時事随想

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自民党憲法草案を読み解く(2) : 第4章~第11章

「自民党憲法草案を読み解く(1):第1章~第3章」からの続きです。今回は、後半の第4章(国会)~第11章(最高法規)を読んでいきます。主に国政の制度に関する規定です。

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第四章 国会

第41条 (国会と立法権)

現行憲法自民党草案
 
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
(国会と立法権)
第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

【初見】実質的な変更なし。

第42条 (両議院)

現行憲法自民党草案
 
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
(両議院)
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

【初見】 初見:実質的な変更なし。

【自民党Q&A】
Q24:一院制を採用すべきとの議論は、なかったのですか?

 一院制を採用すべきか否かは、今回の草案の作成過程で最も大きな議論のあったテーマであり、党内論議では、「一院制を採用すべき」との意見が多く 出されたところです
 
 しかしながら、今回の草案は、サンフランシスコ平和条約発効 60 周年を機に、自主憲法に値する憲法草案を策定することを目的に、飽くまでも、平成 17 年の「新憲法草案」を土台として、その見直しを行うものです。一院制の導入の具体化には、詳細な制度設計を踏まえた慎重な議論が必要ですが、今回の作業の中でそれを行うのは困難であり、党内での合意形成の手続がなお必要と考えました。
 
 このため、今回の草案では、平成 17 年の「新憲法草案」を引き継ぎ、二院制を維持していますが、今後、二院制の在り方を検討する中で、一院制についても検討することとしました

【所感】一院制にしたいのかぁ...。衆院と参院とのねじれが発生しないようにしたいという問題意識でしょうか。政権と国会が独立していればいいのかもしれないけど、現状だと、政権と衆院与党は一体で、三権分立ではなく、ニ権分立状態ですよね。衆参の捻じれは、三権分立を保障する役割としての参院が機能しているともいえるのですが、悪い面だけがでてしまっているということでしょうかね。

第43条 (両院の組織)

現行憲法自民党草案
 
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
(両院の組織)
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律で定める。

【初見】実質的な変更なし。

第44条 (議員及び選挙人の資格)

現行憲法自民党草案
 
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
(議員及び選挙人の資格)
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

【初見】障害の有無を追加。

【自民党Q&A】
Q27:その他、国会に関して、どのような規定を置いたのですか?

(44 条 議員及び選挙人の資格)
 44 条は、両議院の議員及びその選挙人の資格に関する規定です。今回の草案では、14 条の法の下の平等の規定に合わせて、差別の禁止項目に、「障害の有無」を加えました。

第45条 (衆議院の任期)

現行憲法自民党草案
 
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
(衆議院の任期)
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。

【初見】実質的な変更なし。

第46条 (参議院議員の任期)

現行憲法自民党草案
 
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
(参議院議員の任期)
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

【初見】変更なし。

第47条 (選挙に関する事項)

現行憲法自民党草案
 
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
(選挙に関する事項)
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。

【初見】追加事項で、行政区画などを勘案するということなので、2県に跨るような選挙区(参議院の鳥取・島根、徳島・高知) ((ウィキペディア, 「参議院議員通常選挙」, https://ja.wikipedia.org/wiki/参議院議員通常選挙.))はなくなり、1票の格差は拡大しそうです。

【自民党Q&A】
Q26:国会議員の選挙制度に関する規定を変えたのは、なぜですか?

 47 条(選挙に関する事項)に後段を設け、「この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない」と、規定しました。これは最近、一票の格差について違憲状態にあるとの最高裁判所の判決が続いていることに鑑み、選挙区は、単に人口のみによって決められるものではないことを、明示したものです。ただし、この規定も飽くまで「人口を基本と」することとし、一票の格差の是正をする必要がないとしたものではありません。選挙区を置けば必ず格差は生ずるので、それには一定の許容範囲があることを念のため規定したに過ぎません
 
 なお、この規定は、衆議院議員選挙区画定審議会設置法 3 条の規定を参考にして加えたものであり、現行法制を踏まえたものです。
 
(参考)衆議院議員選挙区画定審議会設置法
第 3 条 前条の規定による改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口(官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口をいう。以下同じ。)のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が 2 以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。

第48条 (両議院議員兼職の禁止)

現行憲法自民党草案
 
第四十八条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
(両議院議員兼職の禁止)
第四十八条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

【初見】実質的な変更なし。

第49条 (議員の歳費)

現行憲法自民党草案
 
第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
(議員の歳費)
第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

【初見】変更なし。

第50条 (議員の不逮捕特権)

現行憲法自民党草案
 
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
(議員の不逮捕特権)
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。

【初見】実質的な変更なし。

第51条 (議員の免責特権)

現行憲法自民党草案
 
第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない
(議員の免責特権)
第五十一条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない

【初見】実質的な変更なし。

第52条 (通常国会)

現行憲法自民党草案
 
第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。      
(通常国会)
第五十二条 通常国会は、毎年一回召集される
2 通常国会の会期は、法律で定める。

【初見】会期を法律で定めることを規定する項を追加。

第53条 (臨時国会)

現行憲法自民党草案
 
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
(臨時国会)
第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。

【初見】最近だと、安倍首相が臨時国会を20日以内に臨時国会を召集しませんでした((ウィキペディア, 「臨時会」, https://ja.wikipedia.org/wiki/臨時会))。

【自民党Q&A】
Q27:その他、国会に関して、どのような規定を置いたのですか?

(52 条 通常国会・53 条 臨時国会)
 52 条は、通常国会についての規定です。今回の草案では、同条に 2 項を設け、通常国会の会期を「法律で定める」と規定しました。会期の延長については、特に規定を置きませんでしたが、これも法律委任の中に含まれると解しています。
 
 53 条は、臨時国会についての規定です。現行憲法では、いずれかの議院の総議員の 4分の 1 以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないことになっていますが、臨時国会の召集期限については規定がなかったので、今回の草案では、「要求があった日から 20 日以内に臨時国会が召集されなければならない」と、規定しました。党内議論の中では、「少数会派の乱用が心配ではないか」との意見もありましたが、「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である」という意見が、大勢でした。

第54条 (衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別国会及び参議院の緊急集会)

現行憲法自民党草案
 
【新設】
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ
(衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別国会及び参議院の緊急集会)
第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。
2 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない。
3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う

【初見】草案第6条4のコメントにも書きましたが、内閣総理大臣に衆議院の解散権を与えるかは、議論の余地があるところ。
 時の政権(さらに、そのうちの一人の人物)の都合の良いときに、いつでも解散してもよいというのには抵抗があります。首相がコロコロ変わり、国際的にも国内的にも「日本の首相って誰だっけ?」という状態になる要因の一つでもあり、国益にもかなわないでしょう。アメリカやロシア(ソ連)は、50年以上前の大統領(書記長を含む)から諳んじられますが、日本の首相は10年前からでもできません。
 解散は重要事項なので、総理大臣が発議し、議会の承認(例えば、過半数や3分の2の賛成)を得るというような手続きが必要と思います。

第55条 (議員の資格審査)

現行憲法自民党草案
 
第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
(議員の資格審査)
第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

【初見】実質的な変更なし。

第56条 (表決及び定足数)

現行憲法自民党草案
 
第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(表決及び定足数)
第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。

【初見】実質的な変更なし。

【自民党Q&A】
Q27:その他、国会に関して、どのような規定を置いたのですか?

