 群馬富岡簡易裁判所から前橋地裁に移送。
      • 11/13に裁判。
      • 準備書面に対する反論。
        • NHK「H17年5月頃解約を集金人に口頭で届け出た、という事実はない」→
          • 「H17年5月から支払わず。解約を届け出たと考えるのが自然である」
          • 「レオパレスだから、契約の義務は無いと言ったら集金人は了解した」
        • 求釈明
          • 「NHKは、設置者は、所有者、占有者といずれと考えるのか?」
          • 「空部屋の期間は、レオパレスに受信料を請求するのか?」
  • (筆者注:裁判は終結した模様)

C.2 岡山事件(岡山県)

【事件の概要】
 レオパレスに住む岡山市の30才男性。2015年6月8日に入居、2015年6月14日午後3時頃、NHK集金人が突然「自宅」を戸別訪問して来た。集金人は放送法64条1項の義務があるので、放送受信契約の締結と、2015年6月分と7月分の放送受信料2,620円を支払うよう要求して来た。放送受信料債務不存在確認請求事件。

  • 岡山簡易裁判所
    • 2015/6/21公開 (訴状)
      • NHK受信料裁判 レオパレス 編 - YouTube (9:10)
        • コメント欄に訴状あり。6月20日付で提訴。
        • 放送法64条1項は、「テレビ」の利用者に契約義務を課しているのではなく、「テレビ」の設置者に契約義務を課している。
  • (筆者注:裁判は終結した模様)
訴  状     平成27年6月20日

岡山簡易裁判所 御中
住所(送達場所も同じ)
〒703-8208
岡山市j〇区〇〇
レオパレス〇ー〇-601
原告 〇〇 〇
電 話 090-〇〇〇〇-〇〇〇〇
FAX なし

〒150-8001
東京都渋谷区神南二丁目2番1号
被告 日本放送協会
代表者会長 籾井 勝人

放送受信料債務不存在確認請求事件

訴訟物の価額  2,620円
貼用印紙額   1,000円

請求の趣旨
1 原告と被告との間において、原告の現住所における被告に対する、平成27年6月及び7月分の放送受信料2,620円の債務が存在しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決を求める。


請求の原因
第1 当事者
1 原告は、現住所の家具や家電付きの賃貸マンション(以下「原告自宅」と言う。)に平成27年6月8日に入居し、現在も「原告自宅」に居住している。
2 一方被告は、俗にNHKと呼ばれ、放送法16条によって設立された法人である。

第2 本件提訴に至る事情
1 平成27年6月14日午後3時頃、被告担当者を名乗る〇〇〇(以下「集金人」と言う。)が突然「原告自宅」を戸別訪問して来た。
2 「集金人」は原告に対し、放送法64条1項の義務があるので、放送受信契約の締結と、平成27年6月分と7月分の放送受信料2,620円を支払うよう要求して来た。

第3 放送法64条1項の解釈について
1 放送法64条1項は、『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。』と定められている。
2 たしかに、「原告自宅」には、協会の放送を受信することのできる受信設備(以下「テレビ」という)は設置されているが、原告は「テレビ」を設置した者ではない。
3 被告が放送受信料を請求する相手は「原告自宅」に「テレビ」を設置した「原告自宅」の所有者である。
4 放送法64条1項は、「テレビ」の利用者に契約義務を課しているのではなく、「テレビ」の設置者に契約義務を課している。
5 もし仮に被告の主張が正しいとすれば、「原告自宅」の場合、入居者がいない状態(空き家状態)の時は、「テレビ」が設置されていても放送受信料を支払う義務が無くなってしまう。
6 また、被告はホテルなどの宿泊施設においては、「テレビ」の設置者であるホテル所有者に放送受信料を請求し、「テレビ」の利用者である宿泊客に放送受信料を請求していない。

第4 結語
よって、請求の趣旨記載の判決を求める。

付属書類

1 法人登記簿謄本 1通

C.3 市原事件(千葉県)

【事件の概要】
 レオパレス住人に対する脅迫による受信契約の不当利得返還と慰謝料を集金下請け会社に請求する訴訟。

  • 千葉簡易裁判所
    • 2015/9/14公開 (9/30裁判)
      • レオパレスに住んでるのにNHKと契約? NHK下請け会社を訴えています千葉簡裁 - YouTube (10:53)
        • クルーガーグループを提訴。
        • 訴状の説明。
          • 2015年8月5日に、集金人が会社指定のレオパレスに訪問してきた。過去の受信料は免除するので、契約してくださいと集金人が契約を求めてきた。放送法を確認するので、退去を願ったが、何度も何度も契約を迫ってきた。放送法でテレビを設置したものは、受信契約を求めてきた。あなたに義務があると、言ってきた。あまりにもしつこいので、止むをえず、契約書に受信機の設置の日を記載せず、契約した。
          • 翌日、NHK営業センターに連絡したが、レオパレスの約款に書いてあるとい理由で、受信契約を取り消さなかった。
          • 放送法は、受信契約の義務者を受信機を設置した者に限定している。2620円は返金されるべき。
          • クルーガーグループに対して、受信料の2620円と、慰謝料5万円を請求。
  • (筆者注:裁判は終結した模様)

C.4 朝霞事件(千葉県)

【事件の概要】
 レオパレスの入居者が支払った受信料を返還を求める訴訟。

  • さいたま簡易裁判所
  • 2015/9/14公開 (訴状)
    • レオパレスで支払った受信料返せ裁判中 さいたま簡裁 - YouTube (5:40)
      • 朝霞市在住の視聴者。
      • 訴状の説明。
        • 2014年5月頃、集金人が訪問し、「レオパレス入居者には受信契約をする義務がある」と説明を受け、受信契約をした。
        • 放送法64条は「設置者」に設置義務がある。
        • レオパレス利用規約に、NHKに受信料を支払う旨が書かれていたとしても、強行法規である放送法64条に反し、無効。
  • (筆者注:裁判は終結した模様)

C.5 広島事件

【事件の概要】
レオパレス利用者がによる4カ月分のNHK受信料の返還請求事件。2016年8月4日にNHK集金人が訪問し、「法律違反になりますよ」と言われ契約し、その後4カ月分の受信料をた。

付録D. その他の関連動画

D.1 視聴者からの電話相談

  • 2014/6/18 (視聴者からの電話)

D.2 集金人の訪問動画

 

【NHK】ワンセグ携帯で受信契約は必要か?-ワンセグ受信料裁判-

 今年の8月26日にワンセグ携帯電話しか持っていない場合に、NHK受信料を支払う義務があるかが争われた裁判で、さいたま地裁は、「契約の義務はない」とする判決を下しました*1。今回の記事では、この裁判を中心にワンセグ携帯における受信契約の必要性について検討したいと思います。

 裁判の原告は、NHKから国民を守る党の大橋昌信議員で、党代表の立花孝志氏とともに、この裁判を争いました。8月の判決は、地方裁判所のものでしたが、NHKが控訴したため、現在、東京高等裁判所で控訴審が争われていますので、記事も順次更新していきたいと思います。

目次はこちら

1. ワンセグ携帯電話の受信契約

1.1 受信料支払義務の根拠

 NHKは、ワンセグ携帯電話は、NHKの受信契約を結ぶ必要があるとしています。

Q. パソコンや携帯電話(ワンセグ含む)で放送を見る場合の受信料は必要か
A. NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第64条によって規定されている「協会の放送を受信することのできる受信設備」であり、受信契約の対象となります。NHKのワンセグが受信できる機器についても同様です。
出典:NHK, 「受信料について、よくある質問」

 この根拠となる法規は、放送法64条とNHK放送受信規約です。

 放送法64条1項と3項には次の規定があります。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(略)のみを設置した者については、この限りでない。
3  協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
出典:放送法

 放送法64条3項に従って、総務大臣が認可した契約条項が、NHKが作成した放送受信規約です。NHK放送受信規約第1条で、契約対象は次のように規定されています。

第1条 2 受信機(家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。以下同じ。)のうち、地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置使用できる状態におくことをいう。以下同じ。)した者は地上契約(略)を締結しなければならない。(以下、略)
出典:日本放送協会放送受信規約

 このため、NHKは、「ワンセグ携帯を持っている者」を「携帯用受信機を使用できる状態においた者」と解釈して、受信契約を締結することをワンセグ携帯電話の所持者に対して求めています。

1.2 ワンセグ携帯の契約実態

1.2.1 法人は契約せず

 NHKを所管する総務省、その他の官公庁、最高裁を始めとした裁判所、自治体、ほとんどの法人は、ワンセグ携帯でNHKと受信契約をしていません。

 今、総務省に対して質問書を送るようにしています。経済産業省であっても、警察庁・検察庁であっても、外務省であっても、農林水産省であっても、どこもNHKとちゃんと契約していないので、ワンセグで金払っていないことは裏付けとっています。全国の都道府県、ほとんどがワンセグ契約していませんから、もし負けたら、そっち側に対して、おまえら受信料払えよ、過去に遡って払えよ、ということを各市区町村や国の官僚に向かって、やっていくだけ。それこそ裁判所もちゃんと払っていない、最高裁もちゃんと契約していない。情報公開取っています。
出典:ワンセグ受信料裁判控訴審 東京高等裁判所 報告 - YouTube (15:32/18:30), 2016/10/14公開.

 一般にワンセグ携帯で契約が必要とされていることについては、国民の大部分には知られていません。テレビ朝日の「ハナタカ」は、国民の3割程度にしか知られていない情報を発信する番組ですが、2016年5月22日の放送で「NHKに受信料を支払わなければいけません」という放送をしています。

 「ハナタカ」を放送したテレビ朝日もまたワンセグで受信契約をしていません。「NHKを契約する必要がありますと、NHKは言っています」と放送した後に、「国も、裁判所も、国会議員も、自治体も、NHKとは契約していません。実は、テレビ朝日でも契約していないのです」と放送すれば、国民のほとんどが知らない豆知識として鼻高々と自慢できる内容となったでしょう(笑)。

 立花氏らは、十分な取材をせず、NHKホームページのみの情報から、あたかもNHKの主張が正しいかの如く放送したことは、放送法の趣旨に照らし合わせて不適当であると判断し、テレビ朝日を提訴しています(付録A参照)。

1.2.2 NHK被害者は数十万人?

 さて、大部分の人はワンセグ携帯での契約の必要性は知らず、そもそも、NHKを見る目的で、ワンセグ携帯・ワンセグスマホを持っている人はいませんので、たまたまNHK集金人が来ても、大部分の方は、契約拒否をしていると思います。

 現状は、NHK集金人に契約を強要された気の弱い人・NHKの言うことに疑問を持たない人が、止むをえず契約しているのが実態ではないかと思います。

 それでも、学生や若い人を中心に数十万人規模の契約者がいるのではないかと推察できます。今回の判決からすれば、NHKの不当な法解釈による被害者が数十万人もいるということになります。今後もNHKはワンセグで契約させる方針ですので、NHK被害者は今後も増加すると思われます。

 ワンセグ裁判の判決後でも、既に、NHK集金人に「判決はでていても、総務大臣がワンセグで契約が必要だと言っている」と言われて、無理やり契約させられた事例もでており、訴訟に発展しています。

2. ワンセグ携帯における契約の必要性

2.1 契約の条件

 仮に、ワンセグで契約が必要としても、視聴条件などによって契約の必要性がないと思われるものも多数あります。視聴者が納得できない場合は、例えば、以下のものでしょうか。

 (1) ワンセグ携帯で、テレビを見ていない。
 (2) ワンセグ携帯は、携帯電話として使っている。
 (3) ワンセグ放送が、自宅では映らない。
 (4) ワンセグ放送が、映らない地域に住んでいる。
 (5) 会社のワンセグ携帯で、契約させられた。
 (6) 二つ住居を持っていて、本宅で既に世帯契約を結んでいるにも関わらず、テレビの無い別宅でも、ワンセグ携帯を持っているために契約させられた。

2.2 NHKの見解

 一般にNHK集金人は、契約が取りたいので、いずれの場合でも、契約が必要という場合が多いようです。(1)、(2)については、NHKのどこに問合せても、契約が必要と回答すると思いますが、(3)~(6)については、NHKの問合せ先によって、回答が分かれるようです。以下のビデオでは、NHK正職員の見解として、(3)の自宅で映らない場合には、契約の必要性はないとしています。その見解を得るまでには、数人のNHK側担当者に問合せなければならないようですが、NHKの正職員は基本的に(3),(4)については妥当な判断を下すようです。(5),(6)についても、契約前であれば、妥当な判断を下すのではないかと思います。

 家の中で映らなくても契約が必要か?家の中で映らなければ、契約不要
出典:NHK船橋営業センター職員との電話, ワンセグ契約 NHK正職員の見解 - YouTube (38:12), 2014/8/10公開.

 また、後述のワンセグ裁判でのNHK側の弁護士の主張としては、(3)「自宅では映らない」場合であっても、契約は必要としています。

・ ワンセグ携帯は持っていれば、自宅で映らなくても、契約は必要。
・ 自宅では映らないものであったとしても、ワンセグ携帯が「協会の放送を受信することができる受信設備」であることには変わりはない。
出典:ワンセグ裁判2回目口頭弁論, ワンセグだけでNHKと契約する必要があるのか?裁判 - YouTube (13:29), 2015/10/21公開.

2.3 一般人の判断

 一般の方の感覚では、(1)~(6)のいずれの場合でも、契約は不必要です。梓澤弁護士や立花氏は、次のような見解を出しています。

 ワンセグスマホでは「放送の受信を目的としている」わけではないので、放送法64条第1項但し書きに該当し、契約の必要はない。
出典:梓澤弁護士との対談, NHKと携帯電話持ってるだけで契約する義務はない 弁護士 梓澤和幸さん - YouTube (23:00), 2014/2/1公開.
・ワンセグ携帯は、放送法64条からすれば、契約の必要はありません。
・携帯電話は「設置」しないので「受信設備を設置した者」ではなく、契約義務はない。
・家の中で映らないのであれば、NHKも解約に応じる。家で映ると、解約には応じない。
出典:ワンセグ携帯でNHKと契約する義務があるのか? - YouTube (3:44), 2014/1/13公開.

2.4 放送法64条との関係

 前記の(1)~(6)の放送法64条との関係について検討します。

(a) ワンセグ携帯は、「設置」するものではない。
 放送法64条では、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」が契約をする必要があります。そもそも、携帯電話は設置するものではなく、携帯したり、所持したりするものです。後述のさいたま地裁の判決も「設置」という概念には、「携帯」は含まないと判断しています。このため、(1)~(6)のいずれであっても、受信契約は必要ありません。フルセグ受信できるタブレットやモバイルPCも、携帯して使用するものですので、受信契約は必要ないでしょう。

(b) ワンセグ携帯は、「放送の受信を目的としない受信設備」である。
 携帯電話やスマホは、「放送の受信を目的としない受信設備」であり、電話であったり、インタネット接続する目的のための端末です。従って、(1)、(2)の場合、放送法64条但し書きが適用できます。但し、テレビを見るのであれば、「放送の受信を目的とする受信設備」で受信契約が必要であると解釈することが可能です(判例はありません)。

(c) ワンセグ放送が映らなければ、「放送を受信することのできる受信設備」ではない。
 ワンセグ放送が受信できなければ、「協会の放送を受信することのできる受信設備」ではありません。ワンセグ携帯は、設置して使用するものではなく、携帯して使用するものであるため、ワンセグ放送が映ることができる場所に移動できますが、主たる利用場所で使用できないのであれば、「協会の放送を受信することのできる受信設備」ではないと言えるので、(3)(4)は契約不要と考えるべきです。NHK弁護士は「受信可能な設備」であるために、契約が必要としていますが、そうであれば、離島のワンセグが映らない場所でも、受信契約が必要ということになります。NHK正職員であれば、主たる利用場所で使用できない場合には、契約不要と判断する場合が多いようです。

(d) 携帯電話の「設置者は」だれ?「設置場所」はどこ?
 携帯を設置の概念に含めた場合、「設置した者」は誰か、「設置した場所」はどこか、という曖昧性を生じさせます。(5)の法人契約の携帯電話の場合、「設置者」が、「所有者・携帯電話の契約者(会社)」なのか、「携帯して使用した者(個人)」なのか、不明確です。会社契約の携帯電話であれば、個人には契約の必要性はないと個人的には思いますが、「設置」が「携帯」を含むのであれば、個人にも契約の必要性が発生します。(6)の場合、「設置した場所」が本宅であるとすれば、別宅では契約不要です。このような曖昧な場合については、放送法でも受信規約でも明確にされていません。強行法規である放送法に基づく契約は一意的に決められるべきですが、この点からも、さいたま地裁判決による「設置」の解釈が妥当で、「携帯」も含まれると拡大解釈すべきではありません。

3. ワンセグ裁判

3.1 朝霞事件 (朝霞市議の大橋議員による裁判)

 「NHKから国民を守る党」代表の立花孝志氏(元船橋市議、元東京都知事候補)は、受信料不払いの訴訟、集金人の不法行為に関する訴訟、時効を争う訴訟、イラネッチケーの訴訟など数多くのNHK裁判を行っています。ワンセグ裁判も、これら一連の訴訟のうちの一つです。

 さいたま地裁が判決が下した訴訟は、複数のワンセグ訴訟の中でも、初期に提訴された裁判で「NHKから国民を守る党」の朝霞市議会議員の大橋昌信氏が原告となりNHKを提訴しています。

3.2 提訴の背景

 大橋氏は、朝霞市議への立候補に伴って、朝霞市に単身赴任の形で転居しましたが、テレビを持たず、ワンセグスマホ(以下、ワンセグ携帯)のみを所持していました。NHKにワンセグ携帯の所持により、NHKとの契約が必要か問合せたところ、契約の必要があるという回答であったため、契約の必要はないのではないか、ということで、放送受信契約の締結の必要がないことの確認を求めるとして、NHKを提訴しています。裁判経緯については、付録Bにまとめますので、ご参照ください。

3.3 主な争点と裁判所の判断

 2016年8月26日のさいたま地裁(大野和明裁判長)の判決の要旨は、以下の通りです。

原告の主張

  • (主位的主張) ワンセグ携帯を設置しておらず、携帯しているだけである。従って、放送法64条の「設置した者」に当たらない。
  • (予備的主張) 大橋氏のワンセグ携帯は、携帯電話として使用するものであって、放送法64条但し書きの「放送の受信を目的としない受信設備」に当たる。ワンセグ放送も視聴したことがない。

 上記の理由により、大橋氏のワンセグ携帯では、受信契約は必要ない。

NHKの主張

  • 放送法64条の「設置」は、「使用できる状態におくこと」(受信規約第1条)である。
  • 放送法147条の「有料放送」の定義をはじめ、他の法規でも、「設置」に「携帯」が含まれると考えられる場合がある。
  • 放送法64条の但し書きの「放送の受信を目的としない受信設備」であるか否かは、客観的・外形的に明らかであるかによって判断されるべきで、視聴者の主観によりその目的を有するか否かは関係ない。

裁判所の判断

  • 他の放送法の定義中で用いられている文言からすれば、「設置」とは「携帯」を含むと解釈することは、一般的な法解釈としてはあり得る。
  • しかし、課税要件明確主義から、「設置」が「携帯」を含むと解すべきとは言えない。
  • 「設置」が「使用できる状態に置く」と解することはできず、携帯を含まないので、「設置した者」に当たらない。

 原告の主位的主張(「設置した者」に当たらない)を認め、契約義務はないと判断できたので、予備的主張である放送法64条但書の「放送の受信を目的としない」点については、判決では判断を下していません。

判決

  • ワンセグ携帯で、受信契約する必要はない。

3.4 逆転敗訴の可能性

 今回の判決はNHK敗訴でしたが、判決文を読む限りでは、今後のワンセグ裁判で、NHK勝訴となる可能性もありそうです。

 争点となりそうなポイントは、法解釈の安定性です。

  • 一般的な法解釈として、「設置」の概念に、「携帯」を含むと解釈できること。
  • 放送法のH21/H22改正で「携帯」の用語が導入されたが、それ以前の放送法64条に基づく放送受信規約では、長年、携帯用受信機も含まれ、ポータブルテレビの時代から契約対象と解釈されていたこと。
  • 総務大臣及び総務省も、携帯用受信機(ポータブルテレビ・ワンセグ携帯)を受信契約の対象と解釈してきたこと。

 法解釈は安定的であるべきという観点からすれば、H21/H22改正で、放送法2条14号に「携帯」の用語が導入されても、従来通り放送法64条の「設置」の概念には「携帯」が含まれると解釈すべき、という考えもあると思います。

 但し、放送法64条の「設置」の概念に、「携帯」が含まれるか、否かの司法判断は、今回が初めてですので、従来の行政による法解釈を踏襲する必要は必ずしもないと考えられます。

(追記:2017/6/14) 同様のワンセグ裁判では、水戸地裁は受信契約の義務ありと判決を下しました。
【NHK】ワンセグ携帯に受信契約の必要あり?ー水戸地裁判決ー - 時事随想

4. 地裁判決後の影響

4.1 NHKの対応

 NHKは、今後も、ワンセグ携帯で受信契約の締結と受信料の支払を求める旨の声明を出し、控訴しています*2

4.2 総務省の対応

 判決後の9月2日の記者会見で、高市総務相が、「総務省として、受信設備を「設置する」ということの意味を、「使用できる状態におくこと」と規定した日本放送協会放送受信規約を昭和37年3月30日に認可していますから、従来から、ワンセグ付きの携帯など携帯用の受信機も受信契約締結義務の対象であると考えています」と述べています*3

