時事随想

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ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【NHK】イラネッチケーを使って合法的に受信契約しない方法

 「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が、NHKに対して、債務不存在確認を求めたイラネッチケー裁判の判決が今年7月20日に下りました*1。立花氏は敗訴しましたが、今回は、このイラネッチケーを用いて合法的にNHKと契約しない方法について説明したいと思います。但し、合法的ではありますが、NHKと訴訟を行った場合には敗訴する可能性がありますので、ご注意ください。

【追記:2017/1/20】 イラネッチケーをテレビに固定して外れないようにした場合、受信料支払は不要との判決が2017年1月19日に出ました(イラネッチケー受信料裁判)。

1. イラネッチケーとは

 通称、イラネッチケーとは、筑波大学の掛谷英紀准教授が開発したNHKの電波信号を減衰させるカットフィルタで、iranehkという製品名で販売されています*2。地上波用途、BS放送用があり、Amazonから購入できます。

 このイラネッチケーを接続したテレビについては、以下のNHK見解があります。

 NHKの放送が映らないように改造等したテレビについては、放送法を所管する官庁(総務省)が、過去(旧郵政省当時)に「復元可能な程度にNHKの放送を受信できないよう改造された受信機については、受信契約の対象とする」との考え方を示しています。アンテナが外される等により一時的にNHKの放送が映らない受信機についても、アンテナを接続すれば視聴可能になることから、受信契約が必要です。
 
 したがって、NHKとしては、「NHKの電波だけカットするフィルター」を取り付けた受信機についても、受信契約が必要になると考えています。受信料の公平負担に、ぜひ、ご理解をお願いします。
出典:J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.
 NHKは「フィルターを取り外せばNHKが見られるので、受信契約の対象だ」とする。
出典:産経ニュース, 「「公共性欠如のNHKはいらない」 民放だけが映る“アンテナ”が人気」, 2015/8/15.

 これは、あくまでNHKの見解に過ぎません。NHKが敗訴したワンセグ裁判レオパレス裁判と同様に不当な主張である可能性があります。

2. 放送法64条とNHK放送受信規約

2.1 受信設備の設置とは?

 一般に、テレビを設置した場合、NHKと受信契約を結んで、受信料を支払わなければならないとされるのは、放送法64条とNHK放送受信規約にその根拠があります。

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備(中略)を設置した者については、この限りでない。
出典:放送法
(放送受信契約の種別)
2 受信機((略)NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備(略))のうち、地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置使用できる状態におくこと(略))した者は地上契約(略)を締結しなければならない。
出典:日本放送協会放送受信規約

 NHKを受信できるテレビを設置した場合、NHKとNHK放送受信規約に基づく受信契約を行わなければなりません。ここで、設置とは、「使用できる状態におくこと」です。

2.2 使用できる状態とは?

 テレビの設置とは、「使用できる状態におくこと」ですので、以下の状態は、設置に当たりません。

  • アンテナを設置しているだけでは、設置にはなりません(テレビはありませんから)
  • テレビを購入しただけでは、設置にはなりません(アンテナはありませんから)
  • アンテナとテレビを購入しただけでは、設置にはなりません(配線していませんから)
  • アンテナとテレビを購入し、配線しても、設置にはなりません(B-CASカードを挿入していませんから)

 アンテナ・テレビ・配線に加えて、B-CAS社との使用許諾契約を締結し*3、B-CASカードを挿入することで、初めて「使用できる状態」となります。

 B-CAS社との契約締結は、放送法及びNHK放送受信規約で義務付けられていません。従って、外形的にテレビが設置していると認められる場合であっても、B-CAS社と契約しない(B-CASカードのパッケージを開封しない)のであれば、テレビを使用できる状態におくことはできません。この状態は、放送法及び受信規約における設置には該当しませんので、NHKと受信契約しなくても、放送法に抵触しません。この場合、当然のことならが、テレビ視聴はできませんので、ゲームやビデオ鑑賞などテレビ放送の視聴以外の目的で使用することになります。
 
 レオパレスのようなテレビ付き賃貸マンションの場合、オーナーが、ゲーム・ビデオ・パソコンモニタ用としてB-CASカードなしのテレビを置き、利用者(入居者)に提供しているのであれば、NHKと受信契約する義務はありません(証拠としてB-CASカードは未開封のままにしておくとよいでしょう)。また、利用者も、B-CASカードが挿入されていない放送を受信できないテレビなので、NHKと受信契約する義務はありません(レオパレス裁判の確定を待たずとも、明らか)。
 
 また、利用者が自ら持ち込んだテレビを設置するための便宜として、オーナーがアンテナ線を屋内に配線することは、なんら問題ありません。利用者が自ら用意したテレビを設置した場合、利用者はNHKと受信契約を締結する必要があることは言うまでもありません。
 
 なお、利用者は、自らが所有するB-CASカードをオーナーが設置したテレビに挿入し、放送を受信することは、B-CAS社との契約に違反するため、してはいけません。

2.3 イラネッチケーは合法

 アンテナ・テレビ・B-CASカード・イラネッチケーを用いて配線した放送受信システム(以下、イラネッチケー放送受信システムという)では、NHK放送の受信はできませんので、放送法64条の「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当しません。このため、この受信システムを設置しても、NHKとの放送受信契約の義務は発生しません。従って、未契約でも放送法に抵触せず、合法であることは自明です。

3. イラネッチケーで勝訴できるか?