(56 条 表決及び定足数)
 現行憲法 56 条 1 項は、両議院の本会議の定足数についての規定で、「両議院は、各々その総議員の 3 分の 1 以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とされています。今回の草案では、この定足数を議決だけの要件とするため、56 条 2 項で、「両議院の議決は、各々その総議員の 3 分の 1 以上の出席がなければすることができない」と規定しました。

【所感】「議事を開き」の削除を見落としました。現行憲法では、「議事・議決ともに3分の1が必要だった」が、草案では「議事は3分の1未満で開くことができる、議決は3分の1以上が必要」ということですかね。

第57条 (会議及び会議録の公開等)

現行憲法自民党草案
 
第五十七条 両議院の会議は、公開とする但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
(会議及び会議録の公開等)
第五十七条 両議院の会議は、公開しなければならないただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。

【初見】実質的な変更なし。

第58条 (役員の選任並びに議員規則及び懲罰)

現行憲法自民党草案
 
第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
(役員の選任並びに議員規則及び懲罰)
第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

【初見】実質的な変更なし。

第59 条 (法律案の議決及び衆議院の優越)

現行憲法自民党草案
 
第五十九条 法律案は、この憲法に特別ののある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
(法律案の議決及び衆議院の優越)
第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

【初見】実質的な変更なし。

【自民党Q&A】
Q25: 衆議院で法律案を再議決するのに必要な「3分の2」を緩和すべきとの議論は、なかったのですか?

 59 条 2 項では、参議院で否決された法律案を衆議院で再議決する場合には、出席議員の「3 分の 2」以上の賛成が必要としています。この再議決の要件を緩和するべきかどうか党内で議論がありましたが、最終的には変更しませんでした
 
 議論の中では、「3 分の 2 以上の賛成から引き下げて、ねじれ現象ができるだけ起きないようにすべきではないか。」という意見や、要件を「過半数とする。」という意見もありました。他方で、それでは「参議院の存在を否定するものだ。」という意見も多くありました。間を取って 10 分の 6 とする意見もありましたが、法令上議決権の規定で10 分の 6 というのも前例がなく、この部分の変更はしませんでした

【所感】「3分の2」をとったら、確かに参院はいりませんね。やはり、一院制の議論も、捻じれ現象を解消したいという問題意識のようです。

第60条 (予算案の議決等に関する衆議院の優越)

現行憲法自民党草案
 
第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
(予算案の議決等に関する衆議院の優越)
第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

【初見】実質的な変更なし。

第61条 (条約の承認に関する衆議院の優越)

現行憲法自民党草案
 
第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
(条約の承認に関する衆議院の優越)
第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

【初見】変更なし。

第62条 (議員の国政調査権)

現行憲法自民党草案
 
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
(議員の国政調査権)
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

【初見】実質的な変更なし。

第63条 (内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)

現行憲法自民党草案
 
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
(内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)
第六十三条 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。
2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。

【初見】大臣の国会の欠席について規定を追加。

【自民党Q&A】
Q27:その他、国会に関して、どのような規定を置いたのですか?
: (63 条 内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)
 現行憲法 63 条の後段で定められている、内閣総理大臣等の議院出席の義務を、同条2 項として規定し、「内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。」としました。
 
 このただし書は、出席義務の例外を定めたもので、現行憲法にはない規定です。特に外務大臣などは重要な外交日程があることが多く、国会に拘束されることで国益が損なわれないようにするという配慮から置いたものです。

第64条 (弾劾裁判所)

現行憲法自民党草案
 
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
(弾劾裁判所)
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

【初見】実質的な変更なし。

第64条2 (政党)

現行憲法自民党草案
【新設】
(政党)
第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、保障する。
3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

【初見】政党に関する新条項。

【自民党Q&A】
Q27:その他、国会に関して、どのような規定を置いたのですか?

(64 条の 2 政党)
 政党については、現行憲法に規定がなく、政党法も存在せず、法的根拠がないので、政治団体の一つとして整理されてきましたが、政党は現代の議会制民主主義にとって不可欠な要素となっていることから、憲法上位置付けたものです
 
 憲法にこうした規定を置くことにより、政党助成や政党法制定の根拠になると考えます。政党法の制定に当たっては、党内民主主義の確立、収支の公開などが焦点になるものと考えられます。

第五章 内閣

第65条 (内閣と行政権)

現行憲法自民党草案
 
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
(内閣と行政権)
第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

【初見】「特別の定め」の該当箇所が分かりませんでした。

【自民党Q&A】
Q29:草案 65 条の「この憲法に特別の定めのある場合を除き」とは、何を指しているのですか?

 草案 65 条で「この憲法に特別の定めのある場合を除き」としたのは、草案において、内閣総理大臣の「専権事項」として、次に掲げる 3 つの権限を設けたことに伴うものです
 
1 行政各部の指揮監督・総合調整権(72 条 1 項)
2 国防軍の最高指揮権(9 条の 2 第 1 項、72 条 3 項)
3 衆議院の解散の決定権(54 条 1 項)
 
 以上の 3 つの権限は、総理一人に属する権限であり、行政権が合議体としての内閣に 属することの例外となるものです。
 
 なお、現行憲法下においても、例えば次のような権限などは、広い意味での「行政作 用」に含まれる権限ではありますが、憲法上、明文規定をもって内閣以外の機関が行う こととされており、これについても、本条の「この憲法に特別の定めのある場合」に該 当することになります。
 
4 会計検査院による決算についての検査(90 条 1 項)
5 地方自治体の地方行政に係る権限(第 8 章・地方自治)

【所感】なるほど。解説が必要な内容ですね。

第66条 (内閣の構成及び国会に対する責任)

現行憲法自民党草案
 
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ
(内閣の構成及び国会に対する責任)
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する
2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う

【初見】

  • 「文民」(civilianの訳語)の定義が不明確なので、「現役の軍人ではない人」に定義変更したということでしょうか。
  • この規定だと、(任命の直前に退役した国会議員でない)退役軍人も大臣につけるということであり、実質的にほぼ現役の軍人が国防軍を統括する大臣(防衛大臣)に就任することが可能となります。いまのところ、現役軍人を大臣に就かせるという状況ではありませんが、一旦、戦争が始まれば、職業軍人を防衛大臣に就けた方がよいという意見もでてくるでしょう。
  • 退役軍人に大臣就任を開放するとしても、退役後10年以上であること、あるいは、国会議員であること、又は、その両方を満たすことなどの条件を付ける必要があるように思います。

