時事随想

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【NHK】ワンセグ携帯に受信契約の必要あり?ー水戸地裁判決ー

1. 水戸地裁の判決:「携帯」は「設置」に含まれる

ワンセグ付携帯電話についてNHKとの受信契約が必要があるかどうか、水戸地裁で新たな司法判断が下されました*1

2016年8月のさいたま地裁の判決では、受信契約の必要はないということでしたが、今回は必要ありとの判決です。

争点は、基本的には、さいたま地裁の場合と同様で、放送法64条1項の「設置」に「携帯」が含まれるか否かでした。

放送法64条1項では、「協会の放送を受信できる受信設備を設置した者」はNHKと受信契約することを義務付けていますが、「携帯」もこの「設置」に該当するか否かということです。

さいたま地裁の判決では「設置」には「携帯」は含まれないとして、受信契約の必要性はないとの判断でしたが、水戸地裁では、「携帯」の概念も含まれるという解釈で、受信契約の必要はあるという判決でした。

判決理由で河田泰常裁判長は64条の「設置」は「放送を受信することのできる受信設備を使用できる状態におくことをいう」と指摘。「一般的にいう『携帯』の概念をも包含すると解するのが相当」として、男性の主張を退けた。(日経新聞)

2. 判決のポイント

ワンセグ裁判については、さいたま地裁判決の際に記事にまとめましたが、この中で逆転敗訴の可能性について言及しました。

 今回の判決はNHK敗訴でしたが、判決文を読む限りでは、今後のワンセグ裁判で、NHK勝訴となる可能性もありそうです。

 争点となりそうなポイントは、法解釈の安定性です。

●一般的な法解釈として、「設置」の概念に、「携帯」を含むと解釈できること。
●放送法のH21/H22改正で「携帯」の用語が導入されたが、それ以前の放送法64条に基づく放送受信規約では、長年、携帯用受信機も含まれ、ポータブルテレビの時代から契約対象と解釈されていたこと。
●総務大臣及び総務省も、携帯用受信機(ポータブルテレビ・ワンセグ携帯)を受信契約の対象と解釈してきたこと。

 法解釈は安定的であるべきという観点からすれば、H21/H22改正で、放送法2条14号に「携帯」の用語が導入されても、従来通り放送法64条の「設置」の概念には「携帯」が含まれると解釈すべき、という考えもあると思います。
引用:【NHK】ワンセグ携帯で受信契約は必要か?-ワンセグ受信料裁判- - 時事随想

 判決文は手元にありませんが、立花氏の動画*2を見る限りでは、以下のポイントで判決がなされているようです。

  • 「設置」に「移動体」なども含まれる法律もあり、「設置」に「携帯」が含まれるか否かは、一般用語として判断すべきではなく、法律の成立経緯や主旨などを考慮して判断されるべきである。
  • 昭和25年(1950年)放送法制定当時に既に携帯ラジオが存在していたが、「設置」の用語が使われていること。
    放送法の「設置」は戦前の無線電信法に使われている「施設」の置き換えであるが、無線電信法では携帯無線機についても「施設」として取り扱っているため、「設置」には「携帯」の概念が含まれると考えられる。また、放送法制定時の参議院における質疑からも携帯機器を含むことは明らかである。
  • H21/H22の法改正で「携帯」の用語が導入されたが、第64条1項の「設置」については議論されておらず、「設置」が「携帯」を含んだ概念のまま継続していると考えられる。
     (筆者注:H21/H22年法改正で「携帯」の用語が導入された第2条14号は、所謂マルチメディア放送のための条項。マルチメディア放送としては、NOTTVが有名。)

 個人的な感想としては、さいたま地裁の判決よりは、水戸地裁の判決の方が論理的に整合性が取れているように思います。さいたま地裁の判決は、H21/H22の法改正(第2条14号)で「携帯」の用語が導入され、「携帯」と「設置」が区別されたので、(自動的に)第64条1項の「設置」の概念から「携帯」の概念がなくなるという解釈かと思いますが、少し無理があるようです。

3. 今後

 ワンセグ裁判は、これ以外にもいくつもあるようですが、今回の水戸地裁判決がスタンダードな判決になるのではないかと予想しています。

 ワンセグ携帯のテレビは、携帯電話のオマケ機能です。テレビ視聴が目的の地デジ放送と同じ料金体系というのは、納得感がありません(そもそも、NHKを見ない人には、地デジだろうがワンセグだろうがそもそも納得感はありませんが)。放送法の改正でワンセグ携帯の取扱いを明示する、NHK放送受信規約で安い受信料を設定する、ラジオと同様に受信契約免除とするなど、ワンセグ携帯のようなオマケテレビに対する対策は必要ではないでしょうか。

 現行のNHK受信規約が世帯という概念で受信契約が規定されています。テレビや端末を複数所有したり、世帯の在り方も変わっているので、契約単位は世帯単位から視聴端末単位の契約に変更する必要があると思っています。そうすれば、携帯端末単位の課金やB-CASカード単位の課金が可能となります。携帯電話の場合は、NHK受信機能をONにした場合には、受信料を電話料金と一緒に徴収するという仕組みにすれば、変で怖い人たちと顔を合わせなくて済みます(笑)。
 全世帯の契約について一斉に変更することは難しいと思いますが、端末単位の課金は、ワンセグ携帯には導入しやすい制度でしょう。

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(2017/6/14)

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