 9月6日には、総務省がNHKに対してワンセグ携帯の契約の実態調査を行うと報道されています*4。ワンセグ契約の受信契約の変更に繋がるかは不明ですが、何らかの見直しがある可能性もあります。

 例えば、ワンセグ携帯に課金するとしても、月々1000円の通信料金のワンセグ携帯に月々1310円のNHK受信料が上乗せされてはたまったものではありませんので、ワンセグ契約については料金が変更されることも予想されます。

4.3 ワンセグ裁判の状況

 立花氏によるワンセグ裁判の解説や今後の展望については、付録Cにまとめました。今後も、NHK被害者による裁判を行うことで、判例を積み重ねる方針のようです。また、テレビ朝日や総務省の提訴も行う予定です。

 さいたま地裁の朝霞事件は、NHK控訴により、東京高等裁判所における控訴審となっています(付録D参照)。法律の解釈を行う法律審であるため、1回結審で、2017年3月頃に、判決が下されると見込まれています。

 また、朝霞事件以外に、少なくとも5件の新しいワンセグ裁判が立花氏により提訴されています(付録E参照)。

5. 最後に

 ワンセグ携帯の契約は、NHK集金人によって半ば強要によって、一般視聴者、特に、異議を言えない弱い視聴者に行われています。今回の判決からすれば、これらの契約者は、NHKの不当な法解釈によって契約をさせられた、NHK被害者です。

 また、ワンセグ携帯の受信契約は、総務省をはじめとする官公庁、裁判所、自治体などの法人契約はほとんどありません。NHKを監督し、「ワンセグ携帯で契約が必要」といっている総務省自らがワンセグ携帯で契約をしていないということは許されざる事実です。

 最高裁判決を待つのではなく、NHK被害者をこれまで以上に増やさない施策や、既契約者の被害額を増加させないような施策を早急に進める必要があるのではないかと思います。少なくとも、最高裁判決での敗訴・受信料返金を想定し、ワンセグ契約の状況を把握しておくことは最低限必要でしょう*5

(2016/11/20)
(2016/12/15:最終更新日)
NHKワンセグ受信料裁判【新件】 - YouTube (2016/12/14公開) を反映

関連記事

関連動画

目次

付録A. テレビ朝日「ハナタカ」事件

A.1 事件概要

 テレビ朝日の「ハナタカ」にて、ワンセグ携帯で受信料支払の義務があると間違った情報を放送した。これにより、立花氏らが「NHKから国民を守る党」を原告として損害賠償を請求した事件。

A.2 裁判の経緯

  • 2016/5/23公開 (テレビ朝日「ハナタカ」)
  • 2016/9/28公開 (訴状の説明)
    • テレビ朝日のウソ番組を提訴しました NHKから国民を守る党 - YouTube (21:12)
      • 原告を「NHKから国民を守る党」とした損害賠償請求事件。
      • 訴状
        • 原告には、大橋議員・多田議員がいる。立花も東京都知事選に立候補。
        • 「ハナタカ」で「ワンセグ携帯で受信料支払義務がある」と放送した。原告に問合せ電話が殺到。
        • 大橋議員が、放送内容が事実と異なる。どのような取材をしたのかと聞いたところ、NHKホームページで調べたとのこと。
        • 訂正放送してほしいと求めたが、しない。
        • 放送法4条に抵触する。
        • 被害:
          • 原告はワンセグ携帯では契約不要と政治活動し、今後もする。
          • 被告の放送によって、多くの視聴者に間違った情報を与えたがため、原告の主張があたかも誤っているかと理解された。
          • 原告の政治活動に被害をもたらした。
          • 被害額は10万円を下らない。訴額10万円。
      • 山本早苗(高市早苗)総務大臣から、情報公開の開示決定が来た。総務省の受信契約状況に関する資料は、近々に開示される。
  • 2017/01/23公開(東京地裁前,第1回口頭弁論)

付録B. 朝霞事件のさいたま地裁における裁判経緯

付録C. さいたま地裁判決に対する立花氏の解説など

付録D. 朝霞事件の控訴審(東京高等裁判所)

  • 2016/10/14公開 (弁論準備、裁判所前で報告)
    • ワンセグ受信料裁判控訴審 東京高等裁判所 報告 - YouTube (18:31)
      • 進行協議(11/25), 弁論期日(1/23), 1回結審。2017年3月頃、判決。
      • 裁判所からのNHKの指示:他のワンセグ裁判を報告して下さい。
        • 東京地裁×2、水戸地裁、千葉地裁松戸支部、大阪地裁、神戸地裁(いずれも、立花支援)
      • 逆転敗訴だったら、総務省はじめ各省庁、自治体に契約を求めればよい。
  • 2016/10/27公開 (控訴理由書解説)
    • ワンセグ受信料2審裁判 途中経過 - YouTube (13:21)
      • NHKの控訴理由書
        • 「設置」は「使用できる状態におくこと」とするべき。
        • ラジオ・ポータブルテレビで課金していた時代があり、そのときは、課金の対象であった。
      • 総務省の受信契約書を公開請求
        • 受信機数が変動しているが、4月1日付で一括で契約しており、契約日・解約日・受信機数の記載がない。
        • ほとんどの自治体でワンセグで契約していない。
      • 勝訴でも敗訴でも、勝ち。
  • 2017/01/24公開 (裁判所前)


付録E. ワンセグ判決後の受信料返還請求訴訟

E.1 その他のワンセグ裁判の状況報告

  • 2016/8/26公開 (ワンセグで返金請求訴訟をする。その他の裁判状況報告)
    • ワンセグ裁判でNHKに勝訴したので今後の活動を紹介させて頂きます - YouTube (13:49)
      • NHKは控訴。今後もワンセグ携帯での徴収は継続する。
      • 新規に立花自身で支払った受信料でNHKに返金提訴をする。
      • 多くの返金裁判の勝訴で、高裁・最高裁での逆転できないようにしたい。
      • ワンセグ以外。
        • 厚木市の視聴者。設置日を覚えていないので、どうすればよいか?をNHKに内容証明郵便で問合せ。
        • 8/30:レオパレス裁判(結審)
        • 9/7:イラネッチケー裁判(弁論準備)
        • 9/7:女性を脅して契約の慰謝料請求訴訟(結審)
        • 9/14:大阪地裁。時効20年の裁判。

E.2 立花(田中ひろし)事件

【事件概要】
 立花氏自身のワンセグ契約によるワンセグ裁判。放送受信料不当利得返還請求事件。

  • 東京地方裁判所
    • 2016/9/28公開 (立花もワンセグ裁判)
      • 立花孝志本人がワンセグ受信料裁判をNHKに仕掛けました - YouTube (21:58)
        • 新規のワンセグ裁判:水戸地裁、東京地裁、千葉地裁松戸支部、大阪地裁、東京地裁(立花)
        • H21(2009)年3月末、未収件数は243万件、未収金額442億円。
        • 訴状の説明。
          • テレビがなくても、ワンセグ携帯でも契約の必要があると説明を受け、NHKと田中ひろし名儀(立花氏のペンネーム)で契約した(4年前)。
          • H24年7月分1345円の支払い。設置日は記載させず、免除すると説明。
          • 東京地裁の判決では、「携帯」では受信契約は必要なし。
          • 契約は無効:民法90条に基づく強硬法規に反する契約で無効、民法95条の錯誤に基づく契約で無効、民法94条1項の通謀虚偽表示により無効
          • 民法704条に基づき、不当利得を返還せよ。
    • 2016/12/14公開 (第1回口頭弁論,裁判所前)

E.3 松戸事件

【事件概要】
 千葉県松戸市在住の視聴者。居住地以外に別宅を持っており、別宅でもワンセグ携帯を持っていれば、契約が必要と言われて、2015年12月に契約させられた事件。 民法90条に基づき、公序良俗に反する契約として、NHKは不当に根拠なく請求したとして、NHKに返金を求める裁判。

E.4 大阪事件

【事件の概要】
 原告男性(50才)は、親の代からNHKと契約していが、今年2月22日に羽曳野市から大阪市内に引っ越した。引っ越しの際にテレビは不要のため、会社の同僚にあげたので、NHKに電話したが、ワンセグ携帯を持っていると解約を拒否。契約解除を求めて、NHKを提訴。

  • 大阪地方裁判所
    • 2016/12/2 (第1回口頭弁論、裁判所前)
      • ワンセグ受信料裁判 大阪地裁第1回目報告 - YouTube (18:08)
        • 原告視聴者へのインタビュー。
          • 訴状朗読。
          • NHKからの質問「他のテレビはないか?」「携帯電話の機種は?」(ソニーのXperia(ワンセグスマホ) )
          • 次回は、2/2。訴状提出は9月2日。
          • 事実審ではなく、法律審なので、早い。
          • ワンセグでは負けない。裁判所も大阪市役所も払っていない。
          • テレ朝系の朝日放送から取材があった。
          • テレビ撤去不要でも、ワンセグで解約できない人に意義のある裁判。
          • 弁護士を付けると高い。NHKに弁護士法違反で刑事告発された。

付録F. 関連裁判

新潟事件

 立花氏により一番最初に提訴されたワンセグ裁判と思われるが、その後の報告がない。原告の事情等により提訴が取下げられたものと思われる。

  • 2015/8/5公開 (NHKを提訴、訴状の解説)
    • ワンセグ受信料・裁判提訴しました (7:36)
    • 新潟県南魚沼市の視聴者。ワンセグ携帯しか持っていない視聴者に受信契約がないことを確認する訴訟。
    • 携帯電話は設置するものではなく、携帯するもの。
    • 放送の受信を目的としていない。
    • 事実審ではなく、法律審。法律の解釈を問う裁判


*1:
日経新聞, 「ワンセグ携帯、NHK受信料不要 地裁判決 」, 2016/8/26.
J-CASTニュース, 「ワンセグは「NHK契約の義務なし」 NHKは「解釈を誤ったもの」と判決を批判」, 2016/8/26.

*2:NHK, 「ワンセグ機能付き携帯電話での受信契約に関わるさいたま地裁判決について」, 2016/8/26.

*3:
時事通信, 「ワンセグもNHK受信料義務=高市総務相」, 2016/9/2.
朝日新聞DIGITAL, 「ワンセグ携帯にも「NHK受信契約の義務」 高市総務相」, 2016/9/2.
ハフィントンポスト, 「NHK受信料は「ワンセグ携帯も対象」 高市早苗・総務相、地裁判決に反論」, 2016/9/2.

*4:
朝日新聞DIGITAL, 「ワンセグ受信料、総務省がNHK聴取へ 見直し要求か」, 2016/9/7.
ハフィントンポスト, 「NHKを総務省が聴取へ ワンセグ受信料の見直し要請も」, 2016/9/7.
産経ニュース, 「ワンセグ携帯での受信契約、総務省がNHKに実態調査へ 「契約不要」の地裁判決受け」, 2016/9/7.

*5: (2018/1/19:追記)
NHKは、2017年6月から受信機の種類(ワンセグ携帯を含む)を書くように受信契約書の様式を変更しました。これ以降に新規契約したワンセグ契約者については状況把握できそうです。最高裁で敗訴すれば、ワンセグ契約者への解約・返金のお知らせを通知できるようになりますが、NHKなのでどうするのやら。
NHK, 「ワンセグ受信機のみのご契約者への取り組みについて」, 2017/6/30.

【天皇】天皇退位の判断基準

 天皇の「お気持ち」の表明以来、生前退位の議論が具体的になっています。「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」という何とも長い名前の会議体ですが、菅官房長官によれば、来年の通常国会には法案を提出したいとのこと*1。今の天皇のみの特例法となりそうですが、今回は、天皇の退位の判断基準について検討したいと思います。

1. 生前退位の判断基準の設定

 生前退位の恒久法を考えた場合、いろいろな要素を考えなければならなず、意外と難しい問題かもしれません。

 生前退位の制度設計の重要な要素の一つは、どこのタイミングで退位する・退位させるかという判断基準を作るということでしょう。現在のように死去に伴う退位であれば、医学的判断だけで済みますが、それに代わって新しい判断基準を作らなければなりません。また、退位の承認プロセスも考えなければなりません。

2. 想定される退位の状況

 退位を考えるに当たって検討すべきこととして、退位するか、退位させるかという問題があります。「退位する」は、本人の希望によるもの、「退位させる」は本人の意思に寄らないものです。

 その中にはいくつものケースが考えられるでしょう。例えば、さっと思いつくだけでも以下のような場合があります。

  • 本人の意思により退位する場合
    • 政治的意図がない場合
      • 老衰による場合(今回の場合)
      • 傷病による場合
         例えば、(雅子妃の)適応障害のような場合
      • (皇室離脱し)普通の生活を過ごすため
      • 本人のわがままによる場合
      • 本人の不祥事に伴う謝罪の念による場合
    • 政治的意図がある場合
      • 政権に抗議するため。
         例えば、戦争開始に当たって政府に抗議するため
      • 退位後、(皇室離脱し)政治的活動を行うため
  • 本人の意思に寄らず退位させる場合
     本人意思には退位を希望する場合と希望しない場合がある。
    • 政治的意図がない場合
      • 老衰による場合
      • 傷病による場合
      • 天皇としての適性・品位に欠ける場合
        • 麻薬使用、女性スキャンダルなど
        • 犯罪を犯した場合
    • 政治的意図がある場合
      • 特定の政治思想を持つ天皇を退位させるため
         例えば、以下のような場合。
        • 平和主義の天皇を退位させるため
        • 戦争賛美の天皇を退位させるため
      • 統治者の権力を示威するため

 他にもたくさんのケースが考えられそうです。制度設計の場合にはあらゆる場面を考える必要があるでしょう。

3. 客観的事実に基づく判断基準

 基本的には政治的意図がある退位を回避するように制度設計しなければなりません。これは絶対的な条件でしょう。

 政治的意図のある退位を回避するためには、客観的事実に基づく判断基準を設けることが考えられます。例えば、次のような基準です。

  • 年齢に基づく基準
    • 定年を設ける。例えば、70歳で退位する。
  • 医学的判断に基づく基準
    • 身体疾患の場合
    • 精神疾患の場合
  • 犯罪に基づく基準
    • 殺人など重大な刑法犯罪を犯した場合など

 他にも客観的な事実に基づく判断基準は設けられるかもしれません。

 身体疾患や精神疾患については、既に摂政を置く規定で示されていますので、天皇の退位についても、これを適用することになるのでしょうか。

第十六条 2 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。
出典: 皇室典範

 摂政を置く基準の一つである第16条2項を廃止し、天皇を退位させるというように変更するのでよいかもしれません。皇室典範によれば、皇室会議で摂政を置くことができますが、天皇退位では国会承認なども必要でしょう。

 しかし、この医学的判断の場合でも、皇室会議が恣意的な判断をする(医師にさせる)可能性があるので、それをどうやって防止するかも重要です。犯罪を起こす可能性はゼロではありませんが、犯罪に基づく基準は検討から除外してもよいですかね。他国の例も参考にして、いろいろと議論をする必要があるでしょう。

 個人的に考える基準は、以下のものです。

  • 年齢に基づく基準の導入:
     死去退位の制度は廃止し、定年に達した場合に退位する(定年制の導入)
     国王に定年制を導入した国は、聞いたことがなく、反対意見も多くでそうです。
  • 医学的判断の導入:
     意識回復が見込めない身体状態になった場合(脳疾患等により意識回復しない場合を想定)

 認知症や末期癌の場合は、どうしましょう?想定しなければならないケースですが、認知症や癌は徐々に進行するので、境目の判断が難しいです。適性・品位に欠けるような場合は、退位させたくとも、退位させる客観的基準を設けることが難しいです。最低限の公務のみをさせて、あとは表に出さないようにする?

4. 退位後の処遇

 退位後は、他の皇室と同様に公務を行うことになるのでしょう。但し、退位後でも、その発言力・発信力は大きいと考えなければなりません。天皇と同じように政治的自由を与えないことが必要です。つまり、皇室離脱をさせず、天皇と同様に発言や行動の制限を継続させる必要があります。人道的とは言えないかもしれませんが、天皇制を廃止しない限り、このような制限は必須でしょう。

 今の天皇は、上皇となることを想定しているようですが、退位した天皇がすべて上皇となる制度というのも考えさせられます。皇室の中のお爺ちゃんという位置づけで、公式な地位としの「上皇」は設定しない方がよいと個人的には思います。ここも議論となりそうな点です。

5. 最後に

 天皇の生前退位について考察しました。政治的意図を排除することが絶対的条件と思いますが、国民全体が納得する基準を設けることは難しく、今回の特例法では、特に明確な判断基準は設けないと思います。特例法が成立した後は、皇室典範の改正に及ぶ本格的な議論は先送りにされ、議論が深まることはないでしょう。

(2016/11/16)

関連記事

【NHK】NHK受信料の断り方

 NHKの集金人が来てお困りの方も多いと思いますが、個人的な経験+αに基づくNHK受信料の断り方です。ご参考にして頂ければ幸いです。

 いろいろ書いていますが、NHKを見る必要はなく集金人を撃退できない気の弱い方へのお勧めは、「イラネッチケーを設置して、NHK撃退シールを張る」です。

(長い記事です。目次はこちらをご参照ください)

1. NHKの訪問は生涯で3回だけ

 実は、NHKの集金人の訪問を受けたのは、生涯で3回しかありません。

 1回目は20年ぐらい前の若かりし頃で、放送法32条(現64条)のビラを出してきて法律を盾に受信契約を迫ったことから、こちらの方が逆切れ。若い集金人で怖いというような人ではありませんでしたが、放送法をチラつかせて、弱いものから取り立てるような集金方法に切れてしまい、さらに白黒契約でもよいからと勝手にダンピングしてきたので、こちらの逆切れにも拍車がかかってしまいました。

 2回目は、1回目の訪問の謝罪と契約のお願いとして正社員と一緒に菓子折りを持っての来訪でした。

 最後の3回目は、1年ほど前に当時住んでいたマンションに訪問に来た時です。このときの集金人は、怖いというか、気持ち悪いというか、変な人でした。

 その3回目以外にも、数回NHKらしき人は訪問してきたことはありましたが、あれはNHKだったのか定かではありません。

 現在は、受信料の集金は行わず、契約収納業務を行うので、集金人や徴収員ではなく、訪問員と呼ぶようです。契約形態によって地域スタッフとも呼びます。最近は契約収納業務を民間委託するようにしているため、人相の悪い人が多くなったのかもしれません(2009年に5%だった法人委託比率は2015年には47%となっています*1 )。

2. 受信料支払の根拠

2.1 放送法64条

 テレビを持っているとNHKに受信料を支払わなければならないと、俗に言われるのは、放送法64条とNHK放送受信規約にその根拠があります。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)のみを設置した者については、この限りでない。
出典:放送法

 最近では、チューナーをつけてテレビが映るパソコンやワンセグ携帯なども、NHKは受信料を払えと言っています。

 但し、ワンセグ携帯については、さいたま地裁の判決でNHKは敗訴しています。受信契約の必要はありません。

 ワンセグ裁判の争点は、「設置」という概念が「携帯」を含むか否かですが、「携帯」は含まないという判決です。最高裁でも判決が覆ることはないでしょう。タブレットも設置して使うものではなく、携帯して使うものですので、ワンセグ・フルセグ問わず、NHKとの契約は不要です。もちろん、NHKの主張に従って受信契約しても構いません。

2.2 NHKを視聴している人は、受信契約してくださいね

 NHKを視聴している人は、受益者負担という観点からも、NHKと受信契約をして、受信料を支払いましょう。タダ乗りは良くないです。支払っている世帯の方が、その分多く受信料を支払うことになります。

 我が家もNHK受信料を支払っているので、宜しくね(笑)。

 以下は、NHKを視聴しない人のための記事です。

3. イラネッチケーを取り付ける

 通称、イラネッチケーとは、筑波大学の掛谷英紀准教授が開発したNHKの電波信号を減衰させるカットフィルタで、iranehkという製品名で販売されています。

 地デジ用、BS放送用があり、Amazonから購入できます。


 NHKを視聴せず、NHKと交渉することができない気の弱い方は、このイラネッチケーを取り付けてみてください。NHKを受信することができない設備になりますので、放送法64条の契約義務はなくなります。NHKを視聴できないので、後ろめたい気持ちを持つことなく、NHK集金人を断ることができます。

4. NHK集金人の断り方

 子供の頃、消火器詐欺に会いました。「消防署のほうから来ました」といって作業制服を来た訪問人に消火器を売りつけられました。消防署の人の着るような制服を着て、消防署からきたと言ったので、てっきり消防署の人と勘違いしてしまったのですよね。それ以来、訪問販売は基本的にお断りです。NHKも例外ではありません。

4.1 基本方針は、問答無用で門前払いすること

4.1.1 問答無用で門前払い

 NHK集金人の場合、テレビの有無や受信契約の受け答えをしてしまうと、その後が長くなってしまいます。具体的な話にならないうちに、問答無用で門前払いするのがよいのではないかと思います。

 でも、ついつい受け答えしてしまうのですよね。うっかり、テレビを持っていない、NHKを見ていない、DVD用だとか余計なことを言えば、相手に突っ込む隙を与えることになります。

 テレビがないと言えば、ワンセグは?パソコンは?…と話しを続けられて、テレビはどうやって見ていますか?とNHKの話が続きます。NHKを見ていないと言えば、NHKを見ていなくても、放送法64条ではテレビを設置していれば受信契約の義務がありますなどと話が続けられます。