第67条 (内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)

現行憲法自民党草案
 
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ
2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
(内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。
2 国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。

【初見】実質的な変更なし。

第68条 (国務大臣の任免)

現行憲法自民党草案
 
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
 
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
(国務大臣の任免)
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

【初見】実質的な変更なし。

第69条 (内閣の不信任と総辞職)

現行憲法自民党草案
 
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
(内閣の不信任と総辞職)
第六十九条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、 総辞職をしなければならない。

【初見】実質的な変更なし。

第70条 (内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職等)

現行憲法自民党草案
 
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
【新設】
(内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職等)
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。

【初見】

  • 内閣総理大臣が欠けたときの臨時代行の規定。臨時期間を指定する必要があるのでは?
  • 第2項の文章がこなれておらず、分かりにくいですね。無理に「~とき」で統一しているが良くないようです。 最初の「欠けたとき」と2番目の「法律で定めるとき」が並列関係にあるように見えてしまいますが、「欠けたとき」と「これに準ずる場合」が並列の関係にあるので、以下のような記述の方がよさそうです。
2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他法律で定めるこれに準ずる場合は、~
【自民党Q&A】
Q:内閣総理大臣の職務の臨時代行の規定を置いたのは、なぜですか?

 内閣総理大臣は、内閣の最高責任者として重大な権限を有し、今回の草案で、その権限を更に強化しています。
 
 そのような内閣総理大臣に不慮の事態が生じた場合に、「内閣総理大臣が欠けたとき」に該当するか否かを誰が判断して、内閣総辞職を決定するための閣議を誰が主宰するのか、ということが、現行憲法では規定が整備されていません。
 
 しかし、それでは危機管理上も問題があるのではないか、指定を受けた国務大臣が内閣総理大臣の職務を臨時代行する根拠は、やはり憲法上規定すべきではないか、との観点から、今回の草案の 70 条 2 項では、明文で「内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う」と規定しました。
 
 「内閣総理大臣が欠けたとき」とは、典型的には内閣総理大臣が死亡した場合、あるいは国会議員の資格を失ったときなどをいいます。「その他これに準ずる場合として法律で定めるとき」とは、具体的には、意識不明になったときや事故などに遭遇し生存が不明になったときなど、現職に復帰することがあり得るが、総理としての職務を一時的に全うできないような場合を想定しています

第71条 (総辞職後の内閣)

現行憲法自民党草案
 
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ
(総辞職後の内閣)
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う

【初見】実質的な変更なし。

第72条 (内閣総理大臣の職務)

現行憲法自民党草案
 
第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する
【新設】
 
【新設】
(内閣総理大臣の職務)
第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う
 
2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。

【初見】

  • 草案1項で、「総合調整」を追加した意図は良く分かりませんが、実質的な変更はない?
  • 草案3項は、国防軍の最高司令官の規定を追加。
【自民党Q&A】
Q28:内閣総理大臣の権限を強化したということですが、具体的には、どのような規定を置いたのですか?

 現行憲法では、行政権は、内閣総理大臣その他の国務大臣で組織する「内閣」に属するとされています。内閣総理大臣は、内閣の首長であり、国務大臣の任免権などを持っていますが、そのリーダーシップをより発揮できるよう、今回の草案では、内閣総理大臣が、内閣(閣議)に諮らないでも、自分一人で決定できる「専権事項」を、以下のとおり、3 つ設けました
 
1 行政各部の指揮監督・総合調整権
2 国防軍の最高指揮権
3 衆議院の解散の決定権
 
(1)行政各部の指揮監督・総合調整権
 現行憲法及び内閣法では、内閣総理大臣は、全て閣議にかけた方針に基づかなければ行政各部を指揮監督できないことになっていますが、今回の草案では、内閣総理大臣が単独で(閣議にかけなくても)、行政各部の指揮監督、総合調整ができると規定したところです。
(2)国防軍の最高指揮権
 72 条 3 項で、「内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する」と規定しました。内閣総理大臣が国防軍の最高指揮官であることは 9 条の 2 第 1 項にも規定しましたが、内閣総理大臣の職務としてこの条でも再整理したものです。内閣総理大臣は最高指揮官ですから、国防軍を動かす最終的な決定権は、防衛大臣ではなく、内閣総理大臣にあります。また、法律に特別の規定がない場合には、閣議にかけないで国防軍を指揮することができます。
 
(3)衆議院の解散の決定権
 54 条 1 項で、「衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する」と規定しました。かつて、解散を決定する閣議において閣僚が反対する場合に、その閣僚を罷免するという事例があったので、解散の決定は、閣議にかけず、内閣総理大臣が単独で決定できるようにしたものです。
 
 なお、この規定で「7 条解散(今回の草案では、条の移動により「6 条解散」になります)、すなわち内閣不信任案が可決された場合以外の解散について明示すべきだ。」という意見もありましたが、「それは憲法慣例に委ねるべきだ。」という意見が大勢であり、この規定に落ち着きました。

【所感】

  • 「行政各部の指揮監督・総合調整権」:具体的に問題の提示と、変更によりなぜ解決されるのか、示されていないので、良くなっているのか悪くなっているのかさっぱり理解できませんでした。
  • 「衆議院の解散の決定権」:内閣の同意を必要することは、総理大臣一人による身勝手な解散を抑止するという効果があるでのはないですかね。郵政解散((ウィキペディア, 「郵政解散」, https://ja.wikipedia.org/wiki/郵政解散.))のときに閣僚が罷免される事例がありましたが、それほどまでに問題がある解散であると閣僚が判断した上での反対なので、それをもって憲法変更の理由とするのは、如何なものかと思います。

第73条 (内閣の職務)

現行憲法自民党草案
 
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の、左の事務を行ふ
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
 
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
(内閣の職務)
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。ただし、事前に、やむを得ない場合は事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務をつかさどること。
五 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
六 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

【初見】実質的な変更なし。

第74条 (法律及び政令への署名)

現行憲法自民党草案
 
第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
(法律及び政令への署名)
第七十四条 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

【初見】実質的な変更なし。

第75条 (国務大臣の不訴追特権)

現行憲法自民党草案
 
第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
(国務大臣の不訴追特権)
第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。ただし、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない。

【初見】実質的な変更なし。

第六章 司法

第76条 (裁判所と司法権)

現行憲法自民党草案
 
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
(裁判所と司法権)
第七十六条 全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。
3 全て裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

【 初見】実質的な変更なし。

第77条 (最高裁判所の規則制定権)

現行憲法自民党草案
 
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
 
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
(最高裁判所の規則制定権)
第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

【 初見】「弁護士その他の裁判に関わる者」を追加。実務上は変更なし?

