時事随想

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ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【ニュース女子】BPO意見書への批判について

 TOKYO MXに「ニュース女子」というバラエティ番組があったそうです。番組名を聞くことはあったのですが、一回も見たことはありませんでした。BPO意見書で話題になったことから知るとことなりましたが、今回の記事では、この「ニュース女子」のBPO意見書の問題について記事にしたいと思います。

1. 「ニュース女子」に関するBPOの意見書

 TOKYO MXの番組「ニュース女子」が2017年1月2日に放送した沖縄基地問題の特集について、BPOの放送倫理検証委員会が意見書をまとめました。その要旨は以下の通りです。

当該番組はTOKYO MXが制作に関与していない“持ち込み番組”のため、放送責任のあるTOKYO MXが番組を適正に考査したかどうかを中心に審議した。
委員会は、

(1) 抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった、
(2)「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった、
(3)「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった、
(4)「基地の外の」とのスーパーを放置した、
(5) 侮蔑的表現のチェックを怠った、
(6) 完パケでの考査を行わなかった、

の6点を挙げ、TOKYO MXの考査が適正に行われたとは言えないと指摘した。そして、複数の放送倫理上の問題が含まれた番組を、適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。

(筆者により、改行を追加)
東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見(2017/12/14) PDF

「ニュース女子」の制作会社DHCテレビがyoutubeに公開している映像

2. アノニマスポストのBPOへの批判

 この意見書に対してネット上では、批判的な意見を多数見かけます。本記事では、そのうちの一つ、アノニマスポストの批判意見について検証したいと思います。

2.1 記事の概要

 アノニマスポストは、保守系ニュースのまとめ配信サイトです。このサイトでは、今回の「ニュース女子」に関するBPO意見書についても記事にしています。


 アノニマスポストの記事では、「救急車を止めたことは事実」なのにBPOは「誤解」で片付けていると、BPOの意見書の次の部分を引用し、批判しています。

③抗議活動側が傷病者であった18件のうち1件について、傷病者を収容した救急車が徐行運転を開始して間もない高江橋で、抗議活動側の人が救急車に対して手を挙げて合図し、救急車に停止してもらい、誰を搬送しているのかを確認したことがあった。救急車が停止した時間は数十秒であった。この事実が「救急車を止めた」と誤解された可能性がある。
BPO意見書12ページの消防長の証言

これをBPOの「稚拙な言い訳」とし、次のように述べています。

BPOは消防署に聞き取り調査をして、実際に救急車が止められたのを知ってしまったのだろう。
しかしなんとか「ニュース女子」を悪者にしたい意図が文面からありありとわかる。
まず上記の文章から「私設検問」の実態がわかり、実際に救急車は止まっている。
例え数十秒であってもそれは活動家たちの私設検問で「止められている」のだ。
しかしそれを強引に「誤解」で片づけている
アノニマスポスト

2.2 BPO意見書の解釈

 BPOの検証委員会の役割は、まずは、放送内容が適切な取材に基づいた事実に即した報道となっているか調査し、仮に問題があるとすれば、そのような問題点を放送局がチェック(考査)していたかを検証することにあります。

 BPO意見書の4章2節の「基地建設反対派は救急車を止めたのか?」に「この事実が「救急車を止めた」と誤解された可能性がある」との記述があります。この意見書での「この事実」と「救急車を止めた」とは、次の事項を指します。

  • 「この事実」:「傷病者を収容した救急車が徐行運転を開始して間もない高江橋で、抗議活動側の人が救急車に対して手を挙げて合図し、救急車に停止してもらい、誰を搬送しているのかを確認したことがあった。救急車が停止した時間は数十秒であった。」(消防長証言)
  • 「救急車を止めた」:ニュース女子で放送された内容

「救急車を止めた」が「ニュース女子で放送された内容」であることは、BPO検証委員会の目的や文脈からすれば、当然の解釈です。BPO意見書を読んで、このように理解できないのであれば、理解能力がない、あるいは、意図的に異なる解釈をしていると言わざるを得ません。

2.3 「救急車を止めた」という放送内容

 さて、「救急車を止めた」という「ニュース女子」における放送内容について述べます。

 放送事実は、「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、(編集によりカットあり)その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」です。

 編集によってカットされている部分があるので、日本語がおかしくなっていて、「その救急車」がどこに急行するのか不明確ですが、前後の文脈から、「暴力を振るわれている防衛局・機動隊の人のところに向かった救急車」と考えられます。つまり、放送内容は「防衛局・機動隊の人のところに急行しようとしている救急車を止めた」と受け止められます。

 BPOが検証したのは、「(基地反対派が)救急車を止めた」ではなく、放送内容である「(基地反対派が)防衛局・機動隊の人のところに急行しようとしている救急車を止めた」です。消防長の証言は、「(基地反対派が)救急車を止めた」ことの裏付けにはなりますが、放送内容である救急車の停止についての裏付けにはなりません。従って、BPO意見書では以下と結論付けています。