 視聴者が口を開いたときに言う大抵のことは、想定問答集にあるので、集金人はどう対応すればよいか知っているのです。

 こちらとしては、集金人との問答は無用、まさに問答無用で対応するのがよいのです。

 うっかり口が滑ってしまったときは、イラネッチケーを付けていると説明すればよいでしょう。イラネッチケーを付けていれば、契約の必要はありませんので、NHKが何を言おうと堂々と契約拒否できます。

4.1.2 イラネッチケーに対するNHKの「お客さま対応Q&A」

 このイラネッチケーについても、最新の想定問答集では書かれているようです。このため、すんなりと聞き入れてもらえないとは思いますが、こちらは契約義務は無いと知っていますから、強要に屈して契約しないようにしましょう。

 NHKの「お客さま対応Q&A」には、次のように記載されています。

Q18. チャンネル設定を調整して、NHKの番組をリモコンで選択できないようにしたテレビは受信契約が必要か?
● チャンネル設定を調整して、NHKの番組をリモコンでは選択できないようにしたとしても、テレビの基本的な構造はNHKの放送を受信することができますので、受信契約は必要です。
● 放送法第64条第1項にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備」であるかどうかは、そのテレビの基本的構造によって決まってきます。現在、国内で販売されている受信機は、その基本的な構造が協会の放送を受信できる性能を備えています。
● このような受信機に対しては、
 ○ 協会の番組をリモコンで選択できないようにチャンネル設定を調整したり
 ○ 協会の放送を受信するためのコイルを抜くなどして改造したり
 ○ 協会の放送を受信するためのアンテナを取り替えたり(筆者注:イラネッチケーを想定)
しても、受信機の基本的構造自体には変わりがなく、協会の放送を容易に受信することができるように作られているので、これらの場合も受信契約を締結し、受信料を支払っていただくことになります。

4.1.3 イラネッチケー向け想定問答

 まじめに議論する場合のNHKとの想定問答は、例えば、以下のようになります。

  • 視聴者:イラネッチケーというNHKが映らないようにするものを取り付けているので、うちのテレビはNHKが映りません。だから、受信契約はしません。
  • NHK:それを取り付けても、外せば、NHKが映るようになりますよね。その場合は、受信契約が必要なんですよ。放送法64条では「NHKの放送を受信できる受信設備」では契約が必要となっているので、イラネッチケーを付けても契約が必要です。
  • 視聴者:放送法64条には、「設置した者は契約しなければならない」と書いてありますよね。放送受信規約の第1条第2項には「設置」は「使用できるようにすること」と書いてあります。だったら、うちのはNHKの放送を視聴できないのだから、契約の必要はないですよ。
  • NHK:それは、コンセントの抜き差しと同じなんですよ。コンセントが抜けても、差し込めば、直ぐに、テレビが映るようになりますよね。だから、イラネッチケーを付けていても、すぐにテレビが映るようになるので、契約が必要なんです。
  • 視聴者:見解の相違ですね。ワンセグ携帯も、NHKは契約が必要と言っていますが、裁判所はNHKが言うことは間違えだと言っていますよね。
  • NHK:え~(言葉につまる) (or あれは地方裁判所の判断が間違っているので、NHKは上告しています)
  • 視聴者:あなたやNHKの主張は、こちらはとしてはこれ以上聞く必要はありません。それでも、契約をしろというのであれば、こちらとしては裁判所の判断を仰ぎたいと思います。裁判をしてください。訴えてください。
  • (オプション)視聴者:あなたが訴えないのであれば、こちらがあなたやNHKを訴えてますが、いいですか?「NHKから国民を守る党」の立花さんと相談して、訴えますよ。いいんですね?(以下、略)
     (本当にNHKを訴えてみたい方は、立花氏と相談されるとよいかと思います。実際、NHKとイラネッチケー裁判しており、衛星放送用のイラネッチケーで裁判される方を募集しています(2016/2/12現在))

 面倒ですね。ここまで、論戦できればもともとイラネッチケーなくても、撃退できそうです(笑)。ショートバージョンの想定問答も考えました。

  • 客:イラネッチケーというNHKが映らないようにするものを付けているので、うちのテレビはNHKが映りません。だから、受信契約はしません。
  • NHK:(ロングバージョンと同様)
  • 客:ワンセグでも契約が必要って言いましたよね。裁判所はワンセグは契約不要って言っているじゃないですか。あなたは嘘言ったんですよ。あなたやNHKの言うことは信用できません。契約しないので、帰ってください。(以後、問答無用で追い返す)

 以下では、いろいろなところで言われているNHK撃退方法をまとめます。

4.2 身元確認

 どこの誰か分からない人と話をする必要はありません。まずは、身元をしっかりと確認しましょう。NHKは、地域スタッフや委託会社の社員スタッフのみならず、正職員も、身元を明かすのを嫌うそうです。

想定問答です。

  • 視聴者:(以下は、オプション)
    • いやぁ~、最近、振り込め詐欺とかいろいろ多いのですからねぇ~。
    • つい先日も叔母さんのところにオレオレ詐欺の電話がかかってきて、危うく騙されるところでした(これ本当)。
    • 近所の農協職員の方と話していたら、振り込め詐欺の講習があるとか言うから、話を聞いたら、結構、あるということなんですよ(これ本当)。
    • 市役所職員を名乗った還付金詐欺がきているという市内放送もしょっちゅうあるし(これ本当)。
    • 私も、訪問販売の詐欺にあったことがあるんですよ(これも本当)。
  • 視聴者: 身元をしっかりと確認させてもらいますけど、構いませんか?
  • (step 1:身分証の確認)
    • 視聴者:まず、身分証を見せてください。
    • 視聴者:これは「NHKの職員証」ではないですよね?さきほど、NHKといいましたよね?嘘ですか?
    • NHK:私は委託された会社のものです。
  • (step 2:運転免許証)
    • 視聴者:この身分証では信用できません。運転免許証も見せてください。
    • NHK:それはできません。
    • 視聴者:だったら、あなたを信用できません。お帰りください(以下、略)
  • (step 3:名刺)
    • 視聴者:お名刺も頂けますか?
    • NHK:名刺はありません。
    • 視聴者:(step 4:写真撮影) へ続く
  • (step 4:写真撮影)
    • 視聴者:スマホで身分証の写真とってもいいですか?
    • NHK:困ります。
    • 視聴者:だったら、あなたを信用できません。お帰りください(以下、略)
  • (step 5:営業所に電話)
    • (身分証・運転免許証・名刺+写真撮影を全てクリア)
    • 視聴者:NHK営業所に電話して身元確認します。
      • (営業時間外の場合) 今の時間帯は、NHK営業所の時間外ですね。後日、お伺い頂けますか?
         予め、自分の地区の営業所の電話番号を玄関口に貼っておくとよいでしょう。営業時間は平日10:00~17:00なので、土日・夜間の訪問は、身元確認できないでしょう。追い返せます。委託会社の電話番号を教えられても無視しましょう。
  • (営業所への身元照会の完了で、一応、すべてクリアです)
  • 視聴者:いろいろお手数を掛けました。お勤めご苦労様です。

 「身分証」、「運転免許証」(公的身分証明書)、「名刺」、「NHK営業所への身元照会」をすべてクリアできれば、次の話のステップに入ってもいいですかね。ここまで、疑われると、集金人は、途中で撤退するような気もしますが。

 身元追及する方も、気合いがいりますが、途中でクリアできなければ、「信用できません、お帰りください」と追い返してしまいましょう。

 身元確認完了後の想定問答です。

  • 視聴者:で、ご用件は何ですか?
  • NHK:受信料の件でお伺いいたしました。
  • 視聴者:契約しませんよ。帰ってください。

 以降、話を続ける勇気がある集金人はいるでしょうか(笑)

 上記の問答では、一つ一つ確認していきましたが、営業所の営業時間外ならば、いきなり営業所への身分照会のステップから始めた方が手っ取り早いですね。

  • 視聴者:NHK営業所に身分照会かけますので、身分証を提示してもらえますか?
  • NHK:これですけど…。
  • 視聴者:そういえば、いまの時間は、営業時間外ですね。営業所の営業時間内にまた来てください。

4.3 法律を良く知っていることを伝える

4.3.1 私、NHK撃退法を知っています

 以下をすらすらと言えれば、NHK撃退法をよく研究していて、契約拒否の意思が強いことが分かります。手ごわい相手と議論しても無駄ということで、すぐに帰るでしょう。

「わざわざいらっしゃって申し訳ありませんが、うちにはテレビワンセグ携帯チューナー付きパソコンカーナビも1台もありませんし購入の予定もありません。放送法第64条記載の「協会の放送を受信することのできる受信設備」は設置していませんので契約の必要がない世帯です。そのように今すぐナビタンに登録して下さい。分りましたか?」とインターホン越しに速攻で言って切る。
※ナビタンとはNHK情報端末・訪問日や詳細を入力できる
出典: NHK受信料の断り方 - Yahoo!知恵袋

 受信契約のポイントをコンパクトにまとめています。特に「ナビタン」は、お主は手強いな、というキーワードです。

 イラネッチケーの場合、「うちにはNHKが映るテレビも…」と言えば、嘘はありません。

 但し、集金人が来た途端に、即座にこれを言える人は、少ないかな?

4.3.2 裁判してください

 4.3.1と同じく放送法・撃退法を良く知っている人としての対応の仕方です。立花孝志氏のYouTubeに紹介されていました。

 NHKを1分で追い返した28歳女性の証拠音声 - YouTube (2015/2/28公開)

  • NHK: 「夜分、恐れ入ります。NHKです」(よく聞こえないけど、こんな感じ。以下、同じ)
  • 女性:「はい」「はい」
  • NHK:「NHKの受信料の件でお伺いしました」
  • 女性:「あの~、うちテレビあるんですけど、テレビあるんですけど、NHKを受信する目的で置いているわけではないので、…」
  • NHK:「法律によってテレビを設置した場合、受信契約をする必要があるんです」
  • 女性:「あの~、放送法というのがあって、あの~、64条です。あの~、NHKを受信する目的ではなく、うちは設置しているので、契約する必要はないかと思うんですが」
  • NHK:「NHKを見ていなくても、受信料は払ってもらう必要があります」
  • 女性:「あの~、もし、あの~、私に、あの~、払って欲しいのであれば、あの~、裁判起こしていただけませんか?訴えていただけませんか?
  • NHK:「あ、はい」(と言って帰る)

 約70秒で、NHK集金人は去っていきました。

 立花氏に入れ知恵をされているとは言え、いかにも頼りなさそうな女性が一人で対応して、勧誘をお断りしています。

 イラネッチケーの場合は、「NHKを受信する目的で置いているわけではない」のところは、「イラネッチケーというNHKが映らないようにするものを付けているので、NHKが映らないテレビなんです」「NHKは映らないので」というように変更すればよいでしょう。

 NHKを見ている視聴者なら、以下のような対応でもよいでしょう。

  • 視聴者:NHKを見てますが、受信料は払いません。文句があるなら、裁判してください。

4.3.3 受信規約は憲法違反です、訴えます

 NHK放送受信契約第9条の解約では、「受信契約を要しないこととなったとき」の証明(テレビがないことの証明)という悪魔の証明を求めています。実運用としては、第9条第2項の「NHKにおいて(略)事実を確認できたとき」を根拠に家宅捜索します。

 この家宅捜索は、プライバシー権を侵害していると言ってよいでしょう。つまり、NHK受信規約第9条第2項に基づく家宅捜索は憲法違反で、それを認めているNHK放送受信規約も憲法違反です。このような憲法違反となる受信契約に契約する必要はないでしょう。NHK及び受信規約を認可した総務大臣を提訴しましょう(笑)。

 想定問答です。

  • 視聴者:解約の際に、NHKの人が家に入ってきてテレビがないことを確認しないと、解約できないと聞いたんですけど~。
  • NHK:はい、場合によっては、そのようなときもございます。
  • 視聴者:そんなの嫌です。プライバシー侵害です。契約できません。帰ってください。
  • (オプション) 視聴者:家宅捜索を認めさせるような規約は、憲法違反です。NHKを訴えます。

4.3.4 テレビの設置日はどうすればよいのですか?

 受信契約書を書くところまで、追い込まれてしまったら、最後の反撃。テレビの設置日が分からないときにどうすればよいか聞きましょう。

設置日に嘘を書くと詐欺罪

 受信規約第3条では「受信機の設置の日」を受信契約書に記載することが求められています。また、受信規約第5条で、「受信機の設置の日」から、受信料を支払わなければならないことが定められています。 放送法64条2項では、総務大臣の認可なしに、受信料を免除してはならないとしており、集金人が勝手に受信料を値引くことはできません。

 集金人の方が、今日の日付を書いてもよいと言っても、正確なテレビの設置日を記入しないと、視聴者が詐欺罪という犯罪を犯すことになります。なぜならば、設置日が、契約日よりも以前である場合、本来ならば設置日から支払うべき受信料を(集金人と謀議して)日本放送協会を騙して、その支払いから逃れるという犯罪となるためです(刑法246条2項違反(所謂、2項詐欺))。

設置日がわからない場合はどうするの?

 視聴者は正しく設置日を記入しないと、詐欺罪を犯すことになりますが、設置日が分からない場合はどうすればよいのでしょうか?この場合の対応方法は、NHK集金人のみならず、NHK本体でも決めていません(NHKも値引くことを黙認し、新規契約する視聴者側にも利益があり、これまで、特に問題ならなかったので、設置日不明の場合のルールを決めてこなかったということでしょうかね。既存の契約者には不公平ですけどね)。

 想定問答です。

  • 視聴者:設置日が分からないのですが、どうやって書けばよいですか?
  • NHK:設置日が分からない場合は、ここの記載(設置日を書く欄)は不要です。
  • 視聴者:ここを記載しないと、記入日にテレビを設置したということになってしまいますが、昔の受信料は支払わなくてよいのですか?
  • NHK:はい、構いません。
  • 視聴者:それは、悪いことではないですか?私は、嘘や悪いことはしたくありません。(あるいは、それは、詐欺になるのではないですか?)
  • NHK:いや、皆さん、記入日のところだけ書いて頂いていますが、特に法律に問われるようなことはないので、ご心配いりません。
  • 視聴者:いえ、それは詐欺罪になります。正しく申告させてください。設置日が分からないのであれば、どうすればよいのですか?私は犯罪をしたくありません。
  • NHK:えー、その場合の手続きについては調べ直して、再訪問させて頂きます(答えに窮して帰る)

4.3.5 延滞利息を請求させる。できれば、自己破産する(笑)

 NHKはなぜか延滞遅延利息を請求するのは裁判の時だけのようですが、あえて、延滞利息を請求させてみても面白いかもしれません。

 想定問答です。

  • 視聴者:生まれてこのかた(親の代から)、NHKと受信契約していないのですよね。テレビの設置から50年以上になりますが、受信料はいくらぐらいになりますか?
  • NHK:50年間、地上契約ですと、78万6000円(=1310×12×50)になります。
  • 視聴者:その計算には、延滞利息が入っていませんね。放送受信規約12条2項に基づき延滞利息を含めて計算し直して下さい。
  • NHK:また、来ます。

 ちなみに延滞利息は2カ月毎に2%です。単利か複利か良く分かりませんでしたが、計算してみると、次の請求金額になります。

受信料単利 複利
4カ月 5,240円5,292円5292円
5年 78,600円101,394円106,288円
10年157,200円249,948円298,815円
15年235,800円445,662円647,550円
20年314,400円688,536円1,279,236円
30年471,600円1,315,764円4,496,028円
40年628,800円2,131,632円15,050,424円
50年786,000円3,136,140円49,679,720円

(料金改定は考慮せず)

 年12%複利は強烈ですね。50年で5,000万円、破産します。新聞一面のトップです(笑)。

「受信料50年滞納、NHK5000万円を請求」
「NHK受信料5000万円、50年滞納で自己破産」

 実際には、判例はないものの、少なくとも20年時効が適用できるでしょうから、最悪でも130万円ぐらいでしょう。誰か試してください(笑)。

4.3.6 受信規約を読ませてください

 契約書まで追い込まれてしまった場合に、なんとか踏みとどまる方法(その2)。

想定問答です。

  • 視聴者:受信規約をよく見せてください。
  • NHK:ここに、書いてあります。
  • 視聴者:字が小さくて読めませんし、いろいろ書いてあるので、じっくり読んでから、必要であれば、契約しますので、今日のところはお引き取り下さい。
  • NHK:(簡単なパンフレットを出して)ここに分かりやすく書いてありますので、分からないことがあれば、聞いてください。
  • 視聴者:契約書は必ず読むことにしています。今日のところは、お引き取り下さい。
  • NHK:それでは、またお伺いいたします。

4.4 魔法の言葉

4.4.1 魔法の言葉ランキング

えっ?それ言うだけ?NHK受信料を払わなくてよくなる魔法の言葉ベスト5 | 引越しハック

  • 第1位「テレビを持っていません」
  • 第2位「帰ってください」
  • 第3位「会社名と名前を教えてください」
  • 第4位「NHKで直接契約します」
  • 第5位「この家の人じゃないから分からない」

 第1位と第5位は、嘘であれば、気が咎めますし、あまり良くない対応でしょう。第1位は、嘘であれば詐欺罪に該当する可能性がありますが、イラネッチケーを付けていれば、「NHKが映るテレビは持っていません」と言えばよいでしょう。これならば、嘘はありません。

 ここでは、ランクインしていませんが、

  • 「あなたにお答えする必要はありません」(黙秘権の行使)
  • 都知事選に立候補して少し有名になった「立花孝志さん」+NHK撃退シール

も、効果あるのではないかと思います。

 第2位「帰ってください」と第4位「NHKと直接契約します」は、個人的には機会があれば使ってみたいワードです。

 第4位「NHKで直接契約します」を使う場合の想定問答としては、次のような感じです。

一通り、集金人の説明が終わった後で、

  • 「子供の頃、訪問販売の詐欺にあったので、訪問の方とは一切契約しません」
  • 「受信契約の必要があれば、インターネットで申し込みます」
  • 「お帰りください」「お帰りください」「お帰りください」…

 集金人は歩合制ですから、インターネットで申し込まれてしまうと、無駄な勧誘になりますから。どうなるか楽しみですが、今は、NHKと契約しているので、試す機会がないですけど。

 なお、契約の申込は、NHK受信料の窓口-放送受信料 新規契約のお手続きから出来ます。契約する場合でも、受信規約の解約条件には、特にご注意ください。

(放送受信契約の解約)
第9条 2 NHKにおいて前項各号に掲げる事項に該当する事実を確認できたときは、放送受信契約は、前項の届け出があった日に解約されたものとする。(略)

 放送受信規約第9条2項は、NHKが事実確認できたときに解約するので、これを根拠に住居への立ち入り調査(家宅捜索)を要求することがあります。最近は、家宅捜索なしの解約は少なくなっているそうです。特に単身の女性の方などは、この規約に同意しない方がよいと思います。知らない人に家に踏み込まれるのは嫌ですからね。

 なお、この規約に同意しないと、インターネットでの手続きはできませんが、仕方ありません。それでも、NHKと受信契約を締結したい場合には、(憲法違反のプライバシー侵害する条項を定めた)NHK放送受信規約を認可した総務大臣やNHKを相手に受信規約の改定を求め、応じない場合には訴訟を起こして、受信規約の改定をさせましょう。
 対面で受信契約を拒否する場合でも、憲法違反の受信規約第9条2項を理由に契約しないということもできるかな(受信規約のプライバシー侵害を争点とした違憲裁判であれば勝訴できるような気がする。実際、家宅捜索するし)。4.3.3に想定問答を掲載しました。

4.4.2 魔法の呪文「お帰りください」

 4.4.1でも取り上げていますが、気の弱い方は、次の呪文がよいと思います。

  • 「お帰りください」「お帰りください」「お帰りください」…

 以前の記事でも紹介しましたが、単純なようでいて、法律をよく知っている人がする対応ということです。

 この呪文の解説は、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏のビデオをご覧ください。

4.4.3 魔法の沈黙

 これは、私の実体験ですが、沈黙です。NHK訪問員らしき人とのやりとり。

  • NHK:「NHKです」
  • 私:「えぬ・えち・けいぃ~?」(物凄く嫌そうな感じで)
  • NHK:「受信料のことでお伺いしました…」
     説明の間、常に沈黙。質問にも、ため息ぐらいでひたすら沈黙(その間、たぶん嫌そうな顔でジロジロ見ていた)
  • NHK:(集金人が諦め、自ら撤退のきっかけを作る)「ご契約いただけますか?」
  • 私:「契約しません」
  • NHK:「はい、わかりました。また、お伺いします」

 あまりしつこそうな人ではありませんでしたけど、再訪はありませんでした。そのときは、疲れていたので、まともに対応したくなかったのですよね(喋るのも面倒だった)。

 その後、ごく稀に何回かNHK集金人らしき人が来たのですが、基本的に明るく挨拶することもないので、怪しい人扱い。沈黙の対応ですぐに帰っていきました。空き巣の下見かもしれませんし、変質者かもしれないので、できるだけ関わらない方がよいです。

4.5 張り紙を張る

4.5.1 NHK撃退シールを張る

 NHK撃退シールは、NHKから国民を守る党公式サイトから入手できます。

 私は張ったことはないですが、たぶん、絶大な効果があるのではないかと思います。気が弱い人は、これが一番いいのではないでしょうか?