第78条 (裁判官の身分保障)

現行憲法自民党草案
 
第七十八条 裁判官は、裁判により心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
(裁判官の身分保障)
第七十八条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。

【 初見】「裁判」、「公の弾劾」の意味するところを明確化。実質的な変更なし。

  • 「次条第三項」: (第79条3)「前項の審査(注:最高裁判所裁判官国民審査)において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。」
  • 「第六十四条第一項」: (第64条1) 「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」

第79条 (最高裁判所の裁判官)

現行憲法自民党草案
 
第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、そのたる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
(最高裁判所の裁判官)
第七十九条 最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。
 
 
3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。
〔削除〕
4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
5 最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き減額できない。

【 初見】

  • 現行憲法第4項(審査に関する事項は法律で定める)を第2項に統合。これまで、具体的に記載されていた「任命後最初の衆議院選挙で審査される規定、十年ごとに審査される規定等」を削除。どういう影響があるかは不明。
  • 報酬の減額に関する規定を追加。
  • 参考:最高裁長官は、現行憲法第6条2項(草案第6条1項)に基づき、内閣の指名に基づいて、天皇が任命する。
【自民党Q&A】
Q30:裁判所と司法権に関して、どのような規定を置いたのですか?

(最高裁判所裁判官の国民審査について)
 現行憲法 79 条 2 項から 4 項までに、最高裁判所裁判官の国民審査に関する規定が置かれています。しかし、現在まで国民審査によって罷免された裁判官は 1 人もいないなど、その制度が形骸化しているという批判がありました。そこで、憲法改正草案では、国民審査の方法は憲法では定めず、法律で定めることとしました(79条 2 項)。国民審査を国民に分かりやすいものにするのは簡単ではありませんが、このように規定することで、立法上工夫の余地が出てくると考えます
 
(裁判官の報酬の減額について)
 現行憲法 79 条 6 項では、裁判官の報酬は在任中減額できないこととされています。しかし、最近のようにデフレ状態が続いて公務員の給与の引下げを行う場合に解釈上困難が生じていますし、また、懲戒の場合であっても報酬が減額できないという問題があります。こうしたことから、憲法改正草案では、79 条 5 項後段に「この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない」と規定し、解決を図りました

【所感】国民審査規定の変更の理由はあまりにもひどい。解決方法については何にも当てはないが、問題があるので、とりあえず変更します、ということですよね。自民党草案がこのレベルの考えしか持たず憲法変更を提案しているのであれば、この草案をなどすべて破棄してしまうべきではないか。本当にひどい。

第80条 (下級裁判所の裁判官)

現行憲法自民党草案
 
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
(下級裁判所の裁判官)
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。

【 初見】

  • 「任期10年」を「法律の定める任期」に変更。影響は不明。
  • 下級裁判所裁判官も、最高裁裁判官と同様に減額する規定を追加。

第81条 (法令審査権と最高裁判所)

現行憲法自民党草案
 
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
(法令審査権と最高裁判所)
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。

【 初見】実質的な変更なし。

第82条 (裁判の公開)

現行憲法自民党草案
 
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷これを行ふ
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
(裁判の公開)
第八十二条 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷行う
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。

【 初見】

  • 「対審」を「口頭弁論及び公判手続」に変更。
  • 「対審」(口頭弁論)に加えて、「公判手続」も公開するように変更していると思われるが、現状の裁判の運用からの変更はない?

第七章 財政

第83条 (財政の基本原則)

現行憲法自民党草案
 
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
【新設】
(財政の基本原則)
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。

【 初見】「財政の健全性」を追加。現状は草案83条2項違反です(苦笑)。

【自民党Q&A】
Q32:財政に関して、どのような規定を置いたのですか?
: (財政健全主義の規定)
 83 条に新しく 2 項を加えて、「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない」とし、財政の健全性を初めて憲法上の価値として規定しました。具体的な健全性の基準は、わが党がかつて提出した「財政健全化責任法案」のような法律で規定することになります。

第84条 (租税法律主義)

現行憲法自民党草案
 
第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
(租税法律主義)
第八十四条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。

【 初見】実質的な変更なし。

第85条 (国費の支出及び国の債務負担)

現行憲法自民党草案
 
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
(国費の支出及び国の債務負担)
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

【 初見】実質的な変更なし。

第86条 (予算)

現行憲法自民党草案
 
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
【新設】
 
 
【新設】
 
 
 
【新設】
(予算)
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。
3 内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
4 毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。

【 初見】

  • 追加する草案第2項から第4項は、現状追認するものでしょう。
    • 2項、3項は、「補正予算」・「暫定予算」の規定を追加。
    • 4項は、予算の「単年度主義」を緩和し、「複数年度の支出」を可能とする変更。
    • 本来、補正予算はその年度内に支出されるべきものですが、年度が迫ってからの予算編成なので、次年度に繰り越されることが多いようです。これを明示的に合憲化するべきかは議論の余地があるでしょう。
    • この変更は、財政規律の乱れにお墨付きを与えることになります。
  • 複数年度に亘るプロジェクトに単年度予算は向きません。その視点からの「複数年度の支出」も検討した方がよいかもしれません。
  • 複数年度に亘る比較的長い期間・大きい規模の予算バッファーを設けて、「単年度決算は厳密に赤字を出さず」、不測の事態には、この予算バッファーから補正予算・暫定予算をやり繰りするということはできないのですかね。予算バッファーが維持されることを保証する強い枠組みがないと、直ぐに予算バッファーを使い切って、元に戻ってしまいそうですが。そうならないように、その強い枠組みを憲法で規定すると。
【自民党Q&A】
Q32:財政に関して、どのような規定を置いたのですか?

(複数年度予算)
 86 条 4 項で、複数年度にわたる予算について、「毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる」と、明確な規定を新設しました。これは、現行制度でも認めている繰越明許費や継続費などを憲法上認めるとともに、いわゆる複数年度予算についても、法律の定めるところにより実施可能とするものです。

第87条 (予備費)

現行憲法自民党草案
 
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
(予備費)
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 全て予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

【 初見】実質的な変更なし。

第88条 (皇室財産及び皇室の費用)

現行憲法自民党草案
 
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
(皇室財産及び皇室の費用)
第八十八条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

【 初見】実質的な変更なし。

第89条 (公の財産の支出及び利用の制限)

現行憲法自民党草案
 
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(公の財産の支出及び利用の制限)
第八十九条 公金その他の公の財産は、第二十条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、 便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。
2 公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

【 初見】

  • 第20条3項の但し書: 「ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。」
  • (靖国神社等への)玉ぐし料などを公金から支出することを可能とする規定。
【自民党Q&A】
Q33:私学助成に関わる規定(89条)を変えたのは、なぜですか?