 合法であると言っても、合法であることと裁判で勝訴することとは、別の次元の話です。

 裁判では、双方の言い分が異なっていた場合、どちらの言い分が事実であるか裁判所は判断する必要があります。裁判所の判断の拠り所は、どちらの主張が尤もらしいかということです。尤もらしい主張を事実として認定し、判決を下します。

 イラネッチケー放送受信システムで未契約が合法であるとしても、再設置して容易にNHK放送を見られる状態にできるのであれば、視聴者はNHK放送を見ているに違いないという「推認」*4によって、視聴者は敗訴する可能性があります。つまり、合法であっても、裁判には負ける場合があるということです(イラネッチケー裁判を参照)。

 以下では、イラネッチケー放送受信システムを提訴した場合の裁判について検討します。

3.1 NHKは訴えることができる

 イラネッチケー放送受信システムを設置した設置者(視聴者)に対して、NHKは「NHKの放送を受信できるようにテレビを設置しているにも関わらず、受信契約せずに、不当に受信料を支払っていない」と民事裁判を提訴することが可能です。

 実際には、現在のところ、NHKの提訴は、BSテロップ解除やスカパーなどの情報から、確実に視聴者がNHK放送を視聴していると確認した場合に限られるようです。

3.2 普通は、敗訴する

 イラネッチケー放送受信システムの場合、イラネッチケーを取り外し、容易にNHK放送を受信できるように再設置することができるのだから、視聴者はNHKの放送を受信できるように再設置するとNHKは訴えます。このとき、裁判官は、NHKの主張を事実と推認すると思われます*5。これに対して、視聴者側はNHKの放送を受信できるように設置していないことを証拠を示して証明できないため、視聴者側は敗訴します。

3.3 証拠があれば、勝訴する

 逆に言えば、「NHKの放送を受信できるように設置していないこと」が証明できれば、裁判には勝訴します。放送法では「設置した(過去の出来事)」場合に受信契約をする必要があるので、過去に設置したことがないことを証明すれば十分でしょう。

 例えば、テレビ等の入手からイラネッチケー放送受信システムの設置、及び、その後のテレビの使用状況を常に録画しておけば、NHKの放送を受信できるように設置していないことの証拠となるでしょう。

 実際に録画するかは別として、低画質・タイムラプス録画であれば、1TBのディスク容量で10年間程度の録画は可能と思います。

 ここで、重要なのは、確たる証拠があれば、NHKが敗訴し、視聴者が勝訴するということです。つまり、イラネッチケー放送受信システムを設置し、NHKと未契約で民放を視聴すること自体には、違法性はなく、合法であるということです。

4. イラネッチケーの設置で、受信契約を解約できるか?

4.1 イラネッチケーの接続では、解約できない

 結論から言うと、イラネッチケーを簡単に取り外せる状態では、受信契約の解約はできません(解約を提訴しても勝つ見込みはありません)。

 現時点でNHK放送が受信できない状態であっても、容易にNHK放送が受信できるように再設置できる場合には、NHK放送が受信できる状態が継続していると考えることが可能です(一時的に電源コンセントを抜いた場合と同じ)。

 このため、解約の場合には、将来的にもNHK放送が受信できるように設置しない(あるいは設置できない)という事実についても証明する必要がありますが、この証拠を提出することはできません。従って、イラネッチケーを接続しても、「NHK放送が受信できるように再設置する」と推認できるので、裁判をすれば敗訴となります。

 さらに、NHK放送受信規約によれば、解約は以下のように規定されています。

(放送受信契約の解約)
第9条 放送受信契約者が受信機を廃止すること等により、放送受信契約を要しないこととなったときは、直ちに、次の事項を放送局に届け出なければならない。
(略)
2 NHKにおいて前項各号に掲げる事項に該当する事実を確認できたときは、放送受信契約は、前項の届け出があった日に解約されたものとする。(略)
出典:日本放送協会放送受信規約