 1000万世帯も張るようになったら、ダイヤルQ2みたいなサービスがあれば、事業になりそうです。サラ金の取立て屋とかオレオレ詐欺集団をヘッドハンティングして、専用コールセンター開設でしょうか。毒をもって毒を制す(笑)。集金人の携帯電話で掛ければ、視聴者の負担はありません。

4.5.2 セールスお断りの張り紙をする

1. セールス・勧誘は使用料1回1000円(ドアノックも)
2. NHK関係者は使用料1回100万円(ドアノックやポストへの投函も)
3. NHK関係者が会話や接触を求める場合は最初に当方の契約書に署名捺印することに同意したものとみなす
出典:NHK集金人の受信契約訪問の画期的な断り方、撃退ついでに強制的にお金儲けもできる拒否方法 - はぴらき合理化幻想
『警告』
「当家では防犯上、事前許可無き訪問者は録画録音しており、また当家の判断でネットに公開する規則になって居ます。」当家へ訪問または、インターホーンや玄関を叩く・住人に接触した時点で、下記の事項に同意した事『意思表示』になりますので、ご注意をお願いします」
● 警察へ刑法第130条の不退去罪で刑事告訴
● 録画録音及び日本の法律が及ばない海外の動画サイトへモザイク無しで顔や名前を公開する事
警察へ刑法第130条の不退去罪で刑事告訴したうえ録画撮影して日本の法律が及ばない海外の動画サイトへモザイク無しで顔や名前を公開し、立花孝志氏へ画像データと著作権を提供いたします」
出典:NHK受信料契約の訪問員さんのお伺いします。戸別訪問禁止の張り紙の... - Yahoo!知恵袋

 調べると、いろいろとユニークな訪問お断りの張り紙がありますので、面白いステッカーやシールを作ると、売れるかもしれませんね。

NHK訪問禁止の張り紙 (Google画像検索)

 また、市販のステッカーを使ってもよいでしょう。

市販のセールスお断りステッカー (Amazon)

 市販品であれば、それほど恥ずかしくありません。NHKが入っていませんが、手書きで追加すれば十分でしょう(「NHKから国民を守る党の立花孝志さんを応援しています」と追記すれば、NHK撃退シールと同様な効果が得られるかも)。

4.5.3 魔法の言葉「お帰りください」との併用

 NHK撃退シールも派手な張り紙も、ちょっと躊躇しますが、「お帰りください」(退去要求)と同様に不法侵入・不退去罪の根拠になりますので、「お帰りください」と併用すると効果的ではないかと思います。

 張り紙に「NHK訪問禁止」等が含まれている場合の想定問答です。

  • NHK:NHKです。受信料の件で伺いました。
  • 視聴者:張り紙が張ってあるのが分からないの?お帰りください(退去要求)
    (相手の話は一切聞かない・返事しない。一方的に帰れと言うこと。以下、同じ)
  • 視聴者:日本語分からないの?ここ読んで下さい。来るなと書いてあるでしょ…(再度の退去要求)
  • 視聴者:来るなと言っているのに来て、帰れと言っても帰らないのか?(不退去の確認)
  • それでも帰らないなら、
    • 「では、立花さんに連絡します」
    • 「では、1万円頂きます。払ってください」
    • 「では、不退去罪で警察に通報します」など

 テレビの有無、NHK受信料などの話になるとしつこいので、門前払いが吉でしょう。

4.6 その他

4.6.1 録画・録音をする

  • 「録画をします」と告げて、スマホで撮影開始する。
     これは、勇気がいりますが、集金人に、立花関係者と思われるので、恐れをなして帰る可能性が大きいです(笑)。YouTubeにたくさん映像があります。

  • こっそり録音する。
     こっそり録音だけでも、証拠が残るので安心できるのではないかと思います。

 相手が引き下がらない場合には仕方がないので、「お帰りください」(退去要求)を続けて、「これ録音してあるんですけど、…」とカミングアウトするのがよいかな?それでも帰らなければ「不退去罪で訴えますよ」と続くのでしょうか。

4.6.2 会社で契約しています

 会社の携帯電話やモバイルPCなら、法人契約しているでしょうから(笑)、

  • 視聴者:会社の電話です。法人契約していると思いますので、会社に問合せて下さい。

と答えればよいでしょう。法人契約は、集金人の仕事ではなく、NHK正職員の業務ですので、どうするでしょうね。

 ワンセグ携帯はさいたま地裁の判決で契約不要とされていますので、そもそも契約は不必要ですが、あえて、会社携帯ということで、対応してもよいかもしれません。さすがに、二重に受信料を支払えと迫ってくることはないでしょう。

4.6.3 話の争点を、集金人側にフォーカスする

 たとえ話になってしまったとしても、話の争点を集金人が来ることの是非に絞るのがよいでしょう。攻める言葉としては、以下のものがあるでしょうか。

  • 立ち入り禁止 + 「帰ってください」
    • 「うちのマンションは訪問販売禁止です」
    • 「立ち入り禁止の立て看板が見えませんでしたか」
  • 法令違反 + 「帰ってください」
    • 「住居不法侵入です」(張り紙等を無視して、敷地に侵入した場合)(刑法130条)
    • 「不退去罪です」(なかなか帰らない場合)(刑法130条)
    • 「迷惑行為防止条例違反です」(神奈川県迷惑行為防止条例)
      • 待ち伏せしていた(第11条)
      • 深夜に人声を異常に大きく発する (第12条)
      • 申込みを断わられたにもかかわらず、速やかにその場から立ち去らない (第5条)
         NHKは、そもそも「(3) 依頼又は承諾がないのに役務の提供を行つて、その対価をしつように要求すること。」(条例5条)を違反していますね?NHKは、(スクランブルをかける、訪問集金を止めるなど)法令違反とならないようにできるので、故意に神奈川県の迷惑行為防止条例に違反していると言ってよいのかな?NHKは特定商取引法では規制対象外ですが、条例だと規制できそうです。
  • 視聴者側の事情・心情 +「帰ってください」
    • 「迷惑です」「家事が忙しい」+ 「帰ってください」
    • 「飯食う」「風呂入る」「寝る」+ 「帰ってください」
    • 「ゲームする」「ビデオ見る」+ 「帰ってください」
    • 「疲れている」「風邪ひいている」+ 「帰ってください」
    • 「うざい」+「帰れ」

5. 再訪問させない

 一回なんとか断れたとしても、またやってくると面倒なので、先にNHKに苦情を入れておくとよいでしょう。コールセンターの方は普通の人なので、真摯に対応して頂けます。

 以下は、私の体験です。

5.1 担当地区の営業センターに電話する

 私の場合、担当地域の営業センターに電話して、来ないように連絡しました。担当の営業所が分からない場合には、NHKのコールセンターで教えてもらえます。

5.2 苦情をいう

 以前の記事でも書きましたが、以下の点について、苦情を言いました。

  • マンションの管理組合の許可を受けずに、マンションの敷地内に立ち入らないこと。
  • 身分証を提示すること。名刺を渡すこと。
  • 事前に必要資料・契約書を提出すること。
  • 事前に訪問日の予定を示すこと。

 たぶん、20~30分ぐらいは話していたのではないかと思います。

5.3 再訪しないようにお願いした

 以前の記事ではあまり書きませんでしたが、営業センターの方に特に強調したことは、

  • 集金人が変な人で怖かったこと

 近所では空き巣や変質者が多く、不審者には来てもらいたくありません。マンション入り口の立て看板もそのためのもの。勝手に入ることは禁止です。今回、来た人は特に変な人で、怖かったのです。来ないようにしてもらえないかと何度も訴えました。これに対して、住所を教えてくださいということでした。当初はマンションの住所だけを伝えたのですが、やはり部屋番号も必要とのこと。

 「以前、電話勧誘を断ったらその後嫌がらせにあったこと」「また、逆切れされて、嫌がらせをされるようなことがあったら、嫌なこと」を伝え、何度も何度も、大丈夫ですか、と念押しした上で、住所を伝えました。

 「テレビ・ワンセグ携帯・チューナー付きパソコンなどありませんか?」と聞かれるかもしれませんが、正直に「(NHKを受信できる設備は)ありません」と答えればよいでしょう。

 今思うと、「今度、集金人が来たら、すぐに警察を呼ぶということでいいですよね?」と最後に念押ししておけば良かったかな?

 変な人で恐怖を感じるので来るなと言っているのだし、さらに、マンション敷地内への立ち入りは禁止されていることもNHKに通告しているので、それでも集金人が来たら、明らかに不法侵入。もしかしたら、逆恨みして仕返しに来たのかもしれない。例え、本当のNHK集金人であったとしても、不審者・危険人物なので、即、110番で問題ないかな。

 予め110番通報まで想定するならば、警察への説明用に、集金人の録画とともに、コールセンターとの通話も録音しておくのが良さそうです。通話の録音の仕方は、以下に紹介されています。筆者は、評価の高かった通話レコーダー(Call Recorder)をAndroid端末にインストールしました。デフォールトで全通話録音します。Googleドライブ、Dropboxなどのクラウド保存もできます。他のアプリの比較していませんが、個人的にはこれで十分だと思っています。

5.4 集金人は二度と来ることはありませんでした

 「この家は再訪問するな」というように登録されたのでしょうか、「また来ますよ」と捨てゼリフを残して去っていった集金人は二度と訪れることはありませんでした。

6. 最後に

 今回の記事ではNHK訪問の断り方についてまとめましたが、NHK集金人は皆が迷惑していること。そろそろ、集金方法を変更してもらえないかと思います。

 NHKが公共放送としての役目を果たすのであれば、NHK視聴の有無に関わらず、料金徴収しても構わないと個人的には思います(但し、娯楽やスポーツ番組などを除いた最小限の公共放送のみで月々300円程度、娯楽番組やBS放送はオプション契約)。

 以前の記事でB-CASカードを使って、受信料の徴収をする方法を説明しましたが、このような方法に変更すれば、集金人はそもそも不要でしょう。

 NHK側の集金コストで約700億円、視聴者側で忙殺される時間も合わせれば年1000億円単位の非効率性があるのです。10年で1兆円の損失です。国会議員の誰もが認識している社会問題であるにも関わらず、NHKの集金方法の構造改革さえできないようであれば、成長戦略も空しく響きます。

(2016/11/11)

関連記事

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参考資料

A.1 ブログなど

A.1.1 本多勝一「NHK受信料拒否の論理」

 朝日新聞記者だった本多勝一氏の著作。NHK受信料拒否関連の書籍としては、古典的かつバイブル的な本です。1973年版が初めてNHK集金人訪問を受けた頃に読んだ本、2007年版は積読しています(笑)。1973年版で指摘されている問題点はほとんど改善されていないのではないかと思います。変わったのは、ワンセグ・地デジ・BS放送などの技術の進歩と裁判を行うようになったことでしょうか。BS放送・ワンセグ携帯などの受動受信でも料金徴収を行うようになったという意味では、状況は悪化しているのかもしれません。

A.1.2 NHKの虎 | 「NHKの受信料契約は、法律で決まっているんですよ。だから契約お願いします。」を一網打尽。

 NHKの受信契約についての総合解説ブログです。

 NHK集金人の断り方についても解説されています。

A.1.3 NHK受信料-HACK ! ~賢い断り方と解約方法 教えます

 いろいろ書いてあって充実しています。ただ、ちょっと冗長で、読むのが大変です。  「ガン無視」と「管轄の営業所にクレームをつける」は私もやりました。

A.1.4 私はこの方法でNHK受信料を断ることができました!

 一通りスタンダードな方法がコンパクトに紹介されています。

A.1.5 NHK受信料は払う必要なし!大学生の一人暮らしでも簡単に断る方法 | 一人暮らし初心者おすすめナビ【ヒトグラ】

 大学生一人暮らしでも簡単に断る方法としていますが、一般的に使えるスタンダードな方法を紹介しています。

A.1.6 元NHK職員の立花孝志さんが、NHK受信契約(受信料)でお困りの方、相談無料で行っています。 - Yahoo!知恵袋

 立花孝志氏流のNHK受信料の拒否の方法・実践例がYouTubeリンクとともにまとめられています。

A.1.7 YouTube

 面白かったです。全部書き下すとアレなので、残りは、YouTubeをご覧ください。

  • (1) 佐川急便の後ろにいたので、佐川が帰った途端
    • NHK「NHKですがー。今TV受信されていますよね?」
    • 俺「TVないでー」
    • NHK「TVの音聞こえてますが?」
    • 俺「パソコンやでー」
    • NHK「見せてください」→ 勝手に上がる
    • NHK「ワンセグで見てるでしょ!」
    • 俺「iPhoneやから見れへんでー」
    • NHK「パソコンで見てるでしょ!間違いない!」
    • 俺「大家に言ってTV線つなげてないでー。その前に不法侵入ちゃう?警察呼ぶから待機で」
    • 警察呼んで連れてかれたww
  • (2) 最強の繰り返し対応
    • NHK「あのNHKですが」
    • 俺「今行く」
    • ~10分後~ ピンポーン
    • NHK「あの~」
    • 俺「待たせたな今行く」
    • ~10分後~ ピンポーン
    • NHK「あ、あの…。」
    • 俺「今行く」
    • これの繰り返しで帰っていったww
  • (3) ビビりな俺
  • (4) ん?ピザ屋かな?
  • (5) インターホン改造

A.2 立花孝志氏の「NHK不払い完全解説」

「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏(元NHK職員、元船橋市議、元東京都知事候補)による番組です。法律講座としても勉強になりますので、見ておくことをお勧めします。

 未契約、契約、解約、不払い、裁判などの各ステータスがあります。番組では内容が混在している場合が多いので、公開順に並べています。かなり重複しているので、例えば、2016年3月28日公開の番組を見れば、おおよそ網羅されているのではないかと思います。また、2015年1月4日公開の番組はNHKの不祥事の数々を述べ、契約すべきではない理由を説明していますので、参考になると思います。撃退については、基本的に撃退シールがお勧めということです。その他の対応方法については、「視聴者からの相談など」の節にまとめました。

(現在も更新中。参照先が多く未整理な状態なので、後日、再編集する予定です)

解説番組

魔法の言葉

  • 2016/11/12公開 (魔法の言葉「裁判してください」)
    • NHKを追い返す魔法の言葉 裁判してください2-1 - YouTube
    • NHKを追い返す魔法の言葉 裁判してください2-2 - YouTube
      • 契約は視聴者の義務。設置日が不明のときにはどうすればよいか、内容証明郵便でNHKに問合せても、問い合わせに対する回答がない。このため、設置日が不明のため、契約を締結できない状態となる。受信規約に瑕疵があるので、NHKは受信規約を改正する必要あり。それまでは、契約締結を保留せざるを得ない。
      • テレビを持っていることを言っても、NHKを見るのでなければ、NHKを見る目的で設置していないので、放送法64条但し書きに基づき契約の義務はない。これについては判例がないので、NHKも視聴者も分からないので裁判で明確化する必要がある。集金人が契約を迫ったら、裁判をしてくださいと逆に迫れば、集金人は逃げていく。「裁判してください」は魔法の言葉。

視聴者からの相談など

  • 2014/5/9公開 (ワンセグ携帯で契約させられた)
    • NHK解約(未払い者)の場合 - YouTube
       ワンセグで契約させられたので、機種変更して、解約をしようと思っている。未払いを清算しないと、解約させてくれないようだが、どうすればよいか?
  • 2014/6/9公開 (NHK撃退シールの勧め)

NHK内部資料

解約届の書き方

【NHK】イラネッチケー受信料裁判

 前回の記事でイラネッチケーの合法性について説明しましたが、今回の記事では、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が行っているイラネッチケー裁判について説明します。前回記事の検討は、本稿のイラネッチケー裁判の裁判0の設置条件に当たります。

【追記】
 東京地裁でイラネッチケーをテレビに固定して外れないようにした場合(裁判2)、受信料支払は不要と判決されました(NHK敗訴)。判決解説はこちら(2017/1/20)。

目次はこちら

1. 概要

1.1 イラネッチケー裁判

 通称、イラネッチケーとは、筑波大学の掛谷英紀准教授が開発したNHKの電波信号を減衰させるカットフィルタで、iranehkという製品名で販売されています*2。地上波用途、BS放送用があり、Amazonから購入できます。


 立花氏がNHKを相手に提訴するイラネッチケー裁判は、このイラネッチケーを接続して設置したテレビに受信契約義務があるかをNHKに確認する一連の訴訟です。基本的に、立花氏が原告となって、受信料支払という債務がないことを確認するという形式で提訴しています。

 イラネッチケーの設置条件を変更しながら、いくつもの裁判を行い、勝訴する条件を探す予定でいます。

1.2 NHKの見解

 イラネッチケーを接続したテレビについては、以下のNHK見解があります。

 NHKの放送が映らないように改造等したテレビについては、放送法を所管する官庁(総務省)が、過去(旧郵政省当時)に「復元可能な程度にNHKの放送を受信できないよう改造された受信機については、受信契約の対象とする」との考え方を示しています。アンテナが外される等により一時的にNHKの放送が映らない受信機についても、アンテナを接続すれば視聴可能になることから、受信契約が必要です。
 
 したがって、NHKとしては、「NHKの電波だけカットするフィルター」を取り付けた受信機についても、受信契約が必要になると考えています。受信料の公平負担に、ぜひ、ご理解をお願いします。
出典:J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.

 これは、あくまでNHKの見解に過ぎません。NHKが敗訴したワンセグ裁判レオパレス裁判と同様に不当な主張である可能性があります。

1.3 NHKコールセンターで確認する

 立花氏からNHKコールセンターにイラネッチケーで契約が必要か確認したところ、受信契約は必要ありとの回答です。

2. 裁判内容

 表1に示すイラネッチケーの設置条件で裁判中・裁判予定です。

表1. イラネッチケー裁判のまとめ。
一審 二審 備考
裁判0 → 裁判1 - 簡単に外れる状態で設置。
裁判1 敗訴(東京地裁)
(2016/7/20)
裁判中(東京高裁)占有権がある場所に専門家が設置
裁判2 勝訴(東京地裁)
(2017/1/19)
(未定) テレビに完全に固定。受信契約済で支払不要の確認。
裁判2.1公判中(東京地裁) - テレビに完全に固定。受信契約不要の確認。
裁判3 ? 占有権がない場所に設置。
裁判4 ? ホテル屋上のアンテナに完全固定。
裁判5 ? 衛星契約を地上契約に変更する。

裁判0

  • 事件概要
    • 最も簡単・単純な接続方法
       イラネッチケーは、部屋の内壁のアンテナ端子とテレビの間に取り付ける。イラネッチケーを簡単に取り外すことができる。
  • 裁判方針の変更
    • この状態で受信契約が必要か当初NHKに問うつもりでいたが、NHKは総務省見解(旧郵政省見解)を持ち出し、受信契約が必要と主張してきたので、裁判の維持が難しいという判断で、争点を変更(裁判1)。
    • 裁判0としているが、裁判としては裁判1に含まれる。

裁判1

裁判2

裁判2.1

  • 放送受信契約締結義務不存在確認請求という形で、裁判2のイラネッチケー固定で、受信契約が必要ないことを確認する裁判

 裁判2は一旦受信契約してから、イラネッチケーを取り付け、受信料支払の債務存在を確認する訴訟であるが、裁判2.1は、受信契約なしの状態でイラネッチケーを取り付けたテレビを設置し、受信契約が必要であるかを争点とする。

  • 東京地方裁判所
    • 2016/11/25公開 (裁判2の11/24公判の説明と新しい訴訟)
      • 合法・安全にNHK受信料の不払いが出来る、魔法の筒【イラネッチケー】について - YouTube (21:57)
        • イラネッチケーを固定したテレビの説明。
        • NHKの答弁書。受信料債務がないことを自ら認める。
        • 裁判長は和解を勧めるが、NHKは拒否。
        • イラネッチケーでの契約の要否が、この裁判では分かりにくい。
        • 新たな訴状を作成。
          • 放送受信契約締結義務不存在確認請求事件。
          • NHK契約が要否を、直接、地裁で確認する。
            • 原告は「NHKから国民を守る党」に変更。ワンセグ裁判で「男性」「朝霞市議」としか報道されなかったため。
    • 2017/01/23公開(口頭弁論)

裁判3

裁判4

裁判5

3. その他の解説

3.1 NHKだけ映らないテレビ(イラネッチケー不要)

3.2 NHKによる受信契約が必要な条件

3.3 NHKだけが映らないテレビが発売されない理由

  • NHKだけ映らないテレビが発売されない理由 - YouTube (2016/10/31公開)
    • NHKによってテレビの知財権が確保されており、このため、NHKが映らないテレビが販売できない。
    • NHKがすべて研究開発し、メーカは開発しない
       (筆者注:そんなことはありません。NHKが大きな貢献をしていることは確かですが、メーカーも多額の開発投資をしています)
    • 以前にある国内メーカーが持ち込んだNHKが映らないテレビも発売されない。

4. 判決の予想

 個人的な予想としては、裁判2~4は勝訴と思います。

 裁判1は5分5分。裁判1で勝訴するためには、

  • 立花氏本人がイラネッチケーを取り外せないこと。
  • 「立花氏の依頼によって、イラネッチケー設置者(開発者)が取り外さないこと」や「立花氏が取り外したことを発見した場合にNHKに報告すること」との設置者の誓約書に信憑性があること。

の二つの条件が満たされることが必要と思います。

 山口ケーブルテレビの場合には、カットフィルターの設置が(NHKによって公式に)認められているので、設置者の信憑性が鍵となるのではないかと思います。

 この裁判の場合、イラネッチケー設置者が裁判所に誓約書を提出しているので、これにより設置者が言うことは信用できると判断することもできます。このため、逆転勝訴の可能性も十分にあるのではないかと思います。

 イラネッチケーを外す工事をするよりも、室内アンテナ*1を新規購入した方が、遥かに簡単に「テレビを視聴できる状態にすることが可能」ですけどね。「テレビを視聴できる状態にすることが可能」というNHKの論理が通るとすれば、以下の場合でもNHKとの契約義務が発生することになってしまいます。

  • テレビだけでも受信契約が必要:室内アンテナの設置で容易に視聴可能となりますから(1580円から)
  • パソコンだけでも受信契約が必要:USBチューナーを接続すれば容易に視聴可能となりますから(750円から)
  • 何もなくても受信契約が必要:Amazonでクリックすればすぐに購入できますから(4800円から)

 今後の裁判の行方が楽しみです。

(2016/11/9:初稿)
(2017/1/20:最終更新日)

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関連動画

目次

付録A. 和歌山のホテルの契約現場

ホテル名:Sweetable Hotel TO

*1:例えば、1byone室内アンテナは、1580円から。1990円のアンテナを購入しましたが、テレビとの相性がありました。もう少しランクが上の別メーカーのアンテナの方が安定して受信できるかも。

【NHK】イラネッチケーを使って合法的に受信契約しない方法

 「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が、NHKに対して、債務不存在確認を求めたイラネッチケー裁判の判決が今年7月20日に下りました*1。立花氏は敗訴しましたが、今回は、このイラネッチケーを用いて合法的にNHKと契約しない方法について説明したいと思います。但し、合法的ではありますが、NHKと訴訟を行った場合には敗訴する可能性がありますので、ご注意ください。

【追記:2017/1/20】 イラネッチケーをテレビに固定して外れないようにした場合、受信料支払は不要との判決が2017年1月19日に出ました(イラネッチケー受信料裁判)。

1. イラネッチケーとは

 通称、イラネッチケーとは、筑波大学の掛谷英紀准教授が開発したNHKの電波信号を減衰させるカットフィルタで、iranehkという製品名で販売されています*2。地上波用途、BS放送用があり、Amazonから購入できます。

 このイラネッチケーを接続したテレビについては、以下のNHK見解があります。

 NHKの放送が映らないように改造等したテレビについては、放送法を所管する官庁(総務省)が、過去(旧郵政省当時)に「復元可能な程度にNHKの放送を受信できないよう改造された受信機については、受信契約の対象とする」との考え方を示しています。アンテナが外される等により一時的にNHKの放送が映らない受信機についても、アンテナを接続すれば視聴可能になることから、受信契約が必要です。
 
 したがって、NHKとしては、「NHKの電波だけカットするフィルター」を取り付けた受信機についても、受信契約が必要になると考えています。受信料の公平負担に、ぜひ、ご理解をお願いします。
出典:J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.
 NHKは「フィルターを取り外せばNHKが見られるので、受信契約の対象だ」とする。
出典:産経ニュース, 「「公共性欠如のNHKはいらない」 民放だけが映る“アンテナ”が人気」, 2015/8/15.