 現行憲法 89 条では、「公の支配」に属しない教育への助成金は禁止されています。
 
 ただし、解釈上、私立学校においても、その設立や教育内容について、国や地方公共団体の一定の関与を受けていることから、「公の支配」に属しており、私学助成は違憲ではないと考えられています。
 
 しかし、私立学校の建学の精神に照らして考えると、「公の支配」に属するというのは、適切な表現ではありません。そこで、憲法の条文を改め、 「公の支配に属しない」の文言を、国等の「監督が及ばない」にしました。
 
 なお、党内の議論では、更に「教育に対する公金支出の制限の規定は、教育の重要性を考えると、おかしいのではないか。」という意見がありました。しかし、朝鮮学校で反日的な教育が行われている現状やこれまでの判例の積み重ねもあり、基本的には現行規定を残すこととしました。

【所感】

  • 「公の支配に属しない」から「監督が及ばない」への変更には意味があったのですね。言い換えだけだと思っていました。
  • 公費の支払を「公の支配する事業」から「監督が及ぶ事業」に拡大したわけですが、私学助成以外にどういう影響があるのでしょうか?慈善事業を行うようなNPO法人への公費支出が可能となるように思えますが、どうなんでしょう?

第90条 (決算の承認等)

現行憲法自民党草案
 
第九十条 国の収入支出の決算はすべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
 
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
【新設】
(決算の承認等)
第九十条 内閣は、国の収入支出の決算について全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに両議院に提出し、その承認を受けなければならない
2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。
3 内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。

【 初見】いくつかの追加事項はあるが、実質的に変更なし?

【自民党Q&A】
Q34:決算の承認と、予算案への反映について規定を置いたのは、なぜですか?

 現行憲法では、決算は「国会に提出しなければならない」と定めるのみで、国会が決算をどう扱うかについて規定はありません。現在、決算は国会への単なる「報告」案件に過ぎず、各院は独立、別個に決算を審議し、議決することとなっています。しかし、それでは、国会は、政府が行った支出に対して十分なチェックを果たすことができません。そこで、憲法改正草案では、決算を国会の承認を要するものに改めることとしました(90 条 1 項)。
 
 なお、党内での議論では、参議院側から「決算を通常の議案と同様とした場合、まず衆議院に提出され、その承認を受けてから参議院に送付されることになる。衆議院で不承認となれば、送付すらされない。それでは『決算の参議院』の役割が果たせない。」との意見がありました。そこで、決算報告は、両議院に同時に提出することとしました。
 
 加えて、「決算について国会が承認することとする以上、その効果を持たせる必要がある。」という意見が大勢を占めました。そこで、内閣は、「検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない」と規定しました(90条 3 項)。これにより、会計検査院の検査の実効性が飛躍的に高まることになります。

【所感】なるほど。このあたりのことはよく理解していませんでした。

第91条 (財政状況の報告)

現行憲法自民党草案
 
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
(財政状況の報告)
第九十一条 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

【 初見】「国会及び国民」を「国会」に変更しているが、実質的には変更なし。

第八章 地方自治

第92条 (地方自治の本旨)

現行憲法自民党草案
 
【新設】
 
 
【新設】
(地方自治の本旨)
第九十二条 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。
2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。

【 初見】現行憲法92条で「地方自治の本旨に基いて」との記載があるが、現行憲法には「地方自治の本旨」が規定されていない。このため、この条項を追加。実務的には実質的な変更なし?

【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(92 条 地方自治の本旨)
 92 条において、地方自治の本旨に関する規定を新設しました。従来「地方自治の本旨」という文言が無定義で用いられていたため、この条文において明確化を図りました。また、自治の精神をより明確化するため、これまで「地方公共団体」とされてきたものを、一般に用いられている「地方自治体」という用語に改めました。

第93条 (地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等)

現行憲法自民党草案
 
 
【新設】
 
 
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨基いて、法律でこれを定める。
【新設】
(地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等)
第九十三条 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。
2 地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。
3 国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。

【 初見】草案第3項は、不自然な条項ではないが、沖縄と国の対立を考えると、地方自治に何らかの影響を与えるのかもしれません。

【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(93 条 地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等)
 93 条は、地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等についての規定です。1 項で「地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める」と規定し、現行憲法で言及されていなかった地方自治体の種類や、地方自治が二層制を採ることについて言及しました。「基本と」するとは、基礎地方自治体及び広域地方自治体以外にも、地方自治体には、一部事務組合、広域連合、財産区などがあることから、そのように規定したものです。
 
 3 項では、東日本大震災の教訓に基づき、「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。」と規定し、国と地方自治体間、地方自治体同士の協力について定めました

【所感】東日本大震災の際に、国や地方自治体の間での協力がなかった?沖縄問題への影響がやはり気になるところです。

【自民党Q&A】
Q36:道州制について、どう考えているのですか?

 道州制については、今回の憲法改正草案には直接盛り込みませんでした。しかしながら、道州はこの草案の広域地方自治体に当たり、この草案のままで も、憲法改正によらずに立法措置により道州制の導入は可能であると考えています。

第94条 (地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)

現行憲法自民党草案
 
第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
 
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
(地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)
第九十四条 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。
2 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者直接選挙する。

【 初見】地方選挙の有権者は、日本国籍を有する住民に限定。その他は、実質的な変更なし。

【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(94 条 地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)
 94 条は、地方自治体の議会及び公務員の直接選挙に関する規定です。「地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する」と規定し、外国人に地方選挙権を認めないことを明確にしました
【自民党Q&A】
Q37:外国人の地方参政権について、どう考えているのですか?

 日本国憲法改正草案では、94 条(地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)2 項で「地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する」と規定し、「日本国籍を有する者」という文言を挿入することによって、外国人に地方選挙権を認めないことを明確にしました
 
 地方自治は、我が国の統治機構の不可欠の要素を成し、その在り方が国民生活に大きな影響を及ぼす可能性があることを踏まえると、国政と同様に地方政治の方向性も主権者である国民が決めるべきであります
 
 なお、外国人も税金を払っていることを理由に地方参政権を与えるべきとの意見もありますが、税金は飽くまでも様々な行政サービスの財源を賄うためのもので、何らかの権利を得るための対価として支払うものではなく、直接的な理由にはなりません。

第95条 (地方自治体の権能)

現行憲法自民党草案
 
第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
(地方自治体の権能)
第九十五条 地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

【 初見】「地方自治体の権能」から「財産管理」と「行政執行」をなくし、「事務処理」のみに限定。なぜ限定するのか、意図が理解できませんでした。

【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(95 条 地方自治体の権能)
 95 条は、地方自治体の権能に関する規定です。地方自治体の条例が「法律の範囲内で」制定できることについては、変更しませんでした。条例の「上書き権」のようなことも議論されていますが、こうしたことは個別の法律で規定することが可能であり、国の法律が地方の条例に優先するという基本は、変えられないと考えています。

【所感】変更点についての解説がない!説明できない理由(隠さなければならない理由)があるということか?やはり沖縄問題に関係するのかな?

