時事随想

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【NHK】イラネッチケー受信料裁判

 前回の記事でイラネッチケーの合法性について説明しましたが、今回の記事では、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が行っているイラネッチケー裁判について説明します。前回記事の検討は、本稿のイラネッチケー裁判の裁判0の設置条件に当たります。

【追記】
 東京地裁でイラネッチケーをテレビに固定して外れないようにした場合(裁判2)、受信料支払は不要と判決されました(NHK敗訴)。判決解説はこちら(2017/1/20)。

目次はこちら

1. 概要

1.1 イラネッチケー裁判

 通称、イラネッチケーとは、筑波大学の掛谷英紀准教授が開発したNHKの電波信号を減衰させるカットフィルタで、iranehkという製品名で販売されています*2。地上波用途、BS放送用があり、Amazonから購入できます。


 立花氏がNHKを相手に提訴するイラネッチケー裁判は、このイラネッチケーを接続して設置したテレビに受信契約義務があるかをNHKに確認する一連の訴訟です。基本的に、立花氏が原告となって、受信料支払という債務がないことを確認するという形式で提訴しています。

 イラネッチケーの設置条件を変更しながら、いくつもの裁判を行い、勝訴する条件を探す予定でいます。

1.2 NHKの見解

 イラネッチケーを接続したテレビについては、以下のNHK見解があります。

 NHKの放送が映らないように改造等したテレビについては、放送法を所管する官庁(総務省)が、過去(旧郵政省当時)に「復元可能な程度にNHKの放送を受信できないよう改造された受信機については、受信契約の対象とする」との考え方を示しています。アンテナが外される等により一時的にNHKの放送が映らない受信機についても、アンテナを接続すれば視聴可能になることから、受信契約が必要です。
 
 したがって、NHKとしては、「NHKの電波だけカットするフィルター」を取り付けた受信機についても、受信契約が必要になると考えています。受信料の公平負担に、ぜひ、ご理解をお願いします。
出典:J-CASTニュース, 「NHKだけ見えないテレビが開発 それでも「受信料払う義務あり」らしい」, 2015/4/13.

 これは、あくまでNHKの見解に過ぎません。NHKが敗訴したワンセグ裁判レオパレス裁判と同様に不当な主張である可能性があります。

1.3 NHKコールセンターで確認する

 立花氏からNHKコールセンターにイラネッチケーで契約が必要か確認したところ、受信契約は必要ありとの回答です。

2. 裁判内容

 表1に示すイラネッチケーの設置条件で裁判中・裁判予定です。

表1. イラネッチケー裁判のまとめ。
一審 二審 備考
裁判0 → 裁判1 - 簡単に外れる状態で設置。
裁判1 敗訴(東京地裁)
(2016/7/20)
裁判中(東京高裁)占有権がある場所に専門家が設置
裁判2 勝訴(東京地裁)
(2017/1/19)
(未定) テレビに完全に固定。受信契約済で支払不要の確認。
裁判2.1公判中(東京地裁) - テレビに完全に固定。受信契約不要の確認。
裁判3 ? 占有権がない場所に設置。
裁判4 ? ホテル屋上のアンテナに完全固定。
裁判5 ? 衛星契約を地上契約に変更する。

裁判0

  • 事件概要
    • 最も簡単・単純な接続方法
       イラネッチケーは、部屋の内壁のアンテナ端子とテレビの間に取り付ける。イラネッチケーを簡単に取り外すことができる。
  • 裁判方針の変更
    • この状態で受信契約が必要か当初NHKに問うつもりでいたが、NHKは総務省見解(旧郵政省見解)を持ち出し、受信契約が必要と主張してきたので、裁判の維持が難しいという判断で、争点を変更(裁判1)。
    • 裁判0としているが、裁判としては裁判1に含まれる。