 これは、あくまでNHKの見解に過ぎません。NHKが敗訴したワンセグ裁判レオパレス裁判と同様に不当な主張である可能性があります。

2. 放送法64条とNHK放送受信規約

2.1 受信設備の設置とは?

 一般に、テレビを設置した場合、NHKと受信契約を結んで、受信料を支払わなければならないとされるのは、放送法64条とNHK放送受信規約にその根拠があります。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)を設置した者については、この限りでない。
出典:放送法
(放送受信契約の種別)
2 受信機((略)NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備(略))のうち、地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置使用できる状態におくこと(略))した者は地上契約(略)を締結しなければならない。
出典:日本放送協会放送受信規約

 NHKを受信できるテレビを設置した場合、NHKとNHK放送受信規約に基づく受信契約を行わなければなりません。ここで、設置とは、「使用できる状態におくこと」です。

2.2 使用できる状態とは?

 テレビの設置とは、「使用できる状態におくこと」ですので、以下の状態は、設置に当たりません。

  • アンテナを設置しているだけでは、設置にはなりません(テレビはありませんから)
  • テレビを購入しただけでは、設置にはなりません(アンテナはありませんから)
  • アンテナとテレビを購入しただけでは、設置にはなりません(配線していませんから)
  • アンテナとテレビを購入し、配線しても、設置にはなりません(B-CASカードを挿入していませんから)

 アンテナ・テレビ・配線に加えて、B-CAS社との使用許諾契約を締結し*3、B-CASカードを挿入することで、初めて「使用できる状態」となります。

 B-CAS社との契約締結は、放送法及びNHK放送受信規約で義務付けられていません。従って、外形的にテレビが設置していると認められる場合であっても、B-CAS社と契約しない(B-CASカードのパッケージを開封しない)のであれば、テレビを使用できる状態におくことはできません。この状態は、放送法及び受信規約における設置には該当しませんので、NHKと受信契約しなくても、放送法に抵触しません。この場合、当然のことならが、テレビ視聴はできませんので、ゲームやビデオ鑑賞などテレビ放送の視聴以外の目的で使用することになります。
 
 レオパレスのようなテレビ付き賃貸マンションの場合、オーナーが、ゲーム・ビデオ・パソコンモニタ用としてB-CASカードなしのテレビを置き、利用者(入居者)に提供しているのであれば、NHKと受信契約する義務はありません(証拠としてB-CASカードは未開封のままにしておくとよいでしょう)。また、利用者も、B-CASカードが挿入されていない放送を受信できないテレビなので、NHKと受信契約する義務はありません(レオパレス裁判の確定を待たずとも、明らか)。
 
 また、利用者が自ら持ち込んだテレビを設置するための便宜として、オーナーがアンテナ線を屋内に配線することは、なんら問題ありません。利用者が自ら用意したテレビを設置した場合、利用者はNHKと受信契約を締結する必要があることは言うまでもありません。
 
 なお、利用者は、自らが所有するB-CASカードをオーナーが設置したテレビに挿入し、放送を受信することは、B-CAS社との契約に違反するため、してはいけません。

2.3 イラネッチケーは合法

 アンテナ・テレビ・B-CASカード・イラネッチケーを用いて配線した放送受信システム(以下、イラネッチケー放送受信システムという)では、NHK放送の受信はできませんので、放送法64条の「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当しません。このため、この受信システムを設置しても、NHKとの放送受信契約の義務は発生しません。従って、未契約でも放送法に抵触せず、合法であることは自明です。

3. イラネッチケーで勝訴できるか?

 合法であると言っても、合法であることと裁判で勝訴することとは、別の次元の話です。

 裁判では、双方の言い分が異なっていた場合、どちらの言い分が事実であるか裁判所は判断する必要があります。裁判所の判断の拠り所は、どちらの主張が尤もらしいかということです。尤もらしい主張を事実として認定し、判決を下します。

 イラネッチケー放送受信システムで未契約が合法であるとしても、再設置して容易にNHK放送を見られる状態にできるのであれば、視聴者はNHK放送を見ているに違いないという「推認」*4によって、視聴者は敗訴する可能性があります。つまり、合法であっても、裁判には負ける場合があるということです(イラネッチケー裁判を参照)。

 以下では、イラネッチケー放送受信システムを提訴した場合の裁判について検討します。

3.1 NHKは訴えることができる

 イラネッチケー放送受信システムを設置した設置者(視聴者)に対して、NHKは「NHKの放送を受信できるようにテレビを設置しているにも関わらず、受信契約せずに、不当に受信料を支払っていない」と民事裁判を提訴することが可能です。

 実際には、現在のところ、NHKの提訴は、BSテロップ解除やスカパーなどの情報から、確実に視聴者がNHK放送を視聴していると確認した場合に限られるようです。

3.2 普通は、敗訴する

 イラネッチケー放送受信システムの場合、イラネッチケーを取り外し、容易にNHK放送を受信できるように再設置することができるのだから、視聴者はNHKの放送を受信できるように再設置するとNHKは訴えます。このとき、裁判官は、NHKの主張を事実と推認すると思われます*5。これに対して、視聴者側はNHKの放送を受信できるように設置していないことを証拠を示して証明できないため、視聴者側は敗訴します。

3.3 証拠があれば、勝訴する

 逆に言えば、「NHKの放送を受信できるように設置していないこと」が証明できれば、裁判には勝訴します。放送法では「設置した(過去の出来事)」場合に受信契約をする必要があるので、過去に設置したことがないことを証明すれば十分でしょう。

 例えば、テレビ等の入手からイラネッチケー放送受信システムの設置、及び、その後のテレビの使用状況を常に録画しておけば、NHKの放送を受信できるように設置していないことの証拠となるでしょう。

 実際に録画するかは別として、低画質・タイムラプス録画であれば、1TBのディスク容量で10年間程度の録画は可能と思います。

 ここで、重要なのは、確たる証拠があれば、NHKが敗訴し、視聴者が勝訴するということです。つまり、イラネッチケー放送受信システムを設置し、NHKと未契約で民放を視聴すること自体には、違法性はなく、合法であるということです。

4. イラネッチケーの設置で、受信契約を解約できるか?

4.1 イラネッチケーの接続では、解約できない

 結論から言うと、イラネッチケーを簡単に取り外せる状態では、受信契約の解約はできません(解約を提訴しても勝つ見込みはありません)。

 現時点でNHK放送が受信できない状態であっても、容易にNHK放送が受信できるように再設置できる場合には、NHK放送が受信できる状態が継続していると考えることが可能です(一時的に電源コンセントを抜いた場合と同じ)。

 このため、解約の場合には、将来的にもNHK放送が受信できるように設置しない(あるいは設置できない)という事実についても証明する必要がありますが、この証拠を提出することはできません。従って、イラネッチケーを接続しても、「NHK放送が受信できるように再設置する」と推認できるので、裁判をすれば敗訴となります。

 さらに、NHK放送受信規約によれば、解約は以下のように規定されています。

(放送受信契約の解約)
第9条 放送受信契約者が受信機を廃止すること等により、放送受信契約を要しないこととなったときは、直ちに、次の事項を放送局に届け出なければならない。
(略)
2 NHKにおいて前項各号に掲げる事項に該当する事実を確認できたときは、放送受信契約は、前項の届け出があった日に解約されたものとする。(略)
出典:日本放送協会放送受信規約

 解約においては、「放送受信契約を要しないこととなったとき」(受信設備を設置していない状態になったとき)、且つ、この状態を「NHKにおいて(略)事実を確認できたとき」と二つの条件を満たす必要があり、ハードルが高くなっています。NHKの事実確認が事実に反すると、提訴することは可能ですが、「将来についての証拠」がないので、やはり勝ち目はないでしょう。

4.2 正式解約後のイラネッチケーの再設置で契約義務なし

 イラネッチケー放送受信システムを設置して、受信契約を行わないようにするためには、一旦、正規の手続きで受信契約を解除することが必要です。この契約解除後に、イラネッチケー放送受信システムを新規に設置すれば、前述したように契約義務はありません。

 つまり、受信契約の解約をして、その後、イラネッチケー放送受信システムを設置すれば、合法的に契約義務をなくすことができます。

 但し、提訴された場合、「NHK放送を受信できるように設置していない」という証拠を準備できなければ、敗訴します。

5. イラネッチケーって、イラナクネー?

5.1 正々堂々と断ることができる

 イラネッチケー受信システムを設置したとしても、実際には証拠を用意できず、裁判で敗訴するのであれば、イラネッチケーってイラクナクネーと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

  • イラネッチケー放送受信システムは、NHK放送を受信できる受信設備ではないので、受信契約は必要ありません(合法です)。
  • イラネッチケー放送受信システムでは、実際に、NHKを見ることはできません。

 まず、NHKに受信料を支払う必要がなく、実際にNHKを見ることができないので、後ろめたい気持ちを持つことがなくなります。これが最大の効果と言ってよいでしょう。

 また、NHK集金人が来た時にも、心の余裕ができるのです。

 イラネッチケーを接続すれば、合法的に受信契約の必要がなく、実際にNHKを見ることもできないので、NHK集金人が来た時に、後ろめたい想いをすることなく、正々堂々と断ることができます。

 昨年、当時住んでいたマンションにNHK集金人が現れて嫌な思いをしましたが(関連記事)、NHK集金人の再訪問に備えて、テレビの修理と同時にイラネッチケーの設置を行いました。結局、NHKへの苦情が功を奏したのか、二度と集金人は来ることはなく、戦うことはできませんでした。来てくれれば、かなり強気で相手を論破したのではないかと思います(戦って遊んでいる暇があればね)。

 結局、そのマンションから引っ越すまで、イラネッチケーを設置したままでしたが、特に困ることはありませんでした。

5.2 魔法の呪文

 イラネッチケーを使ったとしても、NHK集金人と戦えない人、戦って遊んでいる暇のない人は、次の魔法の呪文を唱えましょう。

  • 「お帰りください」「お帰りください」「お帰りください」….

 この呪文で、NHK集金人は、撃退できるそうです。この呪文は最近知ったのですが、今度は、若かりし頃のように戦いに挑むのではなく、この呪文を唱えようと思います。

 この魔法の呪文は、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏のビデオで知りました。

 単純なようでいて、法律をよく知っている人がする対応ということです。

6. 最後に

 イラネッチケーを使って合法的に受信契約をしない方法と題しましたが、実は、そもそも放送法に抵触せず、合法です。但し、裁判に勝つか否かは、別のことなので、NHKと契約する・しないは、自己責任でお願いします。

 イラネッチケー裁判については、次回の記事でまとめました。

(2016/11/7) 最終更新日:2017/1/20

関連記事

*1:
佐賀新聞, 「NHK遮断は無効 受信料支払い命令」, 2016/7/21.
産経ニュース, 「NHKだけ映らない機器設置の男性に受信料1310円支払い命令 東京地裁「機器取り外せる」 男性が反論「今度は溶接して司法判断仰ぐ」」, 2016/7/20.

*2:
J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.
ITmediaニュース, 「「NHKだけ映らないアンテナ」で受信料支払い不要に? 「公正で有益なNHKのあり方を議論するきっかけに」」, 2015/4/27.
産経ニュース, 「「公共性欠如のNHKはいらない」 民放だけが映る“アンテナ”が人気」, 2015/8/15.
産経ニュース, 「開発秘話「NHKだけ映らないアンテナ」はこうして生まれた! 掛谷英紀(筑波大学准教授)」, 2015/11/22.
掛谷英紀, 「開発秘話「NHKだけ映らないアンテナ」はこうして生まれた!」, iRONNA.

*3:B-CAS社, 「B-CASカード使用許諾契約約款」.

*4:「これまでにわかっている事柄などから推し量って、事実はこうであろうと認めること」(デジタル大辞泉)

*5:立花孝志, 「NHK受信料を支払わない方法 最新版2015年3月27日」(5~10分), YouTube.
受信契約を既に交わした人がNHKを視聴していないと主張した場合の最高裁判決について「裁判所はNHK視聴していると推認したこと」を解説。「受信契約を結んでいない視聴者については、判例はない」という説明もしている。

【NHK】最高裁、受信契約の憲法判断へ

 受信契約に関する最高裁裁判で、放送法64条について初の憲法判断を示す見込みとなりました *1

 この裁判は、テレビを設置・視聴していたにも関わらず、受信契約を行わない視聴者に対してNHKが訴えた裁判の上告審で、最高裁の小法廷(大谷剛彦裁判長)から大法廷(寺田逸郎裁判長)に回して判断を行うということです。大法廷への回付は、憲法判断や重要な法的問題についての判断を示す場合に行われることから、放送法64条についての初の憲法判断を示す見通しです。

 今回の記事では、この裁判の概要について調べましたので、まとめたいと思います。

1. テレビ設置者の受信契約の義務

 放送法64条1項では、テレビを設置した場合、NHKと受信契約を行うことを義務付けています。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)を設置した者については、この限りでない。
出典:放送法

 従って、通常、テレビを設置した場合、NHKと契約する必要があります。

 しかし、テレビを設置しても、NHKと受信契約をしていない世帯は、約1000万世帯にものぼるため、受信契約を締結させるため、NHKは最近では裁判を行うことにしました。但し、裁判を行うといっても、極わずかの視聴者を対象とした裁判です。

2. これまでの裁判

2.1 提訴されている視聴者

 NHKは、基本的に、以下の次の二つのケースに提訴を行っているようです。

  • 契約しているにも関わらず、受信料を支払わない視聴者
  • テレビを設置・視聴しているとNHKが把握している未契約の視聴者

 未契約の視聴者でも、NHKがテレビの設置を把握できていなければ提訴されません(テレビ設置が確認できていないので、当たり前と言えば、当たり前ですが)。

 神奈川県相模原市在住の男性の場合、視聴者自らBS放送の視聴を連絡(テロップ解除の申請)をNHKにしています。このためNHKは、視聴者がBS放送を視聴していることが分かっています。

 原告は,被告からのテレビジョン受信機の設置の連絡を受けて,平成21年1月13日に当該連絡に対応する登録処理を行った。なお,被告が原告に対して設置を連絡したテレビジョン受信機は,衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受信機である。
出典:裁判所判例,「 受信料等請求事件」, 平成25(ワ)82, 横浜地方裁判所相模原支部, 2013/6/27.

 その他にも、NHKが弁護士法に基づいて、スカパーに個人情報を照会した場合にも提訴されているようです。

 NHK裁判については、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏の解説が非常に分かりやすいので、ご参考にしてください。

2.2 未契約の視聴者に対する裁判

 報道されている主な裁判としては、以下の裁判があります。

2.2.1 神奈川県相模原市在住の男性視聴者の場合

  • 事件の概要*2
    • 2009年1月13日 BS視聴をNHKに連絡する。
    • 2012年11月22日 特別対策センター」に窓口を切り替える。
    • 2013年1月24日 このままでは提訴せざるを得ない旨、予告通知発送(内容証明郵便にて契約締結を申し入れる)。
    • 2013年2月21日 民事訴訟を提起(横浜地方裁判所相模原支部)。
    • NHKは、契約締結申し入れから2週間経過すれば契約が成立すると主張。
  • 1審:横浜地方裁判所相模原支部(2013年6月27日判決, 小池喜彦裁判官)*3
    • 判決要旨
      • 契約締結申し入れから2週間の経過で契約が成立するとのNHKの主張は退ける。
      • 契約成立には、裁判でNHK側の勝訴判決が確定することが必要。
      • 2009年2月~2013年1月分の受信料(約10万9000円)の支払を命じる。
    • NHKは、裁判を経なければ契約が確定しないことを不服として控訴。
  • 2審:東京高等裁判所(2013年10月30日判決, 難波孝一裁判長)*4
    • 判決要旨
      • NHK側が契約締結を申し入れて2週間経てば契約が成立する。
      • 被告は、受信料約10万9000円の支払いを命じる。
  • 3審:上告せず

2.2.2 大阪在住の視聴者の場合

  • 事件の概要*5
    • 2005年6月 NHKがテレビの設置を確認(BS放送の視聴申請をしたと思われる)。
    • 2005年6月から2015年3月までの受信料約27万円の支払いを求めて提訴。
  • 1審:堺簡易裁判所(2015年6月26日判決)
    • 判決要旨
      • NHKが契約締結を求めて2週間経てば契約が成立する。
      • 2005年6月から2015年3月までの受信料約27万円の支払いを命じる。

2.2.3 東京都渋谷区在住の男性視聴者の場合 

  • 事件の概要 *6
    • 2006年3月、テレビを設置、「放送内容が偏っていて容認できない」と契約拒否。
    • 2011年9月、NHKは男性宅に受信契約申込書を送付したが、応じず。
    • 契約の申し立てを行った時点で契約は成立すると、NHKは主張。
  • 1審:東京地方裁判所判決(2013年7月判決)
    • 判決要旨
      • 受信者に契約の承諾と受信料24万8640円の支払いを命じる。
      • 判決の確定時に契約が成立する。
  • 2審:東京高等裁判所 (2013年12月18判決, 下田裁判長) *7
    • 判決要旨
      • NHKからの契約申し込みと、受信者による承諾という双方の意思表示がなければ受信契約は成立しない。
      • 放送法には『申し込みと承諾が一致する以外の方法でも契約が成立する』とうかがわせるような規定はない。
      • 契約は受信者に契約の承諾を命じる判決が確定した段階で成立する。
      • 契約の申し立てを行った時点で契約が成立するというNHKの主張を退ける。
      • 受信者に契約締結の受諾を命じる。
      • 受信料24万8640円と1万800円(受信料改定に伴う増額)の支払いを命じる。
    • NHKは、裁判を経なければ契約が確定しないことを不服として上告。
  • 3審:今回の最高裁裁判

2.2.4 その他の裁判

  NHKのホームページによれば、上記以外にも以下の未契約者に対する裁判の判決がでています。

いずれの場合も、裁判所判決をもって受信契約が成立するという内容の判決です。

2.3 これまでの未契約者に対する判決のまとめ

 これまでの判決をまとめると、以下の通りです。

  • いずれの場合も、テレビ設置が確認された日からの受信料支払が命じられている。
  • 受信契約の締結時期は、次の二つに判断が分かれる。
    • 裁判の判決により、受信契約が締結される。
      • 横浜地方裁判所相模原支部(2013/6/27判決)、東京地方裁判所(2013/7月判決)、東京高等裁判所(2013/12/18判決)、東京地方裁判所(2014/10/9判決)、札幌簡易裁判所(2015/6/16判決)
    • NHKによる契約締結の申し入れから、一定期間経過後に、受信契約は締結される(裁判は不要)。
      • 東京高等裁判所(2013/10/30判決)、堺簡易裁判所(2015/6/26判決)

 今回の最高裁の裁判では、「裁判の判決により、受信契約が締結される」という東京高等裁判所(2013/12/18判決)を不服とし、NHKは上告しています(被告も上告)。

 NHKにとっては、裁判所判決が必要となると、受信料徴収の手間がかかるため、別の東京高裁判決(2013/10/30判決)のように申し立てを行えば、自動的に受信契約が締結されることを望んているのです。

3. 最高裁の裁判

3.1 大法廷の裁判

 今回、最高裁の大法廷に回付された裁判は、東京地方高等裁判所(2013/12/18判決)を不服とした上級審です。大法廷では、憲法判断や重要な法的問題についての判断を示す場合に行われることから、以下の点について判決が下されると思われます。

  • 放送法64条1項の合憲性
  • 契約拒否者との契約はどの場合に成立するのか?
  • 受信料は、いつまで遡るのか?

