時事随想

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ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【NHK】ワンセグ携帯、受信料の支払い義務なし

「ワンセグ放送 NHK受信料、支払い義務ない」(毎日新聞Web版, 2016/8/26*1 )

テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話しか持っていない場合に、NHKに受信料を支払う義務があるかが争われた訴訟で、さいたま地裁は26日、支払い義務はないとの判決を言い渡した。

これと関連する原稿を別のブログ向けに随分と昔に書いたのですが、今回、加筆・修正して公開することにしました。

NHKの訪問員が来た

休日のひととき

 風邪で休んでいたら、NHKの訪問員の方がいらっしゃいました。  そう言えば、ここのマンションに引っ越してきてから、初めてのNHKの訪問員かもしれません。

 (NHKを装った空き巣の下見人らしき)怪しいヒトも、訪問してきます。怪しいヒト達は、身分証の提示がないので、「NHK?」と怪訝な顔をして、ジロジロ見ていると、直ぐに退散してしまいます。ヤクザ顔というわけではないのですが(笑)。

 身分証明証の提示がなかったので、「ジロ見」していたのですが、しつこかったので、どうも本物のようでした。「視聴者の皆様は、受信料債務を抱えた債務者です」と対応するように教育されているのでしょうか、笑顔もなく怖かったです(変なヒトだったし)。

 幸か、不幸か、ちょうどテレビが故障中だったので、一旦、お引取り頂いたのですが、こんなやりとりをしました。

  • 「テレビはありますか?」→「あるけど、故障中です」
    B-CASカード回りの不具合らしく、テレビ放送は見れませんが、インタネット回りは問題く、U-NEXTやAmazon TV StickやChromecastは使えます。
  • 「どうやってテレビを見ているのですか?」→「インタネットで見ています」
  • 「インタネットで見ていても、パソコンで見ていても、必要です」→「インタネットで見ています」
     テレビと言っても、放送は映らないので、もっぱら、AmazonビデオやU-NEXT、BBC・NHKのインタネット放送などのインタネット放送だったのです。NHK World TVを見ているというと、強引に居座りそうだったので、これについては沈黙を守りました。
  • 「ワンセグ携帯見ていても、必要です」→「今使っているのはiPhone。ワンセグついていません」
     使っていないワンセグ携帯も、持っているけど、契約が必要とは思えないので、ワンセグ携帯を持っていること自体、明かしませんでした。

 どこの勧誘員も、基本的に歩合制なので、頑張りすぎてしまうところがあって、いろいろ不都合な事実は告知しないことがほとんど。その場で契約しないことが基本的な対応ですので、今回も同様に対応しました。

初めてのNHK

 大昔に、生まれて初めてのNHKの訪問員の方が来られたときに、NHKは映らない(当時は深夜時間帯には放送がなかったので、家に帰ったときには映っていない)と、ちょっとゴネたら、すぐに「放送法」の小さなビラを出してきて、なかば脅迫的に契約を迫ってきたので、逆ギレしてしまいました。「白黒契約でもいいから契約して」というダンピングも勝手にやっていたので、さらに逆ギレに拍車がかかりました。若かったです。

 そのときに、きっちり放送法・NHK受信契約関連の調査をしました。二度目の訪問には菓子折りを持ってきましたが、丁寧にお断りした上で、NHKの問題点・改善案を上げて、最終的には、「契約内容に同意できないので、契約できない」ということで、受信契約を行いませんでした。

 当時は、NHKは裁判を起こすことはなかったので、「契約の自由」(民法)と「契約の義務」(放送法)のどちらが優位であるかを争点とした司法判断はありませんでした(今は判例があるようです)。

 今回の対応でも、そのとき調べたいろいろな知識が役に立ちました。

NHKコールセンターとの質疑応答

 さて、今回の訪問での疑問点としては、以下の2点がありました。

(1) インタネット視聴でも、契約は必要か?
(2) ワンセグ携帯を持っているだけでも、契約は必要か?

 早速、NHKふれあいセンターに電話して聞いてみました。

(1) インタネット視聴でも、契約は必要か?