第96条 (地方自治体の財政及び国の財政措置)

現行憲法自民党草案
 
【新設】
(地方自治体の財政及び国の財政措置)
第九十六条 地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。
2 国は、地方自治体において、前項の自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。
3 第八十三条第二項の規定は、地方自治について準用する。

【 初見】

  • 地方自治体の財源についての規定。
  • 第2項は、「地方交付税交付金」や「補助金」 に関連すると思われますが、実務への影響はよく分かりませんでした。
  • 第83条2項は、「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。」
【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(96 条 地方自治体の財政及び国の財政措置)
 96 条に地方自治体の財政に関する規定を新設しました。地方自治が自主的財源に基づいて運営されることなどを規定しました。
【自民党Q&A】
Q38:地方財政について、どのような規定を置いたのですか?

 96 条に地方自治体の財政に関する規定を新設しています。その 1 項は、地方自治は自主的財源に基づいて運営されることを基本とすることを明確に宣言したものです。なお、「地方交付税は、1 項の自主的財源に当たるのか」という点については、地方交付税も同項の自主的財源に当たるものと考えています。
 
 2 項は、国による地方財政の保障義務を定める趣旨の規定です。地方自治体において、1 項の自主的な財源だけでは住民に対する十分なサービスの提供ができない場合には、国は必要な財政上の措置を講じなければならないことを定めました。
 
 3 項で、地方自治について、財政の健全性が確保されなければならないことを規定しました。国の財政健全性の確保に関する規定を準用する形をとっています。

【所感】地方交付税交付金は、2項ではなく、1項の自主財源とのことでした。

第97条 (地方自治特別法)

現行憲法自民党草案
 
第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
(地方自治特別法)
第九十七条 特定の地方自治体の組織、運営若しくは権能について他の地方自治体と異なる定めをし、又は特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票において有効投票の過半数の同意を得なければ、制定することができない。

【 初見】地方自治特別法の定義を追加。実務的な影響はよく分かりませんでした。

【自民党Q&A】
Q35:地方自治については、どのような規定を置いたのですか?

(97 条 地方自治特別法)
 97 条の地方自治特別法の規定は、特定の地方自治体に対してのみ適用される法律については、当該地方自治体の住民の投票に付して同意を得なければ制定できないことを定めたものです。現行 95 条を引き継いだ規定ですが、現行の規定では適用要件が不明確であるため、今回の草案で明確化を図っています。

第九章 緊急事態

【 初見】所謂、「非常事態宣言」と「戒厳令」に関する条項。

【自民党Q&A】
Q39:緊急事態に関する規定を置いたのは、なぜですか?

 8 章の次に 2 条から成る新たな章を設け、「緊急事態」について規定しました。具体的には、有事や大規模災害などが発生したときに、緊急事態の宣言を行い、内閣総理大臣等に一時的に緊急事態に対処するための権限を付与することができることなどを規定しました。  国民の生命、身体、財産の保護は、平常時のみならず、緊急時においても国家の最も重要な役割です。今回の草案では、東日本大震災における政府の対応の反省も踏まえて、緊急事態に対処するための仕組みを、憲法上明確に規定しました。このような規定は、外国の憲法でも、ほとんどの国で盛り込まれているところです。

第98条 (緊急事態の宣言)

現行憲法自民党草案
 
【新設】
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃内乱等による社会秩序の混乱地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

【 初見】

  • 所謂、「非常事態宣言」についての条項
  • 草案第60条2項:「予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」

第99条 (緊急事態の宣言の効果)

現行憲法自民党草案
 
【新設】
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

【 初見】

  • 所謂、「戒厳令」についての条項。
  • 「この場合においても、~に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」。尊重されない場合があるということ。つまり、憲法の各条項は、制限を受けることがあるということ。
  • 第2項に記載されている条項のタイトル:草案14条(法の下の平等)、草案18条(身体の拘束及び苦役からの自由)、草案19条(思想及び両親の自由)、草案21条(表現の自由)
  • 第2項に記載されていない主な条項:草案11条(基本的人権の享有)、草案12条(国民の責務、現行憲法では自由及び権利を保持するための努力)、草案13条(人としての尊重等)、草案19条2(個人情報保護)、草案20条(信教の自由)、草案22条(居住、移転及び職業等の自由等)、草案23条(学問の自由)、草案24条(家族、婚姻等に関する基本原則)、草案25条(生存権等)、草案32条(裁判を受ける権利)、第33条(逮捕に関する手続きの保障)、第34条(拘留及び拘禁に関する手続きの保障)、草案35条(住居等の不可侵)、草案36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)。
【自民党Q&A】
Q40:緊急事態宣言に関する制度の概要について、説明してください。

緊急事態の宣言に関する制度として、草案では、98 条で緊急事態の宣言の根拠規定や手続を定め、99 条でその効果を定めています。
 
(緊急事態宣言の要件とその基本的性質)
 まず、98 条 1 項で、内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃、内乱等の社会秩序の混乱、大規模な自然災害等が発生したときは、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができることとしました。
 
 ここに掲げられている事態は例示であり、どのような事態が生じたときにどのような要件で緊急事態の宣言を発することができるかは、具体的には法律で規定されます。
 
 緊急事態の宣言の基本的性質として、重要なのは、宣言を発したら内閣総理大臣が何でもできるようになるわけではなく、その効果は次の 99 条に規定されていることに限られるということです。よく「戒厳令ではないか」などと言う人がいますが、決してそのようなことではありません。99 条に規定している効果を持たせたいときに、緊急事態の宣言を行うのです。
 
(緊急事態の宣言の手続)
 緊急事態の宣言の手続について、最も議論されたのは、「宣言を発するのに閣議にかける暇はないのではないか。」ということでした。しかし、内閣総理大臣の専権とするには余りに強大な権限であること、また、次の 99 条に規定されている宣言の効果は 1分 1 秒を争うほどの緊急性を要するものではないことから、閣議にかけることとしました。
 
 例えば「我が国に対してミサイルが発射されたときに、それを迎撃するのに、閣議決定をしていては、間に合わないではないか。」などと質問されますが、そうしたことは9 条の 2 などの別の法制で考えるべきことであり、緊急事態の宣言とは、直接関係はありません。
 
 2 項で、国会による民主的統制の確保の観点から、緊急事態の宣言には、事前又は事後に国会の承認が必要であることを規定しました。当然事前の承認が原則ですが、緊急事態に鑑み、事後になることもあり得ると考えられます。
 
 3 項で、緊急事態の宣言の終了について、規定しました。この規定は、当初の案では、憲法に規定せずに法律事項とする考えでしたが、党内議論の中で、「宣言は内閣総理大臣に対して強大な権限を与えるものであることから、授権の期間をきちんと憲法上規定すべきだ。」という意見があり、その期間を 100 日とする規定を設けたところです。その他、国会が宣言を解除すべきと議決したときにも、宣言は解除されるものと規定しました。
 
 4 項で、緊急事態の宣言の承認の議決及びその継続の承認の議決については、衆議院の議決が優越することを規定しました。宣言の解除の議決については、衆議院の優越はありません。また、参議院の議決期間は、緊急性に鑑み、5 日間としました。
 