3.2 裁判の争点

  • 被告の視聴者の主張
    • 放送法は訓示規定なので違反しても支払い義務はない。
    • 義務だとしたら憲法が保障する契約の自由(憲法13条(個人の尊厳), 憲法29条(財産権)などを侵害しており違憲。
  • NHKの主張
    • 受信機を設置した人は契約締結義務があり、NHKが契約締結申込書を送った時点で契約が成立する
    • (テレビを破棄する等により)自由に受信契約は解約できることから「放送法は合憲」

 合憲に関する地裁、高裁の判断では、「 契約の自由は制約するが、公共の福祉に適合している」などとして、合憲とする判決が相次いでいる。

3.3 個人的な判決の予想

 以下は、最高裁判決についての個人的な考えと予想です。素人の判断なので、あまり信用しないでください。

3.3.1 争点1:放送法64条の合憲性

 まあ、合憲でしょうね。

 契約の自由を争点とした場合、まず、民法91条がその根拠となります。

第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
出典:民法

 放送法は特別法で、一般法である民法よりも優先されます。このため、民法91条に基づいて、契約の自由を主張をすることは困難です。従って、憲法に基づく契約の自由を主張する必要があります。

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
出典:日本国憲法

 憲法13条で保証するのは、「公共の福祉に反しない限り」と限定された自由です。

 従って、法律に合理性があれば、個人の自由(契約の自由を含む)を制限することは可能です。

 逆に、その法律に合理性がなければ、個人の自由は制限されるべきではありません。例えば、暴力団にみかじめ料を支払う契約を義務づける法律があるとすれば、この法律は憲法違反と言えるでしょう。

 NHK問題についても、同様に思考実験すると、違憲となる条件が導けるのではないかと思います。

 仮に、NHKが、サラ金なみの違法な受信料徴収をし、職員は年間1800万円もの人件費で私腹を肥やし、さらに幹部職員は多額の金を着服し、放送法1条に違反した偏向報道を行う、公共の福祉に資することのない組織であるとすれば、NHKとの受信契約を義務とすることに合理性はありません。従って、放送法64条に基づき受信契約をさせることは、違憲と言えるでしょう。

 しかし、裁判所がそのような判断を下すことは、まず考えられません。

3.3.2 争点2:契約はいつ成立するのか?

 BS視聴の申込(テロップ解除申請)をしているのであれば、被告に視聴の意思があることは明らかなので、放送法64条1項の但し書きについての判断をするまでもなく、契約の義務が発生します。

  放送法64条1項の但し書き:「ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)を設置した者については、この限りでない」

 このため、被告はNHKと契約しなければならないことは明らかです。被告が契約を拒否しているために、裁判所の判決をもって「承諾」の意思に代えることができる(民法414条2項但し書き)ということを根拠に、下級審では、被告に受信契約を承諾する命令を下しています *8

第四百十四条 2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
出典:民法

 「視聴者に承諾する裁判所命令が出た時点で契約が成立する」という考えが主流ということなので、今回もこれが踏襲されることになるでしょう*9

3.3.3 争点3:受信料はいつまで遡るか?

 NHK放送受信規約第5条では、受信機の設置の月から受信料を支払う義務があります。

(放送受信料支払いの義務)
第5条 放送受信契約者は、受信機の設置の月から(中略)放送受信料を支払わなければならない。
出典:日本放送協会放送受信規約

 これまでの裁判所命令は、「受信契約を承諾せよ」ということなので、被告は、NHK放送受信規約を承諾し、NHKと契約することとなります。

 NHK放送受信規約第4条では、「受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする」ということです。

(放送受信契約の成立)
第4条 放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする。
出典:日本放送協会放送受信規約

 従って、裁判の判決を受けて、設置日に遡って契約が成立し、被告には設置日に遡って受信料支払の債務が発生し、NHKは同じく設置日に遡って被告に対する債権が発生します。

 ここで、遡れるのはいつまでなのか?という疑問が生じます。

 これまでの判例では、設置日(実際には、テレビの設置をNHKが確認した日)に遡及し、この段階からの受信料を支払うように命じています。

 しかしながら、例えば、50年間受信契約を行わなかった場合、たとえ、50年前にテレビを設置したという確たる証拠があったとしても、支払の遡及には何らかの制約があってしかるべきです。例えば、裁判所が、被告に対して「NHKの受信規約に従って、50年前からの受信料を支払うことを承諾せよ」というのは、いかにも理不尽です。

 時効の起点になりそうなタイミングには、設置日、NHKが受信者に申し立てした日、提訴日、裁判所判決により承諾が命じられた日があります。

  • 設置日:2006年3月
  • 契約締結の申し立て日:2011年
  • 提訴日:不明(2011年11月16日~2013年7月までの間の日)*10
  • 1審判決:2013年7月(24万8640円の支払命令)
  • 2審判決:2013年12月 (24万8640円と料金改定に伴う1万800円の支払命令)
  • 3審判決:2017年頃

 民法では、時効が規定されていますが、どの条文が今回の例に適用できるのか良く分かりませんが、5年、10年、20年のいずれかでしょうか。NHKの受信料債権は、通常、5年で時効となります*11

 今度の裁判の判決では、従来判例通り、民法414条2但し書きに基づき、契約を承諾することが命じられると思われます。提訴日は不明ですが、判決が命じる受信契約の承諾は、提訴日になるのではないかと思います。過去の判例では、設置日から提訴の月までの受信料支払が命じられており、今回も同様の判決となると思います。提訴日に契約を承諾することになるので、この時点で時効は消滅し、設置日が提訴日よりも5年以上前であったとしても、時効は成立しないと思われます(今回の事件では、設置日から提訴日までは5年以上経過している)。

 但し、設置日が50年も前に遡ってしまうような場合に設置日以降の受信料の支払を求めることは、普通に考えれば不条理です。このため、具体的な法的根拠は分かりませんが、受信料支払には何らかの制約があるのではないかと思います。

 例えば、受信契約の成立日を設置日にバックデイトするNHK放送受信規約4条が不適当である(バックデイトには限界がある)といったことが挙げられます。今回の裁判で、バックデイトが争点となっているか不明ですが、たとえ争点となっていたとしても、5年程度の遡及なので違法とまでは言えないのではないかと思います。

4. 最後に

 最高裁で大法廷に移されましたが、放送法の合憲性、受信料遡及も従来判例通りの原告敗訴の判決になると予想されます。

 これまで、判断が分かれていた受信締結のタイミング、「受信契約は裁判判決により成立する」か「受信契約の締結申込によって自動的に成立する」の判断は、今回の裁判で統一されます。恐らく、「受信契約は裁判判決により成立する」という判決となります。

 自動的に受信契約が締結できないと「支払督促」が利用できません。このため、裁判所の命令を得る必要があり、訴訟費用と時間が掛かります。最高裁判決は、NHKの上告理由を認めず、実質敗訴となるでしょう。

(2016/11/5)

(2016/12/15) 立花氏のYouTubeのリンクを最新版(2016/12/14)に更新。

(2017/12/7) 最高裁判決がありました(最高裁の判決文)*12。NHKと視聴者側の両者の上告が棄却されているので、両方とも敗訴です。判決結果は、概ね予想通りのものでした。但し、時効については、東京高裁判決を踏襲し、「時効は裁判確定後から進行する」ということなので、私の東京高裁判決の理解不足で誤りがありました。

関連記事

*1:
朝日新聞DIGITAL, 「NHK受信料制度は合憲か? 最高裁が初判断へ」, 2016/11/2.
日本経済新聞電子版, 「NHK受信料訴訟、大法廷が判断へ 最高裁 」, 2016/11/2.
産経ニュース, 「NHKの受信契約義務、最高裁大法廷が初判断へ テレビがあるのに契約せず…受信料は徴収できるのか」, 2016/11/2.
時事通信, 「NHK契約義務、憲法判断へ=受信料未払いめぐり-大法廷に回付・最高裁」, 2016/11/2

*2:NHK, 「放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟 初の高裁判決」, 2013/10/30.

*3:
NHK, 「放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟 初の司法判断」, 2013/6/27
森越壮史郎, 「NHK未契約世帯でも受信料、支払い命じる判決」, 2013/7/2.
裁判所判例, 「 受信料等請求事件」, 平成25(ワ)82, 横浜地方裁判所相模原支部, 2013/6/27.

*4:
・事件番号「東京高等裁判所 平成25年(ネ)第4466号)」.
森越壮史郎, 「NHK受信料、応諾なくても2週間で契約成立 東京高裁」, 2013/11/5.
日経新聞電子版, 「NHK受信料、応諾なくても2週間で契約成立 東京高裁 」, 2013/10/30.
立花孝志, 「NHK受信契約「通知後2週間で成立」判決確定の解説」, YouTube, 2013/11/19.

*5:
NHK, 「大阪府内における受信料の公平負担への取り組みと 未契約世帯に対する民事訴訟の大阪府内初の司法判断について」, 2015/6/26.
J-CASTニュース, 「拒否しても2週間で契約成立 NHK受信料めぐる判決に「納得できない」と反発の声」, 2015/6/29.
和はいい和@どうみん, 「堺簡易裁判所「受信契約に応じなくてもNHKが契約締結を求め2週間たてば契約成立」として支払いを命じる判決」, 2016/6/29.
はぴらき合理化幻想, 「NHK集金人の受信契約訪問の画期的な断り方、撃退ついでに強制的にお金儲けもできる拒否方法」

*6: 読売新聞, 「NHK契約初の憲法判断へ」, 2016/11/3朝刊.

*7:
・事件番号「東京高等裁判所 平成25年(ネ)第4864号」.
森越壮史郎, 「受信料契約:「承諾必要」…東京高裁、NHKの主張退ける」, 2013/12/20.
日本経済新聞電子版, 「NHK受信契約「相手の承諾必要」 高裁判決分かれる 」, 2013/12/18.
J-CASTニュース, 「NHK受信契約には視聴者の承諾必要 東京高裁で異なる2つの判断、どうなる?」, 2013/12/25.

*8:山下江法律事務所, 「弁護士コラムvol.61 「NHK受信料と契約自由の原則」 松浦亮介」, 2013/10/25.

*9:
弁護士ドットコム, 「「NHK受信契約」はいつ成立するのか? 矛盾する2つの「高裁判決」をどう見るべき」, 2013/12/30.
山下江法律事務所, 「弁護士コラムvol.61続編 「続・NHK受信料と契約自由の原則」 松浦亮介」, 2013/11/8.

*10:NHK, 「放送受信契約の未契約世帯に対する民事訴訟 初の提起について 」, 2011/11/16.

*11:お支払いに関するQ&A(受信料に時効はあるのか)

*12:朝日新聞デジタル, 「NHK受信料、ネット時代の徴収は 最高裁「合憲」判断」, 2017/12/7.
読売オンライン, 「NHKの受信料制度「合憲」…最高裁が初判断」, 2017/12/6.
毎日新聞, 「NHK受信料 制度は「合憲」 最高裁が初判断」, 2017/12/6.
弁護士ドットコム, 「NHK受信料「時効」も最高裁判決の論点、原審支持なら「50年分一括請求も可能」」, 2017/12/6.
弁護士ドットコム, 「「NHK受信料制度は合憲」 最高裁が判決、支払強制「立法裁量として許容される」」, 2017/12/6.
弁護士ドットコム, 「NHK受信料合憲、男性側「大山鳴動して鼠一匹」「ネット同時配信で制度見直しを」, 2017/12/6.
弁護士ドットコム, 「NHK受信料判決、弁護士出身の裁判官1人が反対意見」, 2017/12/6.

【NHK】サラ金からの卒業(2):BCASカードの有料レンタル化

 ここのところ、NHKの集金人トラブルに関する記事を書いています。NHKトラブルの原因は、集金人を用いて時代遅れの集金方法を続けていることに原因があります。また、NHKをサラ金と過去の記事で呼んでいるのは、NHKが合法的にサラ金のような厳しい取立て(受信料徴収)を行っているからです。

 「【NHK】サラ金からの卒業(1):税務署が受信料徴収? - 時事随想」では、受信料徴収を税務署に委託するという受信料徴収モデルを説明しました。今回は、より実現性が高い、B-CASカードを有料レンタルとする受信料徴収モデルについて、説明します。

1. B-CASカード

 B-CASカードはデジタル化された放送の暗号を解除するために用いられるICカードで、テレビを購入すると、通常同梱されています。このB-CASカードをテレビに挿入しないと、テレビは受信できません。このB-CASカードはテレビを購入しても、その所有権はB-CAS社(ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ)に帰属しており、所有者はB-CAS社です。つまり、テレビの使用者は、B-CASカードを無償レンタルしているという形になっています。

 実は、全てのデジタル放送は、既に暗号化(スクランブル化)されていて、B-CASカードによってスクランブルを解除しているのです。

2. B-CASカードを有償レンタルとした受信料徴収モデル

 集金人を用いない受信料徴収モデルとして考えられる方法は、B-CASカードを有償レンタルとし、レンタル料の中にNHKの受信料を含めるという方法です。例えば、視聴者は次のような手続きでテレビを視聴できるようにします。

  • 受信料は、世帯単位の課金ではなく、B-CASカード単位(テレビ単位)の課金とする。
  • テレビの販売と、B-CASカードのレンタルを分離する(現在は同梱されている)。
  • 視聴者は、B-CAS社とB-CASカードの有償レンタル契約を行う。
    • 有償レンタル契約がなされた段階で、B-CAS社はNHK及び民放のスクランブル解除を行う。
    • 契約は、提携店舗(家電量販店やNHK窓口など)、インタネット経由で行う。
    • BS放送は、別途、NHKとBS契約しない限りスクランブル解除しない(BS契約自体は、B-CASカードのレンタル契約と同時に手続きしても構わない)。
  • 免除世帯は、NHK経由でB-CAS社との無償レンタル契約を締結する。
  • NHKのみならず、民放もB-CASカードのレンタル契約をしないと、視聴をすることができません。
  • B-CAS社は、NHK受信料相当の料金をNHKに支払う。

有償レンタル契約時の契約者は、B-CAS社とするのか、NHKとするのか、両社とするのかなど検討する必要はありますが、NHKの放送受信規約の変更(及び、必要であれば放送法64条の変更)で対応できる可能性が高いです。至ってシンプルです。

 レオパレスのような場合には、テレビ備え付けのマンションの場合にはB-CASカードは挿入せず、個人持ちのB-CASカードで視聴するという形態で利用すれば構いません。ホテルも同様です。B-CASカードを持っていないお客様には、ホテル側から貸し出す(その分、利用料金が割高となる)ということでよいでしょう。

 ワンセグ携帯などは、nanoSIMカードなどのような小さなB-CASカードを作って、それを挿入することで視聴可能となるようにすれば、同様に対応できます。

 現状の状態から、新しい受信料徴収モデルへの移行が面倒ですが、移行期間を設けて、B-CAS社と有償レンタル契約に変更し、当面は無課金で、移行期間終了後に課金を開始するということで、スムーズに移行することができるのではないかと思います。

 また、B-CASカード単位の課金となるので、新しい料金体系となりますが、1世帯あたり2台程度テレビを保有しているので*1、現状の半額程度の料金となります。また、受信料の支払率は向上するので、それを考慮すれば、半額以下となります(B-CASカード一枚あたり月300円から400円程度でしょうか)。テレビを多数保有している世帯では現状よりも高くなりますが、そうでない場合には、安くなります。

3. 問題点

 B-CAS社の有料レンタル条件にNHKとの受信契約を含めれば、放送受信規約の変更のみで、受信料義務化は不要で放送法の変更も必要なさそうです(ワンセグに課金する場合は、放送法の変更が必要)。

 また、安定収入によって、NHKの経営や放送内容がさらに劣化する危惧はあるので、これに対する対策(NHK会長・経営委員の信任投票など)を設ける必要はあると思います(前回記事参照)。

 B-CASカードで民放も人質にとった料金徴収方法ですが、集金人を使う従来の徴収方法よりは、はるかにまともな徴収方法でしょう。

(2016/11/3)

関連記事

【NHK】サラ金からの卒業(1):税務署が受信料徴収?

 前回は、「【NHK】受信料義務化で国内最大のサラ金へ?」という記事を書きましたが、今回は、その逆。NHKのサラ金からの卒業です。受信料義務化と税務署への受信料徴収の委託により、NHKがサラ金のような取立てを集金人に委託しなくて済む方法について説明したいと思います。

1. NHKによるサラ金なみの受信料徴収

 前回記事で、NHKがサラ金であるとしているのは、NHK集金人が、サラ金のような取立て(受信料徴収)を行うためです。NHKには貸金業法が適用されないので、貸金業法で禁止されているような取立て(受信料徴収)を行っても、合法です。このため、昔のサラ金のように厳しい取立てが行うことが可能で、実際に行っています。このため、多くの視聴者がNHK集金人への恐怖から、受信契約を行うことになっています。

 昔の集金人は悪質な人は少なかったそうですが、1年ほど前に、私が出会ったNHK集金人も、確かに恐怖を感じるような集金人でした。

 基本的には、このような集金人を使わずに済む方法で受信料を徴収すればよいのですが、普通に考えれば、単純にNHKの放送にスクランブル化すればよいだけで、法改正は不要です(NHKの受信契約規約の変更もたぶん不要)。しかし、何故か、NHKはスクランブル化に及び腰。NHKは良質な番組を作っているので、スクランブル化によって増収も期待できるはずなのですが、不思議です。視聴者の満足が得られない悪い番組を作っていると、NHK自ら思っているのであれば、スクランブル化を嫌がることは理解できます。

2. 1950年と現在のテレビ普及率

 放送法が制定された1950年は、NHKがテレビ放送を開始した年であり、民放はその3年後の1953年にテレビ放送を開始します。テレビ放送が始まった当初のテレビ普及率は非常に低く、高度経済成長期に急速に普及し、1980年にはほとんどの世帯にテレビがあるという状態になりました*1。現在では、単身世帯で92%、そうでない場合で98%の普及率となっています*2

 テレビ放送が始まった当初、どのように受信料を徴収していたのかは知りませんが、少なくとも、テレビが普及していく段階でテレビがある家庭とテレビがない家庭が混在することになります。昔はスクランブル技術はありませんでしたから、各家庭を訪問して、テレビの有無を確認することが必要で、集金人による受信料徴収モデルが出来上がったのではないかと思います。

 ほとんどの家庭でテレビが普及し、スクランブル技術が開発されている現在では、このような受信料徴収モデルは時代遅れで非効率な方法となっています。また、トラブルが多発する原因でもあります。

3. 受信料徴収の税務署への委託

 さて、集金人を使わない方法としては、スクランブル化する方法が受益者負担の観点からも最も適切な受信料徴収モデルですが、なぜか、適用しないので、別の受信料徴収モデルを考えます。

 ここでは、ほとんどの世帯にテレビがあると仮定して、全ての世帯からまず受信料を徴収し、テレビがない世帯に返金するという受信料徴収モデルで徴収していくことを考えます。

 まず、受信料徴収業務は税務署に委託し、強制的に税務署により受信料を徴収します(年金受給者は、年金から天引き)。税務署に徴収業務を委託するといっても、税務署に家庭訪問をさせるわけにはいかないので、従来の受信契約というステップをなくし、受信料徴収の条件を以下のように変更します。

  • テレビ設置に無関係に世帯毎に徴収(全ての世帯でまずは一律に徴収)
    • 課税対象者が受信料を支払う。
    • 世帯に課税対象者が複数いる場合、支払義務者を決める。
    • 支払義務者は、課税対象者の中から選ばれるので、学生の単身世帯などは自動的に支払免除。
  • 義務契約は地上波の公共放送番組のみ
    • 義務契約は、地上波の公共放送番組のみ(強制徴収される受信料はここ)。
    • 公共放送として必要性がない娯楽番組・スポーツ番組等は任意契約(有料放送)。
    • BS契約は任意契約(有料放送)。
    • 有料放送に関しては、NHKに申請して別途契約。
  • テレビがない世帯、現行の受信料免除世帯、非課税世帯等は、受信料を免除する。
    • 税務署の課税情報をNHKが使うことができるのであれば、非課税世帯などは自動的に免除判定することが可能。また、累進性がある受信料体系も可能。
  • NHKの放送はスクランブル化する。
    • 視聴を希望する視聴者は、スクランブル解除をNHKに申請する。
    • NHKは受信料支払を確認し、申請されたテレビのスクランブルを解除。
       税務署による受信料徴収の確認には、マイナンバーを用いる?
  • 免除対象となる世帯は、NHKへ免除申請する。
    • NHKが免除の適否を確認する。
    • 確認がとれれば、徴収した受信料を返還する。
       免除でも、一旦徴収されたものを返還する形となる。
  • 法人契約は従来通りの方法で徴収する。

 但し、上記であげた方法では、テレビがないと虚偽申請し、受信料を返還してもらうことで、NHK受信料支払わないで済む民放だけを見られるテレビを作ることができます。虚偽申請による不正返還に罰則を設ければ、不正返還はほとんどなくなるのではないかと思います(特段の罰則を設けなくても、虚偽申請は詐欺罪となるので、刑事罰を科すことは可能です)。

 この抜け道を罰則ではなく、技術的に防ぐのであれば、民放もスクランブル化し、NHKの視聴の可否と民放の視聴の可否を連動させる必要があります。この場合、市販のテレビは、購入段階では、NHK・民放のすべてがスクランブル化された状態となります。NHKへのテレビ登録により、スクランブルが解除されて、初めてテレビの視聴が可能となります。この方法は、NHKという特殊な法人のために、民放の営業が阻害されてしまうので、適切な方法とは言えないかもしれません。

 この受信料徴収モデルでは、NHKが視聴者宅に訪問することは基本的になく、スクランブル解除や免除申請をする視聴者側がNHKに赴くというように、人の流れは逆方向になり、トラブルの原因である集金人を使う必要はありません。サラ金から卒業です。

4. 受信料の引き下げ

 システム変更に伴う初期投資が100億円単位で発生しますが、その後の徴収コストは、現状の700億円の10分の1以下になるのではないかと思います。また、徴収率が100%近い値になることを考慮すると、現行よりも20%から30%程度値下げができるのではないかと思います。

 但し、この方法でも、NHKを見ていない人にとっては、やはり受益者負担の原則から外れ、不満が残る結果となりますが、強制徴収される公共放送番組部分の料金設定を低く抑えれば、多少は不満感を軽減することができるのではないかと思います。

5. その他の影響

 徴収した受信料がNHK特別会計のような取り扱いになると、実質的にNHK税になります。NHKに受信料の徴収能力がなくなるので、国への依存が強まり国営放送的な色合いが、現状よりもさらに濃くなる可能性があります。

 また、現在は、受信料不払いにより、NHKに対し異議あることを意思表明することができます。しかし、ここで説明した受信料徴収モデルでは、NHKに安定収入を与えることになります。このため、NHKは、これまで以上に、視聴者を無視し、好き勝手な放漫経営や政府寄りの公平性に欠ける報道を行う可能性があります。

 視聴者が、NHKを監視し、異議申し立てを行うことができる強力なメカニズムを設けることが必要です。

 最低限でも、NHK会長や経営委員の信任投票の制度はあるべきです(データ放送のボタンをポッチとすれば、簡単に投票できます。現在でも導入すべきですね)。

 まずは、受信料義務化の前に、視聴者による監視メカニズムを設けるように法改正を行い、次の段階で、受信料の義務化という順番でしょうね。

(2016/11/1)

関連記事

【NHK】受信料義務化で国内最大のサラ金へ?

