時事随想

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ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【森友事件】豊中市は国有地を不正に格安入手したのか?

 森友学園の国有地売却に関連して、豊中市が公園用地を実質2000万円で格安入手したことが問題であるという意見が散見されます。

 この問題について、twitterに投稿しましたが、その投稿を元に記事をまとめます。

1. 豊中市は国有地を実質2000万円で取得した?

 豊中市は国有地を約14億円で購入し、約14億円の補助金を交付されます。その差額は約2000万円です。豊中市の国有地入手に際し、森友事件と同様に政治関与があるのではないかと指摘される所以です。

 本当に問題があったのでしょうか?

 豊中市が得た補助金は、次の2つです。

 ① 住宅市街地総合整備事業の国庫補助金:7億1193万円
 ② 地域活性化・公共投資臨時交付金:6億9069円

 国有地の購入額は14億2386万円、補助金を引くと、2124万円で国有地を入手したことになります。


森友・国有地払下げ不正の構造

小川 敏夫
(緑風出版, 2018)

2. 住宅市街地総合整備事業の国庫補助金

 資料:国土交通省「住宅市街地総合整備事業」

 公園事業なので、補助対象の「⑦関連公共施設整備(道路、都市公園、下水道、河川等)」に該当します。補助率は「通常事業の補助率に準ずる」とありますが、補助金額からすれば1/2の補助が得られたということでしょう。

 公園という事業内容からすると、申請すれば承認される補助金と考えられます。

3. 地域活性化・公共投資臨時交付金

資料:首相官邸「地域活性化・公共投資臨時交付金の概要」

 リーマンショック後の経済対策として、自民党政権時代(2009年4月10日)に決めた2009年度補正予算の交付金です。予算1兆3790億円、国民一人当り約1万円。「兎に角、金出すから使え」というようにばら撒いたお金でしょう。豊中市人口が約40万人なので、人口比で言えば、40億円程度の補助金を取りに行けます。理由が付けば、約7億円程度の補助金は簡単に承認が得られるでしょう。

さて、上記の資料によれば、

  • 「交付方法:実施計画に掲載された事業のうち国庫補助事業の地方負担分と地方単独事業の所要経費の合計額に対し、交付限度額を上限として交付金を交付」
     交付限度額以内であれば、地方負担分を全額補助するという内容のようです。
  • 「使途:建設地方債対象事業」
     総務省の資料を見ると、公園事業は対象事業です。

 この交付基準からすれば、豊中市の公園事業では、①の住宅市街地総合整備事業の補助金を除いた豊中市負担分のほぼ全額を②の臨時交付金で負担してもらえるということになりそうです。実際に、約2000万円を除き、残りの全額は、臨時交付金で交付されています。

4. 特例的な補助金交付か?

 公共性が高い事業・リーマンショック後の経済対策ということもあり、豊中市への補助金交付は、特例的な交付金給付というわけではないようです。

 寧ろ、リーマンショックの経済対策として、公共投資(1兆3790億円)と経済危機対策(1兆円)の二つの臨時交付金で2.4兆円近くの補助金がバラまかれたことの方が異例です。

 森友学園の場合、民間の小学校建設という事業内容で2016年度売却ということを考慮すると、いずれの交付金も得られなかったと思います。

 一方、豊中市の公園事業に対して二つの補助金を両方とも交付することは、交付基準に適合していると考えれます。

5. 最後に

 結論をいうと、豊中市への補助金交付は、特例的な交付であったとは考えられません。

 森友側の用地を加えても、二つの補助金は取得できたと思います。臨時交付金は2009年度限りですので、森友側の用地を含めて、格安購入しなかったことは、ある意味、豊中市のチョンボです。

(2018/4/3)

【スクープ】これが「責任者」であった僕が総力をあげて取材した森友学園問題の真相だ! 【橋下徹の「問題解決の授業」Vol.48】 Kindle版

橋下 徹
(プレジデント社, 2017)


追及力 権力の暴走を食い止める

望月衣塑子, 森ゆうこ
(光文社新書, 2018)

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