時事随想

時事随想

ニュースや新聞を見て、想ったことを綴った随想・論説集

【NHK】サラ金からの卒業(1):税務署が受信料徴収?

 前回は、「【NHK】受信料義務化で国内最大のサラ金へ?」という記事を書きましたが、今回は、その逆。NHKのサラ金からの卒業です。受信料義務化と税務署への受信料徴収の委託により、NHKがサラ金のような取立てを集金人に委託しなくて済む方法について説明したいと思います。

1. NHKによるサラ金なみの受信料徴収

 前回記事で、NHKがサラ金であるとしているのは、NHK集金人が、サラ金のような取立て(受信料徴収)を行うためです。NHKには貸金業法が適用されないので、貸金業法で禁止されているような取立て(受信料徴収)を行っても、合法です。このため、昔のサラ金のように厳しい取立てが行うことが可能で、実際に行っています。このため、多くの視聴者がNHK集金人への恐怖から、受信契約を行うことになっています。

 昔の集金人は悪質な人は少なかったそうですが、1年ほど前に、私が出会ったNHK集金人も、確かに恐怖を感じるような集金人でした。

 基本的には、このような集金人を使わずに済む方法で受信料を徴収すればよいのですが、普通に考えれば、単純にNHKの放送にスクランブル化すればよいだけで、法改正は不要です(NHKの受信契約規約の変更もたぶん不要)。しかし、何故か、NHKはスクランブル化に及び腰。NHKは良質な番組を作っているので、スクランブル化によって増収も期待できるはずなのですが、不思議です。視聴者の満足が得られない悪い番組を作っていると、NHK自ら思っているのであれば、スクランブル化を嫌がることは理解できます。

2. 1950年と現在のテレビ普及率

 放送法が制定された1950年は、NHKがテレビ放送を開始した年であり、民放はその3年後の1953年にテレビ放送を開始します。テレビ放送が始まった当初のテレビ普及率は非常に低く、高度経済成長期に急速に普及し、1980年にはほとんどの世帯にテレビがあるという状態になりました*1。現在では、単身世帯で92%、そうでない場合で98%の普及率となっています*2

 テレビ放送が始まった当初、どのように受信料を徴収していたのかは知りませんが、少なくとも、テレビが普及していく段階でテレビがある家庭とテレビがない家庭が混在することになります。昔はスクランブル技術はありませんでしたから、各家庭を訪問して、テレビの有無を確認することが必要で、集金人による受信料徴収モデルが出来上がったのではないかと思います。

 ほとんどの家庭でテレビが普及し、スクランブル技術が開発されている現在では、このような受信料徴収モデルは時代遅れで非効率な方法となっています。また、トラブルが多発する原因でもあります。

3. 受信料徴収の税務署への委託

 さて、集金人を使わない方法としては、スクランブル化する方法が受益者負担の観点からも最も適切な受信料徴収モデルですが、なぜか、適用しないので、別の受信料徴収モデルを考えます。

 ここでは、ほとんどの世帯にテレビがあると仮定して、全ての世帯からまず受信料を徴収し、テレビがない世帯に返金するという受信料徴収モデルで徴収していくことを考えます。

 まず、受信料徴収業務は税務署に委託し、強制的に税務署により受信料を徴収します(年金受給者は、年金から天引き)。税務署に徴収業務を委託するといっても、税務署に家庭訪問をさせるわけにはいかないので、従来の受信契約というステップをなくし、受信料徴収の条件を以下のように変更します。