(緊急事態の宣言の効果)
 99 条 1 項で、緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣は緊急政令を制定し、内閣総理大臣は緊急の財政支出を行い、地方自治体の長に対して指示できることを規定しました。ただし、その具体的内容は法律で規定することになっており、内閣総理大臣が何でもできるようになるわけではありません。
 
 緊急政令は、現行法にも、災害対策基本法と国民保護法(「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」をいう。以下同じ。)に例があります。したがって、必ずしも憲法上の根拠が必要ではありませんが、根拠があることが望ましいと考えたところです。
 
 緊急の財政支出の具体的内容は、法律で規定されます。予備費があれば、先ず予備費で対応するのが原則です。
 
 地方自治体の長に対する指示は、もともと法律の規定を整備すれば憲法上の根拠がなくても可能です。草案の規定は、憲法上の根拠があることが望ましいと考えて、念のために置いた規定です。したがって、この規定を置いたからといって、緊急事態以外では地方自治体の長に対して指示できないというわけではありません。
 
 99 条 2 項で、1 項の緊急政令の制定と緊急の財政支出について、事後に国会の承認を得ることが必要であることを規定しました。なお、緊急政令は、承認が得られなければ直ちに廃止しなければなりませんが、緊急の財政支出は、承認が得られなくても既に支出が行われた部分の効果に影響を与えるものではないと考えます。
 
 ほかに、緊急事態の宣言の効果として、国民保護のための国等の指示に従う義務(99条 3 項)、衆議院の解散の制限や国会議員の任期及び選挙期日の特例(99 条 4 項)を定めています。
【自民党Q&A】
Q41
国等の指示に対する国民の遵守義務(99 条 3 項)を定めたのは、なぜですか?
基本的人権が制限されることもあるのですか?

 99 条 3 項で、緊急事態の宣言が発せられた場合には、国民は、国や地方自治体等が発する国民を保護するための指示に従わなければならないことを規定しました。現行の国民保護法において、こうした憲法上の根拠がないために、国民への要請は全て協力を求めるという形でしか規定できなかったことを踏まえ、法律の定める場合には、国民に対して指示できることとするとともに、それに対する国民の遵守義務を定めたものです。「国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置」という部分は、党内議論の中で、「国民への指示は何のために行われるのか明記すべきだ。」という意見があり、それを受けて規定したものです。
 
 後段の基本的人権の尊重規定は、武力攻撃事態対処法の基本理念の規定(同法 3 条 4項後段)をそのまま援用したものです。党内議論の中で、「緊急事態の特殊性を考えれば、この規定は不要ではないか。」、「せめて『最大限』の文言は削除してはどうか。」などの意見もありましたが、緊急事態においても基本的人権を最大限尊重することは当然のことであるので、原案のとおりとしました。逆に「緊急事態であっても、基本的人権は制限すべきではない。」との意見もありますが、国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、そのため必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得るものと考えます
【自民党Q&A】
Q42
衆議院解散の制限や国会議員の任期の特例の規定(99 条 4 項)を置いたのは、なぜですか?
また、既に衆議院が解散されている場合に緊急事態の宣言が出されたときは、どう対応するのですか?

 99 条 4 項で、緊急事態の宣言が発せられた場合は、衆議院は解散されず、国会議員の任期の特例や選挙期日の特例を定め得ることを規定しました。東日本大震災の後、被災地の地方議員の任期や統一地方選の選挙期日を、法律で特例を設けて延長したのですが、国会議員の任期や選挙期日は憲法に直接規定されているので、法律でその例外を規定することはできません。そこで、緊急事態の宣言の効果として、国会議員の任期や選挙期日の特例を法律で定め得ることとするとともに、衆議院はその間解散されないこととしました。
 
 党内議論の中で、「衆議院が解散されている場合に緊急事態が生じたときは、前議員の身分を回復させるべきではないか。」という意見もありましたが、衆議院議員は一度解散されればその身分を失うのであり、憲法上参議院の緊急集会も認められているので、その意見は採用しませんでした。それに対し、「いつ総選挙ができるか分からないではないか。」という意見もありましたが、緊急事態下でも総選挙の施行が必要であれば、通常の方法ではできなくとも、期間を短縮するなど何らかの方法で実施することになるものと考えています。なお、参議院議員の通常選挙は、任期満了前に行われるのが原則 であり、参議院議員が大量に欠員になることは通常ありません。

【所感】

  • 「緊急事態宣言の効果」についても、憲法の変更なくても、かなりの部分は対応できるようなので、まずは関連法案の整備を進め、憲法の改正自体は、当面棚上げした方がよいように思います。
  • この規定は重要なので、ごり押しして、ろくに議論せず、憲法変えるよりも、よく議論して、与野党の十分な合意を得て変更する必要があるのではないかと思います。現在の草案ではいろいろ抜けがあるのではないでしょうかね。勉強が足りず、どこどこに問題があるというような指摘は、まだ私にはできませんが、議論が進んでくれば理解できるようになるのではないかと思います。

第十章 改正

第100条 (改正)

現行憲法自民党草案
 
第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
(改正)
第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。

【 初見】

  • 国会での発議は「三分の二以上の賛成」から「過半数の賛成」に変更。
  • 「有効投票の過半数」とすることで、過半数の定義を明確化。
【自民党Q&A】
Q43:憲法改正の発議要件を緩和したのは、なぜですか?

 100 条 1 項で、衆参両院における憲法改正の提案要件を「3 分の 2 以上」から「過半数」に緩和しました。
 
 現行憲法は、両院で 3 分の 2 以上の賛成を得て国民に提案され、国民投票で過半数の賛成を得てはじめて憲法改正が実現することとなっており、世界的に見ても、改正しにくい憲法となっています
 
 憲法改正は、国民投票に付して主権者である国民の意思を直接問うわけですから、国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまうと考えました。
 
 なお、「過半数では通常の法律案の議決と同じであり、それでは、時の政権に都合のよい憲法改正案が国民に提案されることになって、かえって憲法が不安定になるのではないか。そう考えると、国会の提案要件を両議院の 5 分の 3 以上としてはどうか。」という意見もありました。しかし、3 分の 2 と 5 分の 3 では余り差はなく、法令上議決要件を 5 分の 3 とする前例もないことから、多数の意見を採用して過半数としたところです。

第十一章 最高法規

(現行憲法 第97条 (基本的人権の本質))

現行憲法自民党草案
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 【削除】

【 初見】

  • 現行憲法は、規定としては不明確な記述です。
  • また、11条(基本的人権の享有)と類似します。
    • 現行憲法11条:「第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」
    • 草案11条: 「国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。」
  • 11条との重複表現を避け、「基本的人権」が最高規範であることを示すように規定するのもありかも。例えば、以下の通り。
    • 「基本的人権は、神聖にして侵すべからず。」(これじゃダメか(笑)。でも雰囲気はこんな感じ)
  • 調べてみると、憲法成立の過程で重複してしまった経緯があるようですね((ウィキペディア, 「日本国憲法第97条」, https://ja.wikipedia.org/wiki/日本国憲法第97条.))。