 ・ NHKの放送をみるのでなければ、不要。
 ・ (TVerなどの)民放を見るだけなら不要。
 ・ (Amazonビデオ、U-NEXTなどの)ビデオ・オン・デマンドを見るのなら不要。
 このあたりは、すぐに回答を頂きました。他社が提供しているサービスに対して、NHKが契約を求めるのは明らかにおかしいので、当たり前といえば当たり前ですね。
 ・ NHKオンデマンドを見るのも不要
  そもそも有料サービスですから、二重取りになってしまいます。
 ・ 「NHK ワールドTV」も、不要。
 これには、即答できず。そもそも「NHKワールドTV」が何か知らなかったようです。少し調べてからの回答で、これも不要。

 NHKワールドTVは、NHKの海外向けの無料放送で、同じ内容をインタネットにライブ配信しています。

NHKワールド: よくあるご質問(FAQ)
直接受信するには、直径2.5~6mのパラボラアンテナと専用のデジタルチューナーが必要です。映像にスクランブルはかかっていません。無料で受信できます。

 この海外向け国際放送はインタネットにも配信しているので、パソコンやスマホで簡単に見ることができます。放送法及びNHK受信規約上は、NHKのインタネット放送を受信できる装置を設置している人は、契約義務があります(詳細は補足参照)。つまり、放送法上は、パソコンを家に置いておいて(設置して)、ネットにつないでいる人は契約義務があるように読めますが、NHKワールドTVは契約は不要だろうということで、念の為の確認でした。

(2) ワンセグ携帯を持っていると、契約は必要か?

  • ワンセグ携帯を持っていると、契約は必要か?
    回答:「携帯でも、ワンセグが見られれば、契約は必要」

 これは、NHKのホームページのFAQに出ている公式見解の内容とほぼ同じ。

NHKよくある質問集:パソコンや携帯電話(ワンセグを含む)で放送を見る場合の受信料は必要か*2
Q. パソコンや携帯電話(ワンセグ含む)で放送を見る場合の受信料は必要か?
A. NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第64条によって規定されている「協会の放送を受信することのできる受信設備」であり、受信契約の対象となります。NHKのワンセグが受信できる機器についても同様です。

  • 使っていないワンセグ携帯を持っているだけでも必要か?
    回答:「ワンセグ機能があれば、使っていない携帯電話でも、NHKとの契約が必要」

  • SIMカードを入れていないので、ワンセグが使えない携帯電話でも必要か?
    回答:ワンセグが使えないのあれば、契約不要。

  • 現在スマホに入れているSIMカードを、今は使っていないワンセグ携帯に入れ直せば、また使える状態に簡単に戻る。普段は、スマホにSIMカードを入れているのでワンセグを見ることはできません。このような場合にも契約は必要か?
    回答: 「契約しなくてもいいようです」(ちょっと自信なさげ)
     この質問には、回答を保留して、少し待ってからの回答でした。上司に判断を仰いでいたのでしょう。

 ついでに、苦情というかお願いをしておきました(これについては、地域担当の窓口に言ってくれということで、電話は掛け直し)。

  • マンションの管理組合の許可を得た上でマンションの敷地内に入ること。
     高齢者や女性の一人暮らしも多いので、怪しい人には侵入してもらいたくはないのです。マンションは、新聞配達と電気・ガス・水道の検針などは除いて、関係者以外の立ち入りは禁止。当然、新聞などの勧誘員などの立ち入りは厳禁です(このために、立て看板を立ているようなもの)。NHKの勧誘員だからといって、不法に他人の土地に侵入して良いわけではありません。
  • 身分証を提示すること。名刺を渡すこと。
     身分証の提示もなく、名刺も渡してもらえませんでした。勧誘員に連絡するにも、苦情を申し立てるにも、どこの誰か知る必要があります。名刺を渡さないのは、NHKのみです。新聞の勧誘でさえ、名刺を置いていきます。
  • 事前に必要資料・契約書を提出すること。
     勧誘員が来てからでは契約書の内容を精査できないので、契約書は予め提示してもらう必要があります。契約書面を見ないで、押印することは通常あり得ません。提示を要求しても渡さないのはさらにあり得ません。全く信用できません。
  • 事前に訪問日の予定を示すこと。
     まともな民間の会社であれば、事前連絡やアポイントをとってから訪問にいらっしゃいます。いきなり来るのは、NHKと新聞の勧誘ぐらい。訪問販売は迷惑です。
     契約することと、訪問販売は別のこと。家電量販店や街角で、「NHK放送の契約をお願いします」とかやっているところを見たことがない。民間であれば、あれやこれやと、努力しています。訪問販売だけが手段ではないはずです。引っ越し時にも、電気・ガス・水道の案内はありましたが、NHKは案内が届いていない。少なくとも、最低限の努力はしてほしいです。
  • 普通に考えれば、スクランブルをかければよいこと。なぜ、スクランブルをかけないのか?
     アナログ時代には技術的に困難でしたが、デジタル化されたので、スクランブルは容易に可能になりました。いろいろ議論はあるようですが、スクランブルをかければ、今のような訪問販売というレガシーな方法で脅迫的に受信契約を強要させる必要はないはずです。きっと笑顔で訪問にきます(笑)。