  • テレビ設置に無関係に世帯毎に徴収(全ての世帯でまずは一律に徴収)
    • 課税対象者が受信料を支払う。
    • 世帯に課税対象者が複数いる場合、支払義務者を決める。
    • 支払義務者は、課税対象者の中から選ばれるので、学生の単身世帯などは自動的に支払免除。
  • 義務契約は地上波の公共放送番組のみ
    • 義務契約は、地上波の公共放送番組のみ(強制徴収される受信料はここ)。
    • 公共放送として必要性がない娯楽番組・スポーツ番組等は任意契約(有料放送)。
    • BS契約は任意契約(有料放送)。
    • 有料放送に関しては、NHKに申請して別途契約。
  • テレビがない世帯、現行の受信料免除世帯、非課税世帯等は、受信料を免除する。
    • 税務署の課税情報をNHKが使うことができるのであれば、非課税世帯などは自動的に免除判定することが可能。また、累進性がある受信料体系も可能。
  • NHKの放送はスクランブル化する。
    • 視聴を希望する視聴者は、スクランブル解除をNHKに申請する。
    • NHKは受信料支払を確認し、申請されたテレビのスクランブルを解除。
       税務署による受信料徴収の確認には、マイナンバーを用いる?
  • 免除対象となる世帯は、NHKへ免除申請する。
    • NHKが免除の適否を確認する。
    • 確認がとれれば、徴収した受信料を返還する。
       免除でも、一旦徴収されたものを返還する形となる。
  • 法人契約は従来通りの方法で徴収する。

 但し、上記であげた方法では、テレビがないと虚偽申請し、受信料を返還してもらうことで、NHK受信料支払わないで済む民放だけを見られるテレビを作ることができます。虚偽申請による不正返還に罰則を設ければ、不正返還はほとんどなくなるのではないかと思います(特段の罰則を設けなくても、虚偽申請は詐欺罪となるので、刑事罰を科すことは可能です)。

 この抜け道を罰則ではなく、技術的に防ぐのであれば、民放もスクランブル化し、NHKの視聴の可否と民放の視聴の可否を連動させる必要があります。この場合、市販のテレビは、購入段階では、NHK・民放のすべてがスクランブル化された状態となります。NHKへのテレビ登録により、スクランブルが解除されて、初めてテレビの視聴が可能となります。この方法は、NHKという特殊な法人のために、民放の営業が阻害されてしまうので、適切な方法とは言えないかもしれません。

 この受信料徴収モデルでは、NHKが視聴者宅に訪問することは基本的になく、スクランブル解除や免除申請をする視聴者側がNHKに赴くというように、人の流れは逆方向になり、トラブルの原因である集金人を使う必要はありません。サラ金から卒業です。

4. 受信料の引き下げ

 システム変更に伴う初期投資が100億円単位で発生しますが、その後の徴収コストは、現状の700億円の10分の1以下になるのではないかと思います。また、徴収率が100%近い値になることを考慮すると、現行よりも20%から30%程度値下げができるのではないかと思います。

 但し、この方法でも、NHKを見ていない人にとっては、やはり受益者負担の原則から外れ、不満が残る結果となりますが、強制徴収される公共放送番組部分の料金設定を低く抑えれば、多少は不満感を軽減することができるのではないかと思います。

5. その他の影響

 徴収した受信料がNHK特別会計のような取り扱いになると、実質的にNHK税になります。NHKに受信料の徴収能力がなくなるので、国への依存が強まり国営放送的な色合いが、現状よりもさらに濃くなる可能性があります。

 また、現在は、受信料不払いにより、NHKに対し異議あることを意思表明することができます。しかし、ここで説明した受信料徴収モデルでは、NHKに安定収入を与えることになります。このため、NHKは、これまで以上に、視聴者を無視し、好き勝手な放漫経営や政府寄りの公平性に欠ける報道を行う可能性があります。

 視聴者が、NHKを監視し、異議申し立てを行うことができる強力なメカニズムを設けることが必要です。

 最低限でも、NHK会長や経営委員の信任投票の制度はあるべきです(データ放送のボタンをポッチとすれば、簡単に投票できます。現在でも導入すべきですね)。

 まずは、受信料義務化の前に、視聴者による監視メカニズムを設けるように法改正を行い、次の段階で、受信料の義務化という順番でしょうね。

(2016/11/1)

関連記事

Copyright © Tenyu Toranosuke. 時事随想 All Rights Rreserved.