「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」という放送内容については、裏付けとなりうる事実の存在が認められない

 裏付けがない放送内容をBPOは問題視しているのです。

2.4 アノニマスポストの主張

 基地反対派が大挙して道路にいるのは、救急車搬送の邪魔であったことは確かでしょう。また、迷惑に感じていた地元住民も少なからずいたのかもしれません。

 そして、アノニマスポストとしては、「基地反対派が行っている私設検問は問題であり、BPOもその問題を指摘するべきだ」と主張したいのだと思います。

 しかし、「取材対象者の行為の是非」について論ずることは、BPO委員会の検証対象外の事項です。むしろ取材対象者の行為の是非を論ずべきではないと思います*1。「放送内容が事実に基づくか」「事実の裏付けは十分か」「侮蔑表現などがないか」等を調査・検証し、放送局の問題点を意見として答申することが委員会の目的でしょう。

 もっとも、放送局が、取材対象者の行為の是非を論ずることは、極端な偏向がない範囲では構わないと思います。但し、そこに虚偽やねつ造があってはなりません。

3. 最後に

 BPO意見書では、「裏付けとなりうる事実の存在が認められない」という穏当な表現をしています。しかし、放送された番組と意見書を見る限りでは、「ニュース女子」の放送内容は、「過剰な演出」どころか「ねつ造」と呼ぶべきものであることが、分かります。

 放送された内容は、予め用意していたシナリオに合わせるように、映像を撮影するというもので、報道と呼べるレベルのものではありません。また、そのシナリオがネット上に流布する噂話に基づくので、放送内容が「事実をねつ造する」ことになったのでしょう。また、放送局が行った放送内容のチェックもネット上の情報に多くを頼っていた点も問題でした。

 バラエティ番組と言えども、ねつ造した内容を放送することは許されるべきではないでしょう。

 主張したいことのために、事実を曲解したり、捏造したりすることはあるでしょう。「ニュース女子」も、その代表的な事例です。

 虚実が入り混じるネットの世界ではフェイクニュースが溢れています。見極める目が必要です。

(2017/12/21)

追記(2017/12/22)

 救急車問題の最初の発信者とされる筒井清隆さんの最初の発信と、ニュース女子に地元住民として出演した依田啓示さんのBPO意見書に関するコメントをfacebookで見つけましたので、引用します。

筒井清隆 北部の救急医療を預かる者です。
事実は、北部の救急医療に携わる我々が、その実情を知っています。
事実だけを述べると、救急車も反対派の方々に止められています。なかには、患者さんを乗せて救急搬送している途中の救急車を止められ、勝手にドアを開けられ、携帯で撮影しながら「誰を乗せているか⁉︎」と無断で車内に入ろうとされました。
搬送されている患者さんの気持ち、考えた事あるんでしょうか…
(facebookの依田啓示さんの投稿に対するコメント。下線は筆者による)

 但し、数日後には、筒井さんは、上記のコメントは伝聞である旨、投稿しています。

今回の高江で起こっている事案に対し、私が他の方へコメントをいたしました「救急車を停止させ、勝手にドアを開けた」件に関して、関係者様に多大なるご迷惑をお掛けしている事に関して謝罪を申し上げます。 本コメント内容は、「聞いた話」であり、コメントに書いた内容では言葉が足りず、実体験に捉えられ、誤解を招いてしまいました。
また、本件は事実確認は出来ません
この為、関係者に事実確認の連絡が多く寄せられていると聞き、胸を痛めております。
私の軽はずみなコメントで、皆様に誤解を与えた事を痛切に反省いたします。重ねて、申し訳ありませんでした。
筒井清隆さんの投稿(2016/10/6)
さて、BPOによる、いわゆる「救急車デマ検証」のビックリする事は、ニュース女子に全く使用されていない「尾道消防」のボコボコになった救急車の画像が「デマの根拠」として挙げられ、「ニュース女子」が、過激派がまるで救急車を襲ったかのような表現をしたと結論付けています。
しかも、「ニュース女子」とは全く関係がないMBS「大阪毎日放送」の斉加記者の番組で紹介された悪意ある「捏造」をそのまま引用しています。この番組で、僕はとんでもない「デマ発信源」に仕立てあげられています。

 BPO意見書には、「「尾道消防」のボコボコになった救急車の画像が「デマの根拠」として挙げられ」に該当する記述はありません。また、「MBS「大阪毎日放送」の斉加記者の番組で紹介された悪意ある「捏造」をそのまま引用しています」については、「捏造」の意味が不明確なので良く分かりませんが、引用に相当する記載はBPO意見書にはないように思います。

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*1:例えば、「その一部は政治団体によって動員された集団が、路上を占拠し、交通を妨害し、道交法に違反した場合、BPOは是非を論じるべきでしょうか?例えば、このような集団このような集団の違法行為をBPOは違法であると非難すべきでしょうか?

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