 (追記) 捨てゼリフに「また来ますよ」と凄みを聞かせたNHK勧誘員は、その後、来ることはありませんでした。NHKにチクったわけなので、逆切れされたりすると嫌でしたけど、大丈夫でした。

教訓

 うっかりワンセグ携帯持っていますとか、NHKワールドTVを見ていますと回答していたら、NHKの押し売りをされるところでした。

 NHKの勧誘員の言うことを、信用してはいけません。


教訓2

 今回の判例からすれば、NHKも信用してはいけません。

(2016/9/8)

関連記事

補足:NHKワールドTVに受信契約は必要か?

放送法第64条第1項には、以下の規定があります。

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

ここで、「放送」は、放送法第2条第1項で定義されています。

「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。(一部省略)

「電気通信の送信」の意味が分かりづらいですが、NHK受信料制度等専門調査会第3回会合資料*3によれば、有線・無線を問わないということですので、インタネット経由の放送も含まれます。

  • 現行法の放送法: 放送とは「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」(「無線通信」は、無線のみ)
  • 改正後の放送法: 放送とは、「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信」(「電気通信」は、無線・有線を含む)

 NHKの海外向け国際放送(以下、NHKワールドTV)は、「協会の放送」ですので、放送法第2条第1項によりインタネット経由であっても「協会の放送」であること変わりはありません。従って、第64条第2項により、NHKワールドTVを受信することのできる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約しなければなりません。

 また、NHKの放送受信規約第1条第2項には、以下の規定があります。

2 受信機(家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。以下同じ。)のうち、地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置(使用できる状態におくことをいう。以下同じ。)した者は地上契約、衛星系によるテレビジョン放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は衛星契約を締結しなければならない

 NHKワールドTVも衛星系によるテレビジョン放送(インタネットは、その再放送)です。NHK受信規約では、衛星系テレビジョン放送であるNHKワールドTVを除外してもよいという記載はありません。従って、NHKワールドTVについては、放送法・NHK受信規約上は受信契約契約をしなければならないと解釈できます。

 実際には、NHK受信規約の衛星契約はBS放送などを想定しているので、NHKワールドTVについては、NHK受信規約には規定されずに、未規定となっているといったところでしょうか?放送法、あるいは、NHK受信規約のいずれかに、現在インタネット放送しているNHKワールドTVを除外する規定を入れなければならないでしょう。そうでなければ、(NHKワールドTVの視聴の有無に係らず)パソコン設置者はNHKと衛星契約をしなければならないということになってしまいます(見落としがあるかもしれませんが、それを否定する規定が見つかりませんでした)。

ワンセグ裁判判決文 (追記:2016/11/1)

 ワンセグ裁判の判決文がありました。

ワンセグ裁判判決文(NHKから国民を守る党, 2016/8/29)

 論点は、「設置」に「携帯」の概念が含まれるかということです。NHKの弁護士さんは、よく調べて、論理を構成をしています。但し、素人目でも、単なる屁理屈。単純に、素人vsNHKの口喧嘩であれば、NHKの屁理屈に言い負けてしまいそうですけど、口喧嘩の間に入って裁判官が、「君のいうことは屁理屈だよ」と適切な仲裁をしていると感じました。頭でっかちで負けを認めたくないNHKくんは、我儘いって、自分は正しいんだと、控訴したようです。

 上級審で判決が逆転する可能性は非常に少ないと思いますが、どうなんでしょうね。

 下記のYouTube映像を見ると、ほとんどの自治体・国の機関がワンセグ携帯を契約していないとのこと。私は正しいと主張しているNHKくん、全部徴収すれば、1000億円単位の増収になるのでは?まずは、ワンセグだけしか持っていないような学生さんから徴収するのではなく、法人営業を頑張るべきではないですかね?1000億円の増収であれば、1-2割ぐらいの値引き原資が生まれます。


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