 解約においては、「放送受信契約を要しないこととなったとき」(受信設備を設置していない状態になったとき)、且つ、この状態を「NHKにおいて(略)事実を確認できたとき」と二つの条件を満たす必要があり、ハードルが高くなっています。NHKの事実確認が事実に反すると、提訴することは可能ですが、「将来についての証拠」がないので、やはり勝ち目はないでしょう。

4.2 正式解約後のイラネッチケーの再設置で契約義務なし

 イラネッチケー放送受信システムを設置して、受信契約を行わないようにするためには、一旦、正規の手続きで受信契約を解除することが必要です。この契約解除後に、イラネッチケー放送受信システムを新規に設置すれば、前述したように契約義務はありません。

 つまり、受信契約の解約をして、その後、イラネッチケー放送受信システムを設置すれば、合法的に契約義務をなくすことができます。

 但し、提訴された場合、「NHK放送を受信できるように設置していない」という証拠を準備できなければ、敗訴します。

5. イラネッチケーって、イラナクネー?

5.1 正々堂々と断ることができる

 イラネッチケー受信システムを設置したとしても、実際には証拠を用意できず、裁判で敗訴するのであれば、イラネッチケーってイラクナクネーと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

  • イラネッチケー放送受信システムは、NHK放送を受信できる受信設備ではないので、受信契約は必要ありません(合法です)。
  • イラネッチケー放送受信システムでは、実際に、NHKを見ることはできません。

 まず、NHKに受信料を支払う必要がなく、実際にNHKを見ることができないので、後ろめたい気持ちを持つことがなくなります。これが最大の効果と言ってよいでしょう。

 また、NHK集金人が来た時にも、心の余裕ができるのです。

 イラネッチケーを接続すれば、合法的に受信契約の必要がなく、実際にNHKを見ることもできないので、NHK集金人が来た時に、後ろめたい想いをすることなく、正々堂々と断ることができます。

 昨年、当時住んでいたマンションにNHK集金人が現れて嫌な思いをしましたが(関連記事)、NHK集金人の再訪問に備えて、テレビの修理と同時にイラネッチケーの設置を行いました。結局、NHKへの苦情が功を奏したのか、二度と集金人は来ることはなく、戦うことはできませんでした。来てくれれば、かなり強気で相手を論破したのではないかと思います(戦って遊んでいる暇があればね)。

 結局、そのマンションから引っ越すまで、イラネッチケーを設置したままでしたが、特に困ることはありませんでした。

5.2 魔法の呪文

 イラネッチケーを使ったとしても、NHK集金人と戦えない人、戦って遊んでいる暇のない人は、次の魔法の呪文を唱えましょう。

  • 「お帰りください」「お帰りください」「お帰りください」….

 この呪文で、NHK集金人は、撃退できるそうです。この呪文は最近知ったのですが、今度は、若かりし頃のように戦いに挑むのではなく、この呪文を唱えようと思います。

 この魔法の呪文は、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏のビデオで知りました。

 単純なようでいて、法律をよく知っている人がする対応ということです。

6. 最後に

 イラネッチケーを使って合法的に受信契約をしない方法と題しましたが、実は、そもそも放送法に抵触せず、合法です。但し、裁判に勝つか否かは、別のことなので、NHKと契約する・しないは、自己責任でお願いします。

 イラネッチケー裁判については、次回の記事でまとめました。

(2016/11/7) 最終更新日:2017/1/20

関連記事

*1:
佐賀新聞, 「NHK遮断は無効 受信料支払い命令」, 2016/7/21.
産経ニュース, 「NHKだけ映らない機器設置の男性に受信料1310円支払い命令 東京地裁「機器取り外せる」 男性が反論「今度は溶接して司法判断仰ぐ」」, 2016/7/20.

*2:
J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.
ITmediaニュース, 「「NHKだけ映らないアンテナ」で受信料支払い不要に? 「公正で有益なNHKのあり方を議論するきっかけに」」, 2015/4/27.
産経ニュース, 「「公共性欠如のNHKはいらない」 民放だけが映る“アンテナ”が人気」, 2015/8/15.
産経ニュース, 「開発秘話「NHKだけ映らないアンテナ」はこうして生まれた! 掛谷英紀(筑波大学准教授)」, 2015/11/22.
掛谷英紀, 「開発秘話「NHKだけ映らないアンテナ」はこうして生まれた!」, iRONNA.

*3:B-CAS社, 「B-CASカード使用許諾契約約款」.

*4:「これまでにわかっている事柄などから推し量って、事実はこうであろうと認めること」(デジタル大辞泉)

*5:立花孝志, 「NHK受信料を支払わない方法 最新版2015年3月27日」(5~10分), YouTube.
受信契約を既に交わした人がNHKを視聴していないと主張した場合の最高裁判決について「裁判所はNHK視聴していると推認したこと」を解説。「受信契約を結んでいない視聴者については、判例はない」という説明もしている。

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