【追記】 現行憲法第97条の改正案を考えました。

(現行憲法97条改正案)
(憲法の基本理念)
基本的人権の享有及び福利の享受は、この憲法が日本国民に保障し尊重すべき基本理念である。この憲法のいかなる条文及びその解釈においても、この理念は尊重されなければならない。

  • 基本的人権のみならず、前文に記述のある「福利の享受」も追加しました。
  • 解釈改憲が多いので、「その解釈」も追加しました。
  • 憲法の条文に、他の条文を拘束する条文(各条文の上に立つ最高条文)を入れることが可能なのか良く分かりません。但し、「憲法の基本理念」として第11章「最高法規」に入れるのであれば、不自然ではないように思います(少なくとも、現行憲法97条よりは自然です。現行憲法97条は前文に入れた方が素直)。
【自民党Q&A】
Q44:憲法改正草案では、現行憲法11条を改め、97条を削除していますが、天賦人権思想を否定しているのですか?

 人権は、人間であることによって当然に有するものです。我が党の憲法改正草案でも、自然権としての人権は、当然の前提として考えているところです
 
 ただし、そのことを憲法上表すために、人権は神や造物主から「与えられる」というように表現する必要はないと考えます。こうしたことから、我が党の憲法改正草案11 条では、「国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。」と規定し、人権は神から人間に与えられるという西欧の天賦人権思想に基づいたと考えられる表現を改めたところです
 
 さらに、我が党の憲法改正草案では、基本的人権の本質について定める現行憲法 97条を削除しましたが、これは、現行憲法 11 条と内容的に重複している(※)と考えたために削除したものであり、「人権が生まれながらにして当然に有するものである」ことを否定したものではありません。
 
現行憲法の制定過程を見ると、11 条後段と 97 条の重複については、97 条のもととなった総司令部案 10 条が GHQ ホイットニー民政局長の直々の起草によることから、政府案起草者がその削除に躊躇したのが原因であることが明らかになっている。

第101条 (憲法の最高法規性等)

現行憲法自民党草案
 
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
(憲法の最高法規性等)
第百一条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

【 初見】実質的な変更なし。

第102条 (憲法尊重擁護義務)

現行憲法自民党草案
 
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
(憲法尊重擁護義務)
第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

【 初見】

  • 憲法を尊重し擁護する義務から天皇と摂政を削除。
  • 国民に対する憲法を尊重する義務を追加。
【自民党Q&A】
Q45:国民の憲法尊重義務を規定したのは、なぜですか?

 憲法の制定権者たる国民も憲法を尊重すべきことは当然であることから、102 条 1 項を新設し、「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。 」と規定しました。
 
 これについては、「国民は、『遵守義務』でいいのではないか。」という意見もありましたが、憲法も法であり、遵守するのは余りに当然のことであって、憲法に規定を置く以上、一歩進めて憲法尊重義務を規定したものです。なお、その内容は、「憲法の規定に敬意を払い、その実現に努力する。」といったことです。
 
 この規定は、飽くまで訓示規定であり、具体的な効果があるわけではありません。
 
 なお、公務員に関しては、同条 2 項で憲法擁護義務を定め、国民の憲法尊重義務とは区別しています。すなわち、公務員の場合は、国民としての憲法尊重義務に加えて、「憲法擁護義務」、すなわち、「憲法の規定が守られない事態に対して、積極的に対抗する義務」も求めています。
【自民党Q&A】
Q46:現行憲法の 99 条にある憲法尊重擁護義務の主体として天皇及び摂政が規定されていますが、草案ではなぜ省かれたのですか?

 現行憲法 99 条において、憲法尊重擁護義務の主体として天皇及び摂政が規定されていますが、草案では、政治的権能を有しない天皇及び摂政に憲法擁護義務を課すことはできないと考え、規定しませんでした

【所感】

  • 役職としての天皇には政治的権能はないとしても、天皇も意思を持つ一人の人間なので、憲法を守る義務はあるはずです。草案の考えは、天皇は人間ではなく、ロボットであるという考えに基づくものでしょうか。「今日は二日酔いだから、認証式なんて嫌だよ」と駄々をこねるかもしれません。「この法理は嫌いだから、交付しないよ」とか、「いまは国会を解散する時期ではないでしょ。ちゃんと考えてから解散しなさい」と、内閣に対して意見をいうことが可能となります。なぜなら、天皇には憲法を尊重する義務も、擁護する義務はないから。もちろん、憲法違反ではありますが。
  • 本音は、「天皇は神聖にして侵すべからず」であるので、天皇に義務を課すというのは、不敬にあたるといったところでしょうかね。

3. まとめ

 自民党草案と現行憲法を比較しながら、詳細に読んでみました。

 憲法9条、国防軍の創設や、緊急事態宣言をはじめとして、いろいろ与野党で議論が割れて収集つかないであろう事項が多数あります。 一方、いずれの党でも合意が得られるであろう項目も多数あるように思います。

 合意できそうな条項を、ざっと列挙すると以下のものがあります。

  • 草案第2条6項(天皇の、国・地方自治体などが主催する式典への出席など)
  • 草案第15条4項(有権者を日本国籍に限定)
  • 草案第19条のニ(個人情報の保護)
  • 草案第21条のニ(国政上の行為に関する説明の責務)
  • 草案第25条のニ(環境保全の責務)
  • 草案第25条の三(在外国民の保護)
  • 草案第25条の四(犯罪被害者等への配慮)
  • 草案第26条3項(教育環境の整備)
  • 草案第28条2項(公務員の団結権の制限)
  • 草案第29条2項(知的財産の取り扱い)
  • 草案第44条(議員及び選挙人の資格に「障害の有無」を追加)
  • 草案第53条(臨時国会の召集期限の設定)
  • 草案第56条(表決及び定足数)
  • 草案第63条2項(国会への欠席)
  • 草案第64条(政党)
  • 草案第70条(臨時の総理大臣の規定)
  • 草案第73条(内閣の職務)
  • 草案第79条5項(裁判官報酬の減額)
  • 草案第83条2項(財政の健全性)
  • 草案第86条2項(予算)
  • 草案第90条(決算の承認等)
  • 草案第92条(地方自治の本旨)
  • 草案第93条(地方自治体の種類など)
  • 草案第96条(地方自治体の財政)

 1回でも憲法改正する経験をすると、改正のための心理的なハードルが低くなって、なし崩し的に、多数政党の思惑で憲法をどんどん変更してしまうという懸念はなくはないですが、まずは、合意が得られそうな範囲で議論を進めていくというのが良いのではないかと思います。それでも、すんなりと合意が得られるであろうものは少なく、相当な議論が必要になると思います。

最後に:じっくり読むと、結構、大変でした。

(2016/10/1)

 

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