 NHKの受信料の義務化が、しばしば話題になります。最近でもワンセグ裁判で契約が義務ないとの判決がでており、関連して「支払義務化」についての記事も見かけるようになりました。本記事では、NHKの受信料義務化に伴う影響について、未払い受信料が債権であるという観点から考えたいと思います。

受信料の義務化とは

 NHKの義務化については、特に去年の自民党「放送法の改正に関する小委員会」が昨年9月に「受信料の支払義務化」の提言をまとめたことから、ニュースや新聞でいろいろと取り上げられました*1。ワンセグ裁判や同時配信などの報道でも、受信料の義務化が話題になっています*2

 NHKの受信料義務化について簡単に説明します。NHKの受信料の支払は、(1)NHKとの受信契約を行った後に、(2)受信契約に基づきNHKへの支払いを行うという流れになります。現在、法律(放送法64条1項)で、視聴者に義務付けられているのは、(1)のNHKとの受信契約です。受信料支払については義務付けられていません。しかし、(2)のNHK受信規約に基づきNHKと受信契約を結ぶと、受信料の支払義務が発生します。

 受信料の支払義務化とは、法律を変更して、(1)の放送法の段階で受信料の支払を義務化するというものです。

受信契約をしていない人はどうなるか?

 受信料を義務化すると、現在、受信契約をしていない人でも、NHKへの受信料支払義務が発生します。そのままの状態を継続すれば、NHKへ支払うべき受信料債務が発生します。一方、NHK側から見れば、NHKが回収すべき債権が発生します。

 つまり、受信料未払いの視聴者は、債務者となり、NHKは債権者となります。

 現在、受信契約をしている世帯が全体の80%程度です*3。具体的には、2015年度末で、対象世帯数4652万世帯のうち、契約世帯数は3671万件で79%、世帯支払い数は3564万件で77%となっています。

 義務化をすれば、受信料を支払わない視聴者は、いきなり債務者になります。受信契約率が同じであれば、未払い世帯数は、現在の107万世帯から1088万世帯となり、一挙に10倍の世帯が債務者となります。

 現状でも、未契約者は契約した時点で過去に遡った受信料債務を抱えることになります。つまり、表面に現れないだけで、NHKは多額の隠れ債権を持っています。未契約世帯の大部分がテレビ設置から10年を超えると考えられるので、現在、NHKは数兆円規模の隠れ債権を持っていると容易に推測することができます。

NHKは国内最大の消費者債権を保有

 NHKの支払をしなかった場合の債務は、NHK放送受信規約第12条の2(支払いの延滞)によれば1期(2カ月)毎に、2.0%の延滞遅延金が発生します。これが単利なのか複利なのか良く分かりませんでしたが、単利計算であれば、年率12%の延滞利息、複利計算であれば、1年で1.026=1.1262なので年率12.62%の利息となります。消費者金融並みの利息です。

 仮に地上契約(月額1310円)で5年以上不払いを続けると、次の債務額となります。

  • 支払うべき受信料(元本相当):1,310円×12カ月×5年=78,600円
  • 延滞遅延金を含む債務(単利計算):101,394円
  • 延滞遅延金を含む債務(複利計算):106,288円

 5年以上の不払いでも5年で計算しているのは、受信料債務の時効が5年であるため*4

 仮に2015年度末の未払い世帯数と同じ1088万世帯が5年分の未払い債務を抱えるとすると、以下の債権をNHKが持つことになります。

  • 106,288円×1088万件=1.15兆円(複利計算)

 つまり、NHKは、消費者金融最大手のプロミスの貸付金残高1.02兆円を超える債権を持つことになります*5

 1088万世帯がそれぞれ13年間滞納すれば、NHKは1088万件×482,881円=5.3兆円(複利計算)の債権を持つことになります(時効は裁判を経ないと適用できない)。年利12.62%なので、年間約6600億円の債権が増加します。延滞遅延金を取り立てるだけで、現在の受信料収入と同額となりますので、NHK受信料の無料化が実現できます(笑)。

 現在でも、NHKは107万世帯の債務者(未払い世帯)の多額の債権を持っています。NHK財務諸表(2015)によれば、170億円の受信料未収金があります。実際の額面上の債権総額は良く分かりませんが、年間170億円の新規債権が発生していると仮定すると、単純に5倍すると850億円となります。このため、NHKは、現在でも、額面ベースで1000億円前後の債権を持っているのではないかと推察できます。

厳しい取立てが可能なNHK

 消費者金融は、昔はサラ金と呼ばれていました。サラ金といえば、厳しい取り立て。これが社会問題となり、現在では、貸金業法により、厳しい取立ては禁止されています。例えば、以下のような規制があります。

 貸金業法貸金業法施行規則で規制される違法な取り立ての例*6
●「午後9時~午前8時以外の時間に債務者に電話をかけたり、FAXを送ったり、自宅を訪問すること」(貸金業法第21条の1)
●「債務者から、訪問に対して退去するように意思表示されたにもかかわらず、退去しないこと」(貸金業法第21の4)

 一方、NHKは貸金業をしているわけではないので、この規制は適用されません。このため、NHK集金人は貸金業法で禁止されているような行為を日常的に行います。また、貸金業法では、上記のような取立てを行えば、業務停止命令を受けるなどの処分が下される場合がありますが、NHKの場合には、NHK集金人が貸金業法で違法となるような取立て(契約活動)を行っても、処罰を受けることはありません(NHKの場合は、合法ですから)。

NHKは国内最大のサラ金へ

 今後、受信料を義務化すれば、NHKは1兆円規模の債権を保有し、国内最大の債権者を抱える組織となります。つまり、NHKは、貸金業法で違法となるような厳しい取立てをすることができる国内最大の"サラ金"となると言えます。

 また、NHKは債権回収(契約業務)を外部委託しているので、債権回収の業者は繁盛しますが、人手不足で、今よりもさらに悪質な集金・取立が行われ、多数の視聴者がその被害を被ることになるでしょう。

まとめ

 受信料義務化に伴い、NHKは国内最大の消費者債権を持つ巨大組織となります。この消費者債権を持つNHKは、貸金業法に基づく規制が適用されず、合法的に貸金業法で禁止されるような悪質な取立てが行えます。これまでよりも、多くの視聴者が被害を受けることが予想されます。

 現状でも、多数の被害者が出ています。少なくとも、金融業法で禁止されているような行為を禁止し、違反すれば、NHKに対する業務停止を含む改善命令を下せるように法改正をすべきです。

 また、義務化をするのであれば、集金人を使うというような時代遅れでトラブルが多い方法で契約・債権回収をするのではなく、トラブルが発生しない方法をセットで考えるべきでしょう。

 スクランブル化は、視聴者間の不公平感もなく、NHK被害者が少なくなる最も良い方法ではないかと思います。また、スクランブル化によって、受信料収入の増加も期待できるので、NHKの経営によっても良い施策ではないでしょうか。NHKは良質なコンテンツを作る能力はあるのですから、減収を心配する必要など全くないでしょう。

 いずれにせよ、NHK集金人による横暴で悪質な取立ての被害者を増すことがないよう施策を講じる必要があります。

(2016/10/30)

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【NHK】テレビ付き賃貸物件、支払い義務なし

 10月27日にレオパレスのテレビ付き賃貸住宅について、居住者にNHK受信料の支払義務なしとの判決が東京地裁で下され、NHKは敗訴しました。報道を見る限りでは、NHKの敗訴は当然と言える内容でした。この判決に対して、NHKは控訴するようですが、素直に非を認めるべきではないでしょうか?

1. 裁判の概要

 いくつかのニュース記事 *1 *2 *3から、その概要をまとめると以下の通り。

  • 事件の概要
    • 原告の福岡市の男性が勤務先の指定で兵庫県内のマンスリーマンション(レオパレス21)に短期プラン(30-100日)で33日間入居した(2015年10月19日入居)。
    • 約10日後、NHK訪問員から執拗に契約を迫られ、サインの上、2カ月分の受信料(2620円)を支払った。
    • 男性は、2015年11月20日に退去。後にNHKは男性に1カ月分の受信料1310円を返還したが、残る1カ月分は返還しなかった。
    • 男性は「自分がテレビを設置したわけではないのに、不当に受信契約を結ばされ、受信料を支払わされた」として、NHKに1カ月分の受信料(1310円)の返還を求めた。
  • 争点
    • 原告の主張
      • テレビを設置したのはレオパレスである。
      • 短期間の宿泊施設として利用されるホテルでは、ホテル側が受信料を支払っている。
    • NHKの主張
      • マンションの運営業者は「受信料は入居者が負担する」と明示していた。
      • 「受益者負担」の観点から、テレビを現実に占有・管理している入居者が実質的な「受信設備を設置した者」に当たる。
  • 判決要旨
    • 受信料とはNHKの放送を視聴する対価ではなく、公共的なNHK放送を維持するために、テレビを設置した者に対して公平に負担を課すものだ。NHKが視聴の対価として受信料を理解しているとすれば間違いだ。テレビ設置者を問題にせず、テレビの使用者を問題にしている点も失当だ。
    • 男性の入居時点で既に設置されており、貸主側が設置者と推認される。
    • 「設置者」は、実際の視聴者が誰かが問題ではなく、物理的・客観的にテレビを設置して受信できる状態を作り出した者である。
    • よって、未返還の受信料全額(受信料1か月分,1310円)の返還をNHKへ命じた。
  • NHKの対応
    • 即日控訴した。

 また、背景としては、以下のことがあります。

  • レオパレスの物件では、入居者がNHKの受信料を支払うように定めており、空室では受信料が支払われていない。
  • レオパレス21によると、同社のテレビ付き賃貸物件の入居者側の支払い義務を否定した判決は初めてという。同社は50万件以上のテレビ付き賃貸物件を扱うが、従来は入居者がNHKの受信料を支払っていた。

2. 破綻しているNHKの反論

 「受益者負担の観点から、テレビを現実に占有・管理している入居者(レオパレスの利用者)が「受信設備を設置した者」に当たる」とNHKが本当に主張しているのであれば、あまりにも論理が飛躍しています。

 受益という点では、レオパレスも受益者で、テレビが予め設置されていることを売りにして賃貸サービスをしているわけで、素直に考えれば、ホテルと同様にレオパレスと受信契約を結ぶべきです。

 判決はさらに突っ込んでいて、受益は関係ない(「NHKが視聴の対価として受信料を理解しているとすれば間違いだ」)と言っています。受益は無関係というのは放送法上はそうだと思います*4。だから、NHKの視聴の有無に無関係(受益に無関係)に、NHKの受信できるテレビを設置すると受信料を払わなければならないのです。しかし、放送法は受益者負担の原則に反しているので、憲法に照らせば問題があるような気がしますが、該当する憲法の条文が分からない…。憲法13条(自由及び幸福の追求)や憲法29条(財産権の保護)に違反しているような気がするのだけど、論理の組立が難しく、ちょっと無理のような気もする。

 また、「受信料は入居者負担とする」と明示しているとのNHKの主張ですが、少なくとも「入居者がNHK受信契約を結ぶ」というレオパレスとの契約でなければ、利用者にはNHKとの受信契約義務は発生しないでしょう(それでも、利用者に契約義務があるかは疑わしいです)。

 但し、利用者はレオパレスに対するNHKの受信料金分の支払義務は残ります。賃貸料金の中にNHKの受信料金が入っているのか入ないのか知りませんが、賃貸料金とは別に受信料は入居者負担ということなのでしょうかね。

 NHKは即日控訴しましたが、明らかに無理筋の裁判でしょう。これまでもレオパレスを始めとして、いろいろなところで違法な受信契約を居住者にさせているので、引くに引けないということだと思いますが、そんな理不尽なことをやっているから、アンチNHKが増えるのではないですかね?

3. NHKによる強引・脅迫的な契約の強要と取立て

 原告の方も、1310円の金の欲しさで、裁判を行っているわけではなく、NHK訪問員の執拗・強引さ、NHKの理不尽な対応に怒りを覚えて、訴訟をしているのでしょう。これは多くの体験者の共感を呼ぶところではないでしょうか?

 前日の10月26日にもNHK関連の訴訟で東京地裁の判決がありました。こちらは、原告敗訴でしたが、ビデオに撮っておけば勝訴したでしょう。

 裁判官も、NHK訪問員によるトラブルは日常茶飯事で、被害女性の恐怖を理解できないわけではないでしょうが、確たる証拠がないことには、いかんともし難いです。

 従業員に呼び鈴を10回ぐらい鳴らされ、拒否するとノックが激しくなった。払うまで帰らないと言われた。
出典:産経ニュース, 「「NHK受信料のしつこい取り立てで苦痛」認めず 東京地裁、脅迫や強要否定」, 2016/10/27.
 男性従業員が「呼び出しのチャイムを計10回鳴らし玄関ドアをどんどんと叩き」、「支払いを求めて玄関の中に足を踏み入れ」、受信料の支払いを強いた。
出典:弁護士ドットコム, 「「NHK受信料の取り立てに強い恐怖」担当業者を訴えた裁判で原告敗訴…東京地裁」, 2016/10/26.

 精神的苦痛で慰謝料を要求するのには、イマイチ弱いかも、ですが、男の私でもNHKの訪問員には恐怖を感じますから、さぞかし恐ろしかったのではないかと思います。

 さらに、15万円も滞納していたので、要するに昔のサラ金の取り立て屋みたいなの(あくまでもドラマイメージ)が来たのでしょう。現在は、消費者金融(サラ金)がNHKのような取り立てをすると、違法行為になってしまうので、少なくとも大手の消費者金融はやっていないと思います。

 貸金業法貸金業法施行規則で規制される違法な取り立ての例*5
●「午後9時~午前8時以外の時間に債務者に電話をかけたり、FAXを送ったり、自宅を訪問すること」(貸金業法第21条の1)
●「債務者から、訪問に対して退去するように意思表示されたにもかかわらず、退去しないこと」(貸金業法第21の4)

 NHK訪問員は貸金業法で禁止されているようなことは、平気でやりますので、NHKはサラ金よりも悪質な業者ということです。少なくとも、貸金業法で禁止されている行為は法律で禁止してもらいたいです。一部の悪質なNHK訪問員は、刑法犯罪(住居侵入罪や不退去罪、恐喝罪、強要罪、詐欺罪など)をしていると思いますが、それだけだと、NHKそのものを処罰することはできないですから。

4. 最後に

 なぜ、NHKは、敗訴することが分かっているような裁判に上告するのでしょうか。個人対組織の戦いなので、個人は消耗戦についていくのは大変です。原告イジメとしか思えません。

 思い出すと、腹が立つNHKの押し売り員。こんな裁判を続けているのなら、アンテナ外して、BS契約は解除しようかしらん(前々から解約しようと思っていたのだが、面倒なので放置していた)。

(2016/10/28)

付録A. NHKは、既にレオパレスに契約を断られていた(追記)

下記の記事によれば、既にNHKとレオパレスは、受信契約の協議をしていたようです。

かつて、NHKとレオパレス側は受信契約についての協議を行いました。
結果的に「入居者が居ない時期の受信料免除」がNHK側に受け入れられなかったことから受信契約を行わないこととしました。
レオパレス側は「テレビは使用目的を定めずに入居者に貸し出すためにそこに置いてあるだけ」とし、いわゆる「協会の放送を受信できる設備の設置者」ではないと主張、レオパレス規約に「NHK受信料は入居者負担とする」という一文を入れることでその後の訴訟に対応できる体制を整えました。
NHK側はレオパレスと明確に合意したわけではありませんが、事実上その主張を認めているようです。
出典: sabotennetobasさん, 「レオパレスにおけるNHK受信契約」, Yahoo!知恵袋, 2011/12/24.

 この記事が事実だとすると、NHKは入居者に受信契約義務がなく、レオパレスに受信契約義務があると認識していたと理解できます。放送法上もレオパレスと契約することが適当ですし、NHKもそれは理解しているはずです。

 要するに、NHKはレオパレスに断られたので、取れるところから取ったということですね。

 極めて悪質です。NHKの訪問員にせよ、この事例にせよ、法令順守の概念がNHKにはないのでしょうか?大手企業で、このように悪質な事例は聞いたことがありません。

付録B. レオパレス裁判判決文 (追記:2016/11/1)

 判決文がありました。

NHKとの裁判また勝ちました ワンセグに続きレオパレスも|NHKから国民を守る党 公式ブログ

 論理構成はシンプルで比較的分かりやすい判決文です。

 NHKの反論も大したことを言っているわけではありませんので、上級審で判決が逆転することはないでしょう。

 NHKは最高裁まで戦うつもりなのかもしれませんが、こんな勝ち目のない裁判を継続するなんて、NHKは視聴者のためのNHKではなく、単なる守銭奴ではないですか。

付録C. 原告へのインタビュー (追記:2016/11/6)

 原告へのインタビューがありました。

NHK相手に裁判してくれている方の紹介です レオパレスは【オーナー】か【住民】どちが支払うの?|NHKから国民を守る党 公式ブログ

 やはり、集金人の恐喝によって、契約を強要されていたようです。

 ワンセグ裁判は「NHKから国民を守る党」所属の市議会議員によるものでしたが、レオパレス裁判も、立花氏が支援した裁判だったのですね。

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テレビ放送を停波せよ!5G通信による放送の終焉

 最近、総務省がテレビ放送のネットへの同時配信を解禁するという報道がされていますが、今回の記事では、通信技術の進歩に伴う、放送と通信の役割交代について、表現の自由の観点から考えたいと思います。

1. 放送と通信によるテレビ映像の同時配信

 テレビ放送とネット通信による同時配信するサイマルキャストについて、その実現に向け総務省が検討会を設置したことから、NHKによるサイマルキャストが現実味をもってきた(解禁する)と新聞各社が報道しています*1。但し、総務省の資料を読む限りでは、NHKという個別案件には、踏み込んではいないように読み取れます*2

 個人的には、受益者負担の原則が担保されるのであれば、NHKがサイマルキャストを行うことに特に異論はありません。但し、現状のNHK放送では、NHKを見ない人にも契約を強要し、受信料を払わない人がNHKを見ることができるなど、受益者負担の原則から外れる事態となっています。アナログ放送が始まった当初であれば、仕方ない面がありました。しかし、現在は技術的に容易に解決できるにも関わらず、全く対策を取っておらず、非常に問題があると考えています。

 サイマルキャストでも、受益者負担の原則から外れて、パソコンやスマホを持っているだけで課金するというようなことは、あってはなりません。また、視聴者に費用請求する代わりに通信事業者にNHKの費用負担を要求するなどということも当然あってはなりません(通信コストは、通信網を使うコンテンツ事業者側と視聴者側で負担すべきですから、本末転倒です)。

 いずれにせよ、テレビ放送を通信を使ってブロードキャスト配信できる環境が整いつつあるということです。今回の記事では、放送における表現の自由と技術的に可能となる通信によるテレビ映像の配信について考えたいと思います。

2. 放送における表現の自由

2.1 放送における政治的公平性

 放送法では、「政治的に公平であること」(放送法第4条)を求めています。

 このように放送では、政治的公平性などが求められ、表現の自由が一部制約されるのは、電波の帯域が限られているため、誰もが自由に参入できるものではないということに起因します。これが紙媒体やインタネットであれば、公序良俗に反しない限りは、表現は自由です。不偏不党や政治的公平性は求められません。

 この政治的公平性は実際には実現不可能な理想であるため、政治的に公平でない放送が必然的に行われます。

 実際、公平というのであれば、先の東京10区の補欠選での幸福実現党の立候補者を無視すべきではないし、都知事選の候補者であるスマイル党総裁のマック赤坂も大いに取り上げるべきです。個人的にはいずれの候補者も無視してもらった方が有難いですが、それぞれの候補者を無視することが政治的に公平であるかと問われれば、公平とは言えないでしょう。選挙では、一応、政見放送という候補者が主張をできる場を提供はしていますが、あくまで公平でない放送に対する補償に過ぎません。

2.2 放送局への政治介入

 放送事業は、免許事業であるが故に、免許取消等を示唆することで、放送事業者への政治介入が行われます*3*4。脅しの効果があったのか、なかったのか、今年になって立て続けにテレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎氏、TBS「NEWS23」の岸井成格氏、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏など辛口なニュースキャスターが降板となりました*5

 個人的には、私にとっての主要3番組が見る価値がない(存在しない)ものになってしまったので、残ったのは、WBSぐらい。辛口コメントもなく、単にニュースを流しているだけなら、ネットで十分です。今では、伝統的なニュース番組よりも、寧ろ、ワイドショーの方が、深掘りや追及が激しく、余程ジャーナリズム精神に溢れているのではなかと思います(東京都のネタが尽きると、ゴシップ番組に戻る気もしますけど)。

 NHKに至っては、政治介入どころか、政権が経営陣の人事権を握っていますので*6*7*8、籾井会長曰く「政府が右と言っていることを左と言う訳にもいかない」と、公平でない放送を目指す放送局となっています。

 日本は、放送の政治介入や自主規制、政権の意を忖度した報道姿勢などが評価されてか、2016年の世界の報道自由度ランキングで、71位のタンザニアの下の72位となりました。日本以下には、レソト・アルメニア・ニカラグアが続きます*9。2010年の11位からの見事な急降下。実に不名誉なことです。

2.3 放送メディアの表現の自由の限界

 放送は、電波の帯域制限から自由な参入ができず、免許事業となります。また、自由に参入ができない免許事業であるが故に、放送には公平性が求められます。しかし、この公平性を理由に免許取消をちらつかせることで、政権に批判的な放送に政治介入をするという余地ができてしまっています。また、NHKにおいては、そもそも時の政権が経営者を選ぶので、政権の意向に沿う報道を行うことは当然と言えば当然です。

 これが、放送というメディアにおける表現の自由の現実であり、限界です。

3. 通信による放送の終焉

 さて、ここからが今回の記事の本題です。放送で表現の自由が制約され、通信では制約されないのであれば、今後10年単位のスパンで目指すべきものは、通信によって放送を終焉させることではないかと思います。過激です(笑)。

3.1 5G時代の通信速度

 現在のインタネットの通信速度は、おおよそ光ファイバー回線で1Gbps、現状のLTE通信で100Mbps。これが2020年頃に導入され始める5G通信となると現状の約100倍の10Gbpsの通信速度となります*10。通信速度が100倍になったとしても、基本的には、通信費は100倍にならず、現状と同程度、許容される通信のデータ総量も100倍程度になると思います。現状での通信量制限はほぼ撤廃され、映像を5G回線で好きなだけ自由に視聴できるようになるでしょう。

 但し、2020年の段階では、無線通信で各世帯が現状のテレビのように視聴したら通信容量オーバーとなる可能性はありますが、さらに10年も経てば、それも問題とならないでしょう。有線通信ならば、徐々に移行するのであれば、現状でも、十分、通信負荷に耐えられると思います。また、映像の配信をユニキャストではなく、マルチキャストで実現するのであれば、通信網への負荷を大幅に低減できます。

 なお、放送を通信に置き換えたとしても、テレビのユーザインタフェースは、現状のテレビと変わらないように作ることはできるので、「パソコンを使わなきゃいけないの?」と心配する必要はありません。現状でも、最近のテレビであれば、AmazonビデオやU-NEXT、Netflix、Huluなど普通に見られます(通信回線とコンテンツ事業者との契約は必要)。

3.2 放送から通信への移行

 放送では参入制限から表現の自由は制限されますが、通信では、表現の自由は担保されます(されるべきです)。今後、技術的に放送を通信に置き換えても問題にならないのであれば、表現の自由が制約される放送は廃止し、通信に移行すべきです。

 その際に、現状の放送事業者は、コンテンツを配信する土管(無線局)としての役割を通信事業者に譲り、コンテンツ制作者に特化することになります。コンテンツに魅力がなければ視聴されず、その事業者は淘汰されることになりますが、致し方ないでしょう。また、コンテンツを制作せず、放送を配信する土管事業を行っているだけの放送局は存続できません。

3.3 NHKの位置づけ

 このとき、NHKはどう扱うべきでしょうか?

 「公共放送とは何か?」というNHKの存続意義についての本質的な問いに対して、合理的で納得できる回答が得られないのであれば、NHKは民間企業として他のコンテンツ事業者と同じ土俵で競争すべきでしょう。このとき、NHKに求められていた公平性の制限は不要です。コスト回収も、自助努力によってなされるべきで、現行の受信契約制度のような特別な優遇をする必要もありません。

3.4 通信事業者の位置づけ

 また、通信事業者はどう扱うべきでしょうか?

 通信事業者は、コンテンツ事業者への公平性が求められるので、コンテンツ事業は分離する必要があるでしょう。これは、現状の放送と同じように通信事業は誰もが参入できる自由度がないためです。

 通信事業者とコンテンツ事業者は分離されるべきであるという観点からすると、AT&Tのタイム・ワーナー買収*11は許可されるべきではありません。しかし、通信とコンテンツの垂直統合という流れがあるので、買収審査はどうなるのでしょうかね。垂直統合は通信設備の費用を誰が負担すべきかという問題とも関連します。垂直統合は、コンテンツ事業者が上げた収益は通信事業者には還元されないという、昔から指摘されてきたコンテンツ事業者の通信網のタダ乗り問題に対する対抗手段となり、コンテンツ事業の収益を通信設備の投資に充てる余地ができます。しかし、これは他のコンテンツ事業者の排除にも繋がります。

4. まとめ

 いずれにせよ、将来的には、放送を通信に置き換え、表現の自由が制限される放送はその歴史的役割を終え、終焉を迎えるべきです。

(2016/10/28)

*1:例えば、
朝日新聞DIGITAL, 「NHKは悲願、地方民放は試練 ネット同時配信解禁へ」, 2016/10/19.
読売新聞, 社説「ネット同時配信 公共放送の役割を吟味したい」, 2016/10/26.

*2:総務省が10月19日開催の情報通信審議会で同時配信を実現するための「「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」を設置しました。この中で、サイマルキャストについても議論されます。

*3:日刊ゲンダイDIGITAL, 「「報ステ」にまた圧力…自民党がテレ朝幹部を異例の呼び出し」, 2015/4/15.

*4:木村正人, 「「政治的公平」違反繰り返せば「電波停止も NHK・民放VS高市バトルの行方」, 2016/2/9.

*5:産経ニュース, 「古舘、岸井、国谷キャスターも… テレビ報道の顔交代 「公正」注文で及び腰?」, 2016/1/21.

*6:正確には、NHKの経営委員は国会の同意のもと内閣総理大臣が任命し、経営委員会がNHK会長を任命します。

*7:J-CASTニュース「NHK経営委員に仰天「安倍人事」 百田尚樹、長谷川三千子氏ら「保守派論客」メンバー」, 2013/10/25.

*8:日刊ゲンダイDIGITAL, 「官邸の“NHK支配”ますます加速 安倍シンパが経営委員長に」, 2016/7/2.

*9:朝日新聞DIGITAL, 「報道の自由度、日本は72位 国際NGO「問題がある」」, 2016/4/20.

*10:ラクジョブ新聞, 「携帯電話の通信速度が現在の100倍へ!第5世代移動通信(5G)で変わるゲーム開発の可能性」, 2016/6/10.
総務省, 「2020年代に向けたワイヤレスブロードバンド戦略」,2015/6/26.

*11:日経新聞Web版, 「AT&T、複合メディアに タイムワーナー買収を発表 」, 2016/10/24.

マイナス金利で楽々ご返済-国債のご利用は計画的に-

マイナス金利の国債

 最近、国債の金利がマイナスになったとよく聞くようになりました。日銀の異次元金融緩和の一つとして、日銀が国債を高値で買っているためです。

 国債の金利がマイナスといっても、表面利率はプラス金利の国債です。表面利率とは、国債の額面額に対して年間で得られる利子で、表面利率がプラス金利の国債を持っていれば、毎年利子が支払われます(通常は6カ月毎)。このため、高値で買っても同じ金額で売れれば、利子の分だけ利益が得られます(インカムゲイン)。たとえ高値で買った国債でも、さらに高値で売り抜けられれば、それでも利益を得られます(キャピタルゲイン)。逆に、安値でしか売れなければ、損失がでるかもしれません。

 国債の金利がマイナスとは、正確には、利回りがマイナスということです。マイナスの利回りでは、落札から償還まで持ち続けると損失が発生します。

表面利率と利回り

 さて、国債では、国が発行した時点の落札額で、国にとっての利回りが確定します。今年6月の10年債(第343回国債, 2016/6/20発行, 2026/6/20償還)*1を使って、利回りを計算してみます。

 直近の国債の入札では、表面利率は\alpha=0.1%、平均落札価格は額面100万円に対して落札額x=101.96万円で落札されています。このデータを用いて次の式から平均利回りrが計算できます。


r = \frac{(100+\alpha\times10)-x}{10x}=\frac{(100+0.1\times10)-101.96}{10\times101.96}=0.094\%

 上式の(100+0.1\times10)の項は、額面金額と10年間の受け取り利子の合計です。額面100万円の国債に対して、年間0.1%(0.1万円、つまり1000円)の利子が10年分もらえるので、100万円+1000円\times10年で合計101万円となります。 この国債を償還日まで持っていれば、101万円が得られます。

 一方、落札価格は101万9600円です。[償還の際に得られる金額]から[落札価格]を引くことで、10年間の損益が得られます。この場合では、10年で9600円の損失となります。年単位の損失は、9600円を1/10にした960円です。これを落札価格で割って百分率で計算すると、0.094%の損失、つまり、マイナス0.094%の利回りとなります。

 1989年からの表面金利と利回りの推移を図1に示します。表面利率と利回りは、基本的にはおおよそ一致しますが、最近はその差が大きくなっています。これは、日銀が行っているマイナス金利政策という歪んだ市場介入によるものです。日銀の市場介入がなければ、ほぼ一致するはずです。

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図1:1989年4月から2016年6月までの10年債の表面利率と平均利回の推移。
最近は、表面利率と利回りの差が大きくなっている。


日銀の歪んだ市場介入

 今年6月発行の10年債の場合、償還日まで持っていても101万円しか得られない国債ですが、101万9600円で購入する落札者がいます。101万円で購入した国債でも、最初の1年を経過すれば、1000円のキャッシュが得られます。2年、3年と保有すれば、2000円、3000円とキャッシュが貰えることになります。定期的に貰えるキャッシュは、金融機関には安定的な収入となるので、ある程度保有はしておきたい。償還日までに、購入金額から累積利子を引いた額以上で売れれば損失はでないので、買い手がいればマイナス金利となる国債でも買っておきたいということではないかと思います。マイナス利回りとなる国債に金融機関が入札をするのは、その後に、日銀がさらに高値で購入してくれるからでしょう。

 通常であれば、購入日から償還日まで持っていると、損失がでるようなマイナス金利国債は誰も購入しませんが、いまは日銀がいます。日銀が次々と高値で購入していきますので、インカムゲインのために国債を保有しておきたいとしても、キャピタルゲインでより多くの利益が得られるのであれば、金融機関は国債を売却します。国債を売ると、金融機関にはキャッシュが入ってきますので、市場に資金を投入することができます。日銀バキュームカーが金融市場を走り回って、損失がでるような国債でも次々と吸い上げ、金をばら撒いているといったところでしょうか。

 現在、日銀は年80兆円のペース*2と、国債発行総額以上の国債を購入しています(但し、借換債を除く)。このままのペースで日銀が国債を購入すると、あと数年で市場に国債はなくなります。逆にいうと、それまでは、市場に残っている国債を吸い上げて、キャッシュを落とすことで、市場に資金供給をすることができるのですが、そろそろ限界だろうと言われています。

 次に待ち受けているのは、市場を通して資金供給するのではなく、国経由で市場に資金を供給することです。所謂、ヘリコプターマネー*3。一応、日銀法によって、国債の引受は禁止されていますが*4、現状でも市場経由とは言え、国の発行額以上の国債を購入しているので、国債引受のようなものです。現在の日銀は、政権の下請けのような機関なので、本当にヘリコプターマネーを実施してしまうかもしれません。

マイナス金利国債で国の借金が減る?

 さて、ここからが本題。

 考えてみれば、マイナス金利国債は、売れば売るほど国側で利益が得られます。現在、10年以下の国債はすべて利回りがマイナスの国債で、国債の発行が国の財源になるという不思議な状態です。

 さらに、ヘリコプターマネーをやるのなら、いっそのこと表面利率もマイナスにしてしまっても、似たようなものです(どちらも日銀しか引受手はいない)。表面利率がマイナスの国債だと、国債保有者(日銀)が毎年、国に利払いをするということになるので、発行すればするほど、国の収入が増加するという摩訶不思議な現象が起こります。つまり、国債が財源になるわけです。増えた収入を債務返済に回せば、借金も同時に減らすことができます。

 今後、日銀がマイナス金利国債の損失をどうやって補填するのか知りません。日銀も昔は業績が良かったので、容易に損失補填できる方法があるのかもしれませんが、いつまでも、マイナス金利国債を購入することは無理でしょう。それとも、輪転機を持っているので、福沢諭吉さんを大量に刷って購入し続けるのでしょうか(笑えない)。

 バキュームカーに溜まりに溜まった国債も、本来であれば放出しなければなりません。しかし、バキュームカーに溜まった国債は安値でしか売れません(金利は上昇)。また、国債の放出では、今度は、市場のお金をバキュームすることになります。結局、国債はバキュームカーに入れたままにしておくことになると思います。

 表面利率がマイナスの国債の日銀引受など、ほとんど破れかぶれの金融政策ですが、ご利用が計画的でない我が国のことなので、そんな妄想も起こってしまう今日この頃です。

(2016/10/26)

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我が家上空の厚木基地の自衛隊機は違法飛行?

1. 我が家上空の輸送機C-130Rの飛行高度は400m

 以前の記事で、我が家上空に飛行する厚木基地の輸送機C-130Rの飛行高度を推定しました。推定した飛行高度は約400m。ドローンが飛行できる高度が150mまでなので、極端に差があるわけではありません。もしかしたら、この飛行高度は違法ではないかと思って調べてみました。

2. 航空法における飛行高度に関する法規制

2.1 最低安全高度

 航空機の航行に関する法律で関わる法律は、航空法です。航空法第81条に最低安全高度についての規定があり、具体的には航空法施行規則第174条第1項で決められています。 それによれば、以下のようになっています。

  • 人口密集地は、近所の障害物の頂点から300m以上の高度
     第174条1項 イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度
  • それ以外は、150m以上の高度
     第174条1項 ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度
     第174条1項 ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度

2.2 我が家は、人口密集地?

 国交省によれば、航空法における「人又は家屋の密集している地域の上空」は国勢調査の結果による人口集中地区の上空とのこと*1。具体的には、国土地理院の地図によって確認することができます。

 我が家は周辺が田んぼなので、「人口集中地区」扱いされていませんでした。但し、1kmほど離れたところの人口密集地で3方向が囲まれているので、ほぼほぼ人口密集地といったところでしょうか。

2.3 送電鉄塔の高さ

 我が家の600m以内には送電鉄塔が3つあります。飛行機は、人口密集地の場合、その鉄塔の頂点から300m以上上空を飛行しなければなりません。そうでない場合は、その鉄塔から150m以上離れて飛行しなければなりません。鉄塔の真上を通る場合には、(鉄塔の高さ)+150mとなります。

 近所の3つの鉄塔のうち2つは紅白の送電鉄塔です。60m以上の鉄塔は、航空法で紅白に塗る必要があるので、60m以上は確実です*2

航空機の飛行高度推定の記事とほぼ同じ考えで、写真から鉄塔の高さを計算してみました。未知数を高度(距離)ではなく、対象物の長さ(鉄塔の高さ)に変更することで、鉄塔の高さを計算することができます。また、距離は、Googleマップを用いて計測しました。

 計算結果は、以下の通りです。

  • 距離195mの鉄塔:約60m
  • 距離520mの鉄塔:約90m

 90m鉄塔の方は、予想以上に高かったです。人口密集地であったとしても、高度400mの飛行であれば、ぎりぎり航空法上は違法にはなりません。

  • (人口密集地)  90m鉄塔+300m = 390m以上
  • (非人口密集地) 90m鉄塔+150m = 240m以上

我が家の場合は高さ20m~30mぐらいの避雷針が立っているので、規制値は170m~180m以上で、我が家上空であれば、違法飛行にはなりません。

3. 海上自衛隊の通達による規制

 航空法は、ヘリコプターなどの回転翼による飛行機も含む規制ですが、自衛隊では航空法よりも厳しい最低安全高度を設定しています。海上自衛隊達3号「航空機の運航に関する達」(2013/3/12改正)の第48条(最低安全高度)によれば、以下となっています。

  • 人口密集地は、近所の障害物の頂点から600m以上の高度
     第48条(1) 人又は家屋の密集した地域の上空においては、当該航空機を中心として水平距離600 メートル(2,000 フィート)の範囲内の最も高い障害物の上端から 600 メートル(2,000 フィート)(回転翼航空機にあつては 300 メートル(1,000 フィート))以上の高度
  • それ以外は、地表から300m以上の高度
     第48条(2)前号の地域以外の地域の上空においては、地表面又は水面から 300 メートル(1,000フィート)(回転翼航空機にあつては 150 メートル(500 フィート))以上の高度

 ここで、回転翼航空機とはヘリコプターなどのことです。人口密集地では600m以上、そうでない場合は、300m以上と、航空法の規制の2倍の値としています*3。P-3CやC-130Rは固定翼機で回転翼航空機には該当しませんので、人口密集地で600m以上、それ以外は300m以上となります。

 我が家は人口密集地ではないので、飛行高度400mは、ぎりぎりセーフといったところでしょうか。人口密集地だったら、アウトです。

 但し、人口密集地でもほとんど同じ高度で飛行しているように見えるので、規定違反を犯して飛行をしている疑いは残ります。

4. まとめ

 我が家上空を低空飛行する自衛隊機の飛行高度の適法性について検証しました。今回の検証では、我が家上空に限っては、適法な飛行高度となっていました。但し、人口密集地でもほぼ同程度の高度で飛行している疑いがあり、違法飛行の可能性は残ります。

 神奈川県の基地問題の苦情窓口を見つけたので、違法であったら、ちょっと「ご意見」しようかと思いましたが、適法な飛行高度でした。人口密集地にいる方で、低空飛行だなぁと思ったら、チェックしてみてください。違法飛行である可能性がありますよ。

(2016/10/24)

関連記事

*1:国土交通省, 「無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について」.

*2:

(昼間障害標識)
第五十一条の二  昼間において航空機からの視認が困難であると認められる煙突、鉄塔その他の国土交通省令で定める物件で地表又は水面から六十メートル以上の高さのものの設置者は、国土交通省令で定めるところにより、当該物件に昼間障害標識を設置しなければならない。
出典:航空法

また、航空法施行規則 第百三十二条の三で紅白の塗装について規定しています。

*3:厳密には、自衛隊通達の回転翼航空機の規制では、「航空法第174条1項 ロ」に相当する規制についての記述がないので、海上自衛隊の規制だけに従うと、航空法を違反する場合がでてきてしまいます。
 
 原因は、基本的には、航空法の174条第1項ロ、ハの規定が不適切な規定となっているからです。特にロは、「人又は家屋のない地域」といいつつ、人又は物件から150mと規定していて、論理的におかしいです。また、人・物体から150m以上離れなさいと規定しているだけなので、実際には最低高度を規定しておらず、高度1mでも構わない規定になっています。
 
 ロが意味する地域を「人又は家屋が密集していない地域」と解すると、今度はハの規定に合致する地域がなくなり、意味が分かりません。

 航空法第174条1項ロ、ハの意図するところは、次のようなところでしょう。

  • 人又は家屋の密集していない地域の上空及び広い水面の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度で、且つ、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度

 但し、この規定ですと、200m級の送電鉄塔付近(鉄塔から150mの距離)でも150mの高度で飛行してもよいことになります。これでは、危険ですので、イの規定と同じように600m以内の障害物に関する条件を加えて、次のようにすべきでしょう。

  • 人又は家屋の密集していない地域の上空及び広い水面の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から百五十メートルの高度

なぜ、上記のように単純に300mと150mとしなかったのかは謎です(山岳部などでの飛行のために、水平距離600mの規制を入れたくないということなんでしょうか。それなら、それで規定の仕方はあると思いますが、...)。

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