時事随想

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ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【天皇】日本は世界最長の王国

世界最長在位のプミポン国王

 先日、タイのプミポン国王が亡くなられました。世界で最も長い在位の国王だったそうです。

 タイではクーデターがしばしば起きましたが、その度にプミポン国王の調停によって酷い内戦のような事態には発展しませんでした。国王の権威と国王への尊敬が、そのようなことを可能とさせたのでしょう。

日本の天皇家

 日本の天皇も、日本の君主として、長い間、存在し、現在も象徴君主として存在しています。始まりを神武天皇の即位とすると、紀元前660年(弥生時代)になってしまうので、実際にはその何世紀も後のことになりますが、少なくとも、飛鳥時代には天皇は神話の世界ではなく、歴史上の君主として在位しています。つまり、天皇家には実に1400年以上もの歴史があります。

 考えてみると、1400年もの長きに亘って、現在まで存続している王家がいるのは、日本ぐらいではないでしょうか。さらに、天皇の場合、先祖を遡ると、天照大神などの神様に遡ることができるという点でも、稀有な存在です。もちろん、天照大神や神武天皇は神話の世界で、天皇の正統性を確保し、権威を与えるために、日本書紀や古事記に記されたものです。この神から続くという神話が天皇を長い間存続させている理由の一つではないかと思います。

征夷大将軍と朝廷

 天皇家の統治は、平安時代の後期に崩れ、そして、鎌倉時代に終わりました。しかし、武士統治の時代になっても、武士の棟梁である征夷大将軍は、あくまで朝廷の家臣という位置づけになります。

 武士の統治者として最初に征夷大将軍となったのは、源頼朝です。しかし、源頼朝は、平治の乱で敗北し、伊豆に流刑となった身。日本を軍事的に平定したとはいえ、権威はありません。源頼朝は、朝廷から征夷大将軍という官職を得ることで、「天皇の代理として」、日本を統治するという権威を得たということになるでしょう。西洋の王権神授説に近いかもしれません。王権神授説の「王の権力は、神から付託されたものである」という代わりに、「征夷大将軍の権力は天皇という現人神から付託されたものである」という訳です。

明治維新と終戦と象徴天皇

 明治維新により、天皇は近代国家の君主という形で復権します。いくら軍事力はあるとはいえ、薩摩や長州などの田舎侍が日本を統治するためには権威が必要で、その権威を得るために天皇を利用したということです。鳥羽・伏見の戦いや戊辰戦争で掲げられた錦の御旗は、薩長軍に正統性を与えるものでした。その後、薩長が中心となって作った明治政府・明治憲法により、立憲君主制とはいえ、「天皇は神聖にして侵すべからず」存在として復権を果たすことになります。

 日本が第二次世界大戦に敗れ、天皇制の存廃を検討する際にも、天皇制を廃止すれば、日本統治が困難となるとの理由で、天皇制を存続させました。そして、現行憲法での象徴天皇制という形で残ることになりました。

日本は世界最長の王国

 天皇家は、日本の歴史が始まる時点から現在まで、(実質的統治の有無はあるにせよ)国家君主として存続し、ついには世界最長の王家となりました。そういった意味で、日本は世界最長の王国ということができます。

(2016/10/17)

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