裁判1

裁判2

裁判2.1

  • 放送受信契約締結義務不存在確認請求という形で、裁判2のイラネッチケー固定で、受信契約が必要ないことを確認する裁判

 裁判2は一旦受信契約してから、イラネッチケーを取り付け、受信料支払の債務存在を確認する訴訟であるが、裁判2.1は、受信契約なしの状態でイラネッチケーを取り付けたテレビを設置し、受信契約が必要であるかを争点とする。

  • 東京地方裁判所
    • 2016/11/25公開 (裁判2の11/24公判の説明と新しい訴訟)
      • 合法・安全にNHK受信料の不払いが出来る、魔法の筒【イラネッチケー】について - YouTube (21:57)
        • イラネッチケーを固定したテレビの説明。
        • NHKの答弁書。受信料債務がないことを自ら認める。
        • 裁判長は和解を勧めるが、NHKは拒否。
        • イラネッチケーでの契約の要否が、この裁判では分かりにくい。
        • 新たな訴状を作成。
          • 放送受信契約締結義務不存在確認請求事件。
          • NHK契約が要否を、直接、地裁で確認する。
            • 原告は「NHKから国民を守る党」に変更。ワンセグ裁判で「男性」「朝霞市議」としか報道されなかったため。
    • 2017/01/23公開(口頭弁論)

裁判3

裁判4

裁判5

3. その他の解説

3.1 NHKだけ映らないテレビ(イラネッチケー不要)

3.2 NHKによる受信契約が必要な条件

3.3 NHKだけが映らないテレビが発売されない理由

  • NHKだけ映らないテレビが発売されない理由 - YouTube (2016/10/31公開)
    • NHKによってテレビの知財権が確保されており、このため、NHKが映らないテレビが販売できない。
    • NHKがすべて研究開発し、メーカは開発しない
       (筆者注:そんなことはありません。NHKが大きな貢献をしていることは確かですが、メーカーも多額の開発投資をしています)
    • 以前にある国内メーカーが持ち込んだNHKが映らないテレビも発売されない。

4. 判決の予想

 個人的な予想としては、裁判2~4は勝訴と思います。

 裁判1は5分5分。裁判1で勝訴するためには、

  • 立花氏本人がイラネッチケーを取り外せないこと。
  • 「立花氏の依頼によって、イラネッチケー設置者(開発者)が取り外さないこと」や「立花氏が取り外したことを発見した場合にNHKに報告すること」との設置者の誓約書に信憑性があること。

の二つの条件が満たされることが必要と思います。

 山口ケーブルテレビの場合には、カットフィルターの設置が(NHKによって公式に)認められているので、設置者の信憑性が鍵となるのではないかと思います。

 この裁判の場合、イラネッチケー設置者が裁判所に誓約書を提出しているので、これにより設置者が言うことは信用できると判断することもできます。このため、逆転勝訴の可能性も十分にあるのではないかと思います。

 イラネッチケーを外す工事をするよりも、室内アンテナ*1を新規購入した方が、遥かに簡単に「テレビを視聴できる状態にすることが可能」ですけどね。「テレビを視聴できる状態にすることが可能」というNHKの論理が通るとすれば、以下の場合でもNHKとの契約義務が発生することになってしまいます。

  • テレビだけでも受信契約が必要:室内アンテナの設置で容易に視聴可能となりますから(1580円から)
  • パソコンだけでも受信契約が必要:USBチューナーを接続すれば容易に視聴可能となりますから(750円から)
  • 何もなくても受信契約が必要:Amazonでクリックすればすぐに購入できますから(4800円から)

 今後の裁判の行方が楽しみです。

(2016/11/9:初稿)
(2017/1/20:最終更新日)

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目次

付録A. 和歌山のホテルの契約現場

ホテル名:Sweetable Hotel TO

*1:例えば、1byone室内アンテナは、1580円から。1990円のアンテナを購入しましたが、テレビとの相性がありました。もう少しランクが上の別メーカーのアンテナの方が安定して受信